悪魔(ディアボロス)
玉座に座る衣通姫は金の錫杖を持ち、バラのような純白の衣に身を包み、静かに座っていた。その微笑みは春の日のよう。この街では珍しい黒髪は、ツヤがあり、吸い込まれるように黒い。反逆者と呼ばれ武器を構えられた状態でなければすべてを捨てて傅いていただろう。
「久方ぶりですね、静寂の魔女ナギ。あなたの銀髪は、白雪のように美しい」
「あなたの濡羽色の髪も。これはどういうことかしら。衣通姫、いえ、コノハナサクヤと呼んだ方が良いかしら?」
「そう。では私もあなたのことはヘスティアと呼ぶわ。15年の付き合いですからね」ナギの本名はヘスティアというらしい。
「あなたのみならず、アレサスにまで裏切られるとは思っていなかったわ。アレサスは、あなたの次に信頼していたのに」
「私の心は常に、サクヤさまのもの。あなたとの間に裏切りなど存在しない」とアレサスは言った。その声は冷たく聞こえた。
「ヘスティア、今回のあなたの背信行為で私の胸は張り裂けそう」衣通姫コノハナサクヤは話を続けた。
「背信? なんの話?」
「とぼけないで。今日神聖メア帝国全土に皇帝陛下の名でお触れが出されたわ。静寂の魔女ナギが裏切りの主神神殿跡地に忍び込み、幽閉されていた悪魔を連れ出した、と」
「悪魔?」
「確かにあなたの能力なら忍び込むことは不可能ではないかもしれない。絶対禁足区域呪魂監獄に
しかし、私は半信半疑だった。だから、もしあなたが証拠を持たずに来たら匿おうと思っていた。それが友としての務め。でもあなたは証拠を持ってきた」
サクヤは私を指さして言った。
「その人狼は……、あなたが妹と呼ぶその娘は、悪魔よ。




