ダンジョンは攻めこんで来るもの
エースは、グラムに騎車を牽引させながら走る。森を抜け、開けた所に出た。そこから、砦の周りには、何匹かのトロルと、随伴するその数倍の下位魔物のゴブリンたちの群れがいるのが見えた。もちろん、砦にむかっている。魔物の群は、戦闘態勢を整え、武器を構えている。そう、武器を。エースは、その状況に、騎車を砦の門の前に止める。そして、グラムに騎車を手放なせた。左手を騎車の横にマウントされているシールド=スタッフに伸ばし、掴ませる。
「バーン、マックス! 騎車の護衛。アリサ姉とイリスは騎車で法撃準備。近寄れば撃て」
エースの部下は皆、了解、と声をあげた。バーンとマックス、アルベルトは、武器を構えて騎車の外に出る。エースは、アルベルトを見て!出てくるなと叫んだ。アルベルトも、怒鳴る。
「ぶひも戦うぶひ」
「自分の立場を考えろ」
エースは、アルベルトにそう言い捨ててクラムを前進させる。が、アルベルトは体格に似合わぬ機敏な動きでエースのグラムについてくる。そんなアルベルトにエースは怒鳴った。
「だから、立場を考えろ。アルはこんなことする必要はない。第一、騎車の護衛をもつしろよ。こっちは邪魔だ」
「随伴歩兵は必要ぶひ。ぶひは強いぶひ」
そうこう言っている間にも、トロルがエースのグラムに気づいてこちらにやってくる。もちろんゴブリンも一緒だ。魔物たちは、赤い魔核を輝かせて向かってくる。
ゴブリンは、人より一回り小さな魔物だ。赤い魔核を頭にもち、長い両手と短い足をもつ。その姿は小さいトロルだ。と!言うよりゴブリンの成長、進化形がトロルと言える。一番の違いは、ゴブリンには尻尾かあること。尻尾は産卵菅であり、生き物に卵を産み付けることにより増える。
エースは、シールド=スタッフのプリセットされた魔法、ブレス(強化魔法)を発動。魔力力場を強化する。次にグラムを前進させ、クレイモア=スタッフの柄を握らせた。ホルダーが解放され、クレイモア=スタッフをかまえる。そして魔力力場をまとわせてトロルを上段から振り下ろす。トロルはその斬撃を手にしたマチェットで受ける。魔力力場同士が相殺する輝きの中、クレイモアとマチェットがぶつかる轟音が響く。
グラムとトロルが戦っている間にも、ゴブリンは、我先に砦に向かう。何びきかは、グラムの足下を狙う。が、後ろから魔核を斬られ、倒れた。そして、もう一匹も。
アルベルトが、その身体能力と重量に任せて叩きったのだ。更に剣形態のダインスレイブを鞘に戻し、ゴブリンのもつ武器を二つ構えた。どちらもマチェット。トロルのものに近いが、より小型だ。そして、ゴブリンの中にとびこみ、連撃。あたるを幸いに斬り付け、エースのグラムの足場を確保する。
エースのグラムは、トロルがもつマチェットを盾で弾き、態勢が崩れたところでクレイモア=スタッフを振り下ろし、トロルの頭部を砕いた。血と魔核がとびちるなか、大きく振りかぶってゴブリンの群れを凪ぎ払う。やや下段の残撃は、ゴブリンの上半身を叩き切る。一度に複数のゴブリン撃破。血と肉片が飛び散る中を更に振りかぶって凪ぎ払い。更にゴブリンを殲滅する。
そうなると、トロルの何匹かは、エースのグラムに向かう。そして、ゴブリンの群れもついてくる。
それを確認したエースは、アルベルトに大声で叫んだ。
「トロルたちの右側にまわる。グラムの八時方向についてくれ」
「わかったぶひ。後ろは任せるぶひ」
エースは、グラムを一度後退させる。それからやや斜め左側に回り込む。そして、ゴブリンの群れに飛び込みクレイモア=スタッフを凪ぎ払い、ゴブリンを殲滅。アルベルトは、グラムを回り込んで後ろを取ろうとするゴブリンを叩ききった。オークの力と持久力は、ゴブリンを倒してなお余りあった。
やっと移動したトロルがマチェットを振りかざす。か、グラムのクレイモア=スタッフが一閃。魔力力場をまとったマチェットごと腕を叩き斬り、返す刀で頭部を砕く。
更にトロルがエース側に向かったところで砦に動きがあった。門が開き、三騎のグラムと随伴歩兵が出撃してきた。グラムは、スピア=スタッフとシールド=スタッフ。更に脚部には、盾状のレガースを付けている。兵士の装備は兜に胸当て、スピア=スタッフ。
兵士は散開すると、スピア=スタッフをかまえる。そして、ファイアアローを撃ち出した。初級攻撃魔法だが、使いやすく威力も高い。トロルはダメージを受け、ゴブリンは、兵士の法撃をうけ、倒される。ゴブリンの数がある程度減ったころに、グラムが突撃。スビア=スタッフに、ファイアウエボンを付与。トロルの頭部を貫く。トロルの魔力力場がファイアウエボンの効果を相殺するが、槍の穂先は防げない。魔核を砕き、トロルを倒す。
やがて、エースと砦の部隊どの挟撃より、トロルと、ゴブリンは殲滅。わスかな生き残りは森の奥に逃げていった。
エースと、部隊のグラムは合流する。各グラムは、上半身を開け顔を見せた。グラムの騎士は、エースを見知った者だった。
「エース様、なせ、こちらに。いえ、助かりました」
「細かい話は後で。まずは砦に入れてくれ。頻度はともかく、再度トロルなんかが来ると困る」
「了解しました。砦の施設は解放します。しかし、あのオークは……」
「それも後で。補給、補修も頼む」
「わかりました。隊長に相談します」
そして、エースの部下たちは、たちは、砦へと向かい、しばしの休息をとったのである。




