騎士は策を講じること。
時は少し遡る。
エースたちは、共和国の最前線の砦前にいた。既にエースのグラムはフルグラム状態。騎車を繋いでいる。今は停止しており、騎車の上のキューボラでは、イリスがロングロッドスタッフを持ち、警戒している。更に周囲を鳥たちがとびまわっている。
その下では、エースとその部下、そして美オークかいる。
「で、どうするぶひか。ぶひの力でフルグラムを装備したぶひ。どうするぶひか。何も策ないなら、ぶひひとりでもいくぶひ」
美オーク、アルベルトは、狭い騎車内で、鳴く。
エースは、オークを含めた全員を見ていった。
「とりあえず、キング評議長の所まで行く。すべてはそこからだ」
ここでマックスが地図を出す。
「とりあえず、このルートだと、ほぼ、エースが言っているようにグラムを走らせることができる。あとは、俺たちが耐えることが出来るか、だが」
「大丈夫。騎車にのこるのは、私とバーン、アリサ姉さんのみだよ」
エースは、自信ありげに笑う。
「キングという人は、唯我独尊といったひとだ。だから、プライドを傷つけられるのを嫌う。だから、彼の前まで行けたらほぼ、交渉でなんとかなるよ」
この言葉にバーンは首をひねる。
「主のお言葉ではありますが、あいつはそんな奴ではありません。力がすべての男てす」
が、エースはバーンに笑いかけた。
「大丈夫、一国の主だ。バカなことはしないさ」
ここで、エースは皆を見渡した。
「まず、メイシアを返してくれと要求する。つぎは、メイシアの居場所をつきとめてくれるよう要求する」
「そんなに簡単に行くなら、苦労はないわよ~」
と、アリサは呆れたように言った。
「まあ、そうだろうけど、メイシアの崇高さの一端にでも触れれば、たちまち自分の非を悔いることだろうさ」
「まさしくその通りぶひ」
エースの言葉にアルベルトは大賛成。あとの者はため息をつく。
「で、キングがはぐらかすか、時間稼ぎをしたら、決闘を申し込む」
エースは、平然といい放った。
「決闘って、キングとやらは、国家の要人でしょう?」
と、あきれたようにマックスが確認する。
「共和国の体をとっているが、本質は部族連合に過ぎんよ」
バーンは、苦々しげに吐き捨てる。
「本来、最強といわれたレ=オン族の長が、帝国に対抗するために強い十部族をあつめたのかはじまりだ。その性質から力が尊ばれる。それを、キングのタ=イガ族が、その十部族を一つ一つ配下に入れていったのが今の共和国だ。対抗していたレ=オン族とウ=ルフ族が、賊に襲われ勢力を失ったのが、つい最近のことだよ。実際は、タ=イガ族が闇討ちしたのだがね」
エースは、うなずいて引き継ぐ。
「私たちは、ただの一騎で共和国の中枢に乗り込む。帝国の切り札とはいえ一貴族令嬢のため。力を尊ぶ部族連合としては、法はともかくあっぱれと思い、協力するはずだ。キングとタ=イガ族以外はね。まあ、押さえるためには力を見せなければならない。そんななかで、決闘の申し込み、受けざるを得ないさ」
「でも、決闘受けても、勝っても、ちゃんと返してくれる訳ではないでしょう~」
アリサは、呆れたように言った。
「その為に、アルベルトとイリス、マックスは別行動してほしい。キシリア様に、詳しい監禁場所は「見て」もらっている。あとは、助け出すたけだ。アルベルトがな。マックスとイリスは、その手伝いだ。ほんとは、私が助けたいが、仕方ない。道化になってやる」
と、エースは、血の涙を流しながら、怒鳴る。
「わかっているぶひ、必ず助け出すぶひ」
「あたりまえだ。むしろ、犠牲なしにしろよ」
「当然ぶひ」
ここで、残りの一人が声を上げた。
「で、私は何をすればいいの?」
「貴女は、エースの腰にはり付いていて。おかしな事しないように~」
と、アリサは、呆れたように言った。
「でも、わたしも何かしたいのだけれど。無駄飯食らいにはなりたくないわ」
ここで、エースはにっこり笑った。
「安心してくれ、ジーク。君には大事な役目があるんだ。僕の代わりにやってほしい重要な役目がね」
エースは、いたずらっ子のようにニヤリと笑った。




