準備
「私たちはこれからどこへ行くの?」とナギ。
「おっと、言ってませんでしたね。私たちが向かう先、それは、魔法使いの自治領『マレフィカ・グリモ』です。神々の序列第十位魔法使いの租を祖と崇める魔法使いの集まる島です」
「そこに行って私たちはどうすれば良いの?」
「強くなっていただきます。一人で神聖メア帝国を歩けるレベルまで。これから訪れる戦争を戦い抜けるレベルまで」
「戦争?」と今度は私が聞いた。
「あなたが召喚されて体を奪われたのも、悪魔が解き放たれたのも、すべて一つの意思の元で行われているのではないか、というのが私の推測です。その紐を解いていくと、どうも近々戦争になりそうなんです。その時を戦い抜けるくらいまでは、あなたがたに強くなっていただかなければ」
「あなたは何者なの?」とナギが聞いた。「あなたはあまりにも世情に詳しすぎる」
「ただのしがない革新家ですよ」
「私、その肩書きを聞いたことないのだけど」
「私も同じ肩書きを名乗るものにあったことはありません」
「そう。どこまでも正体を画するのね。まあいいわ。妹さえ無事なら私はそれでいい」
「アルテミシアさんを力のかぎり守ると我が神の名の下に誓いましょう」
「物分りがよろしいようで。あなたも話についてこれていますか?」とパラスが私に尋ねた。
「大丈夫です」とだけ私は答えた。実は理解できないところも多かったが。
「では、行きましょう」
「マリウド、船の手配はできていますね」
「はい」
「地下水道を最後まで辿ると海に出ます。そこから小舟で船に行きます。一通り必要なものは揃えたつもりなので、手回品以外は持ってこなくても平気ですよ。もっともあなたがた、いま手に持っている以外の財産はすべて焼けてしまったでしょうがね」
ナギの居心地の良い家が焼けてしまったと思うと心が痛んだ。
「では行きますよ、ついてきてください。マリウド、バッジャーズネストの皆さんありがとうございました」
そういうとまた黒い街灯を深く被る。
私たち三人は再び、地下水道へと出た。先ほどどと同じように流れに沿って進む。
20分ほど歩いた後に、海に出た。そこには桟橋があり、小舟が何艘か繋がっている。そのうち一艘の紐を解くと、パラスが言った。
「では行きますよ」




