船上にて
ついた船は比較的小さな帆船だった。
全体が黒塗りになっている。
「これが私の愛船サダルメリクです。隠密行動に長けた速い船です」
「いい船ね。魔法使いの島まではどのくらいかかるの?」とナギ。
「ざっと3日くらいでしょうか。普通の船なら一週間かかるところ、サダルメリクなら3日でいけます。どうです速いでしょう?」
「感謝しているわ。白薔薇城ともお別れね。サクヤ……」
私もつられて白薔薇城を見る。あんなことがあった後でも城はどこまでも純白で透き通るようだった。小舟にいた時は気づかなかったが、あちこちから火の手が上がっている。天下焔壁ほどではない、普通の火事だ。
その時ナギが何かに気づいた。
「待って。船を止めて」
「何を言っているんですか? 今更目的地の変更なんてできませんよ」
「あの場所を見て。あの場所は小さな小さな漁村ポータム、私の生まれ故郷よ。あの村が燃えている。助けに行かなきゃ」
パラスはフーッとため息をついた。
「さっさと眠らせておくべきだったかもしれませんね。まさか故郷への思いがそこまで強いとは」
「何をぐだぐだ言っているの。ママとパパとアルテミシアを助けなければ。『我はすべてをかき消すもの。我が……』」
ぐらり……
ナギが倒れる。
私は急いでナギを抱きかかえ、うなった。全身が少し毛深くなった気がする。
「はあ、まさか詠唱を始めるとは。準備しておいてよかった。ナギさんの全力は私でも無事かは怪しいですからね」
私はナギを抱えたままパラスと対峙した。
「今ので分かったでしょう。あなたのことを妹と言ってもあなたは所詮代わり。ナギさんにとってのアルテミシアは今でもあの村にいる。まあ、今どうなっているかはわかりませんが。だからあなたはナギさんに対して妹としての義理を果たす必要はないんですよ。ナギさんのおままごとに付き合ってもしょうがないんですから」
「お姉ちゃんに何をしたの?」私はパラスの話を無視した。
「お姉ちゃんは三日三晩かけて私を解放してくれた。そのままでは死んでいた私を。それが姉として慕う理由。他に何か必要?」
「いいですねぇ。愛ですねぇ。私には理解できない感情ですが、まあ、そこは置いておきましょう」
というが速いがパラスはいつの間にか目の前にいて、私の心臓にナイフを刺した。
「ごめんなさいねぇ。苦しいですよ」
私は倒れながら、パラスの表情を見た。至極真面目な表情だった。
「ごめんなさい。お姉ちゃん」




