妹には、真実を告げるもの。
帝都の朝は早い。辺境や小さな都市であれは、まだ暗い時間帯である。しかし、魔法ネットワークが張り巡らされた帝都では、簡単な魔法はほとんど魔力を使わずに確実に発動する。そのため、ら魔法明かりがあちこちから点っている。そのため、仕事が始まるのも早いのだ。
「ん、エースさま、眠い」
朝、早くから起こされたイリスは呟いた。本来彼女は朝が苦手なのだ。
「おいおい」
マックスが慌てた。ある意味、雇い主に文句を言っているからだ。
「まあ、いいよ。確かに朝早いし、でも、メイシアには会いたいしね。気がせいてしまって。すまない。マックス。イリス」
苦笑いしてエースが答えた。マックスは恐縮する。
「ん、じゃあ、追加料金」
マックスは、天をあおいだ。
エースは、苦笑いしながらも先を進む。そして、帝国宮殿の関所の一つにたどり着いた。そして、マックスとイリスに言った。
「じゃ、あとは夕方に頼みます。それまでは自由行動で」
「本当にいいのか? 一応、俺達は護衛だろう」
マックスの言葉にエースは、苦笑いする。
「ま、そうだろうけど、これから行くのは深淵だからね。ある意味、皇帝の周辺よりも、安全なところだよ。安心して、帝都を楽しんできてくれ」
ここで、イリスがエースをじっと見た。
「ん、そんなに楽しみ?」
「何が?」
「にやけてるの、かくしてる」
「お、おい!」
マックスは慌てるが、エースは、満面の笑みを浮かべる。
「そうか、わかるか。今日は、メイシアとずっといられるからな。嬉しくてしょうがない。メイシア教の聖典を百回暗唱したい位だよ」
「ん、そ、そう」
イリスとマックスは薄ら笑いして退いた。ちなみに、メイシア教の聖典は、三千ページある。エースが暗唱できるのは言うまでもない。
「じゃあ、夕方には迎えにきてくれ」
そう言うと、エースは、軽い足どりで深淵に向かった。




