ウワサわさわさ
「魔王がこの村を狙っている」
そういったのはタカオカだった。
俺たちは無視をした。
「魔王がこの村を狙っている」
繰り返す。
どうしても話したいらしい。
まるでRPGの村人みたいに延々これしかしゃべらない可能性もある。
仕方ない。相手した。
「バッカじゃねーの」
「酔ったなら帰れ」
俺とナカモトは口々にののしる。
しかし、こんなことで引く男ではない。
「怪しいなと思ったのは森に薬草を採りに行った時だった……」
かまわず話し出す。
「大体、2時間の探索でモンスター3,4匹に会うんだ」
タカオカの話は無駄に細かくて長かったが、かいつまんで言うとこうらしい。
1.村の近くに生息している魔物がまったくいなくなった。
2.気候や環境の変化は見られないので自然全滅は考えにくい。
3.なにか新たな脅威が現れて種族ごと移動したのではないか。
4.その証拠に森の奥深くに大穴が空いていた。
「お前……これ4番目だけでいいんじゃないか」
「順々に証拠を積み重ねていくことだけが真実を積み重ねる唯一の方法だというのに……これだから頭も使わずトンカチ振るっているだけのやつは」
「うるせえヤブ!だから、てめえのとこには患者が来ねえなんだよ!ただの風邪に変な病名つけて余計な薬飲ませられるって」
「お前なんか鍛冶屋のくせに包丁一つ作れないだろ。なんで刃渡り50cmになるんだよ」
「んあっ!!てめ……「やめろやめろ」
タカオカとナカモトの不毛な争いに割って入る。
「お前らどっちも鼻つまみもんなんだから。聞いていて悲しくなるし、やめとけ」
「うるせー。がきに舐められている奴は黙ってろ!」
「お前は自分では教師と言っているけど、普通にただの子守だからな。身の程をしれ?」
「んんだぁっ、こらぁ!表出るか?」
まあ……なんだ。
つまりこれが俺らだった。
ヤブ医者のタカオカ、ヘボ鍛冶屋のナカモト。そして、教師という名の子守な俺。
このなんとも情けなくてボンクラな3人は共にこの平凡な村に生まれ育った。
そして、村に負けないくらい平凡で変わりない時間を過ごしてきた。
今日この日までは。
俺らはまだ何も知らないでいる。
ただ馴染みの酒場でいつものバカ話をしているだけだった。




