魂の世界(ムンド・アニマ)
目が覚めると私は仰向けに寝ていた。
ここは……
そこは、駅の改札前だった。駅? 駅ってなんだっけ? なんだろう、ここは、元いた世界だった気がする。そう、私は毎日この駅を通って学校へと通っていたんだった。懐かしい反面疑問だった。なぜ私はここにいるのだろう。とりあえず起き上がる。
頭がぼーっとする時は、売店で炎の飲み物を飲む。それが私の日常だった気がする。売店の中に入り、炎の飲み物をとってレジへ持って行く。店員はパラスだった。
「いらっしゃいませー」
いつも通り不気味な笑みを浮かべている。
「魔力払いでお願いします」私はいつものセリフを口にした。
「かしこまりましたー。あたためますか?」
「お願いします」
「で、ですね、お客さん。これを飲んだら引き返せなくなりますがそれでも飲みますか?」パラスは飄々とつぶやく。
「引き返せなく……意味がわかりませんが」
「いえいえ、まあ、飲んだら分かるんですけどね。あなたが正気を保っていられるかは五分五分といったところでしょうか。それでも飲みますか?」
何を言っているかわからないが、まあいいや。飲もう。
一口、二口、ごくっ、ごくっ、プハー。一気に飲み干した。
次の瞬間。辺りに気配を感じた。振り返ると。
そこにはよくわからない有象無象が歩いていた。
この舞台に似つかわしい服を着た人はいなかった。派手な服を着た貴族、女の子、いかにも村娘といった感じの素朴な衣装の女性、甲冑を身にまとった騎士。
人狼、耳の尖った……エルフ?、小人。
そういった亜人ですらまだまだ序の口だ。
二足歩行の金属の塊、黒い霧を撒き散らしながら浮いている謎の黒マント、歩いているというよりひきづられているただの岩、明らかにこの場に収まる身長じゃないのになぜか収まっている巨人。なんかかっこいい謎の動物、チビドラゴン、ガーゴイルそういった謎の有象無象が歩いている。ご丁寧に魔導カードを使って改札を出入りしている。
「これは、一体」私は呟いた。
「これがあなたの魂の内側ですよ。アルテミシアさん。あなたの本名は知らないので、とりあえずアルテミシアさんとお呼びします。あなた、首都の学生だったみたいですね。」と答えたのはパラスだった。
「すみませんねぇ、人の魂に土足で踏み込むのは好きじゃないんですが、何せことがことなので」
「その割に楽しそうですね」
「あ、バレちゃいました」
「冗談はさておき、これがあなたの魂の今の姿。あらゆる魂を取り込みながらそのほとんどの魂が理路整然とルールに従う」
「魂をいじくりまわされるともっと化物みたいなものになると思っていました」
「その通りなんですよ。本来あなたは魂だけでなく体まで侵食されてただの化物に成り果てるはずだった。だから野に放たれたのでしょう」
「これだけの魂を静寂させたナギさんに感謝しないとですねぇ」とパラス。
「ナギ?」私はパラスの顔を見た。
「あら、気づいてなかったんですか? 魂合成獣計画で人の形を失っていたあなたを助けたのは、ナギさんなんですよ。助ける前のあなたの姿は、そうですね……
黒い煙をまとった五首の化物とか、
全身から手の生えた女性とか、
まあ、可能性は色々あります
白薔薇城であなたが悪魔だと言われた時に、一番それを痛感したのはナギさんでしょうねぇ。何せあなた、化物だったんですから。しかし、同時に、あなたに人の心が宿っていると一番信じているのもナギさんです。うーんいい姉妹っすね。
合成された魂の中であなたがトップに立つ状況が変わらない限り、あなたは人の姿を保っていられます。もし、あなたがそのバランスを失えば、悪魔として処理されるでしょう」
パラスはどこまでも真剣に私の目を見た。
「それにしてもあなた、ずいぶん人狼の姿に馴染んでいるんですね。まさか、魂の世界で元の姿より人狼の姿をとるとは」
言われて気づいた。胸があるのも、背が低いのも、股間の感覚が違うのももう慣れたものだった。自然であった。
「さて、これで帰ろう、と言いたいところですが、あなたには最後に見ていただかなければならないものがあります」




