ソリチュード(愛という名の欲望)
「私が……、悪魔?」
とくん……
とくん……
「そんなことはない。アルテミシアは私の妹。どこが悪魔だっていうの?」
「あなた、何を言っているの? あなたが連れ出したんでしょ? 絶対禁足区域呪魂監獄から」サクヤは眉間にしわを寄せている。
「この子は森に倒れていて、私が家に連れて行って、それから私が襲われ続けてもついてきてくれた私の妹。アルテミシアを悪魔呼ばわりするならサクヤ、あなたでも許さない」
「ヘスティア、その娘はあなたのアルテミシアでなければ、あなたの妹でもない。絶対禁足区域呪魂監獄の悪魔よ」
私は思い出していた。アルテミシアの前で目を覚ます前に、聞いた声を。私は確かに修羅であった。今まで記憶に蓋をしていたが、今朝のことだ、まだよく思い出せる。
私はもう一つ別のことを思い出していた。ナギが私を妹と呼ぶときのことだ。ナギは私を妹と呼ぶことに喜びを見出し、「お姉ちゃん」と呼びかけると非常に喜んだ。その裏にある感情にはあまり気づかないようにしていた……。
「お姉ちゃん。私のために友達に剣を向けないで」私はそっとお姉ちゃんの方に手を当てた。
「私が捕まる。だからお姉ちゃんを助けて」
不思議と口が動いた。お姉ちゃんを助けたい。それが私の願い。
サクヤが答えた。
「それはできない。絶対禁足区域呪魂監獄への侵入は、終身刑のさらに下、呪魂刑に値する。幼馴染が絶対禁足区域呪魂監獄送りになるのは、私としても忍びない。だから匿いたかったのだけど……、
ここまで証拠が出てしまっては、|白薔薇公(グラミス公)の名の下にあなたたち二人を捕縛します。
「『我は白薔薇城の主にして、深き尊敬の主。この城の全ては私に従う。純白の城が咎人を捕縛する』」とサクヤが詠唱を始めると同時に、ナギが詠唱を始める。
「『我はすべてをかき消すもの。我が力の前には、魔法の動きも消滅する』」
ドクン……
一方アレサスは、詠唱とは違う様子だった。
「『月の光が我が道を照らす』」
ドクン……
「『狼がこの身に宿る』」
ドクン……
「『千里の彼方まで追いかけよ、白薔薇の木偶人形』」
「『滅せよ、人形殺しの棺』」
「『アオーーーーン』」
「『ワオーーーーーーン』」
私とアレサスが遠吠えを上げた。
口が前にとんがり大きな牙をむき出しにしている。両手両足は狼のように走りやすくなり、鋭い爪が付いている。お姉ちゃんの力になりたいという強い意志が招いたのか、はたまたアレサスの返信に影響を受けたのか……私も人狼としての力を発揮したようだ。
白い床が盛り上がり何かが出現する。しかし、ナギの魔法の力でそのまま崩れ去る。私の目は、アレサスの巨狼に集中していた。体格は明らかに先方が有利。回復したばかりのこの体では、速さも互角が良いところ
。私が頑張っても時間稼ぎにしかならない。唸り声をあげながらゆっくりとナギの方に後退する。
ナギが再び詠唱を始める。
「『我はすべてをかき消すもの。太陽を撃ち、月を撃ち、あらゆる炎を無に帰す』」
「『我らを導け、無明』」
一気に夜のとばりが降りてきた。
辺りが暗くなる。私の目には、私とナギだけが明るく見える。
辺りを機にするとどうやら他の皆は、何も見えていないようだ。
「逃げるよ」
いうが早いがナギは私の肩を叩いて走り出した。




