新たな力【最強の武器】
ヨロシクです。
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翌朝。
今日は、この塔から見えるカモウの街へと行く予定だ。
街に行く目的は、ここにはない食材やこの世界における生活や文化などに触れてみたいからだ。
本当なら服も買う予定だったが、アスナがオレの為に服を作ってくれた。 うん、着心地がスゴクいい。 そして何故か、着ていると、すごく安心する。 そういえば、さっき派手に転んだけど、なぜか全く痛くなかったんだ、傷どころか赤くすらなっていない。
なにか深く考えてはいけない気がしなくもないような……。
◆◇◆◇◆◇◆◇
とりあえず準備が出来、サザナミくんも塔にやって来た。 よし! これでテンプレ回避出来るはずだ。 フレイ、アクア、アスナ、シルフがオレの横でフワフワ浮いている。 これで誰も怖くない。 安全面はバッチリだ。 一応何か不測の事態の為に、聖剣ムラマサムネと邪剣エロイムエッサイムも装備しておこう。 まあサザナミくんもボディガードに居るし、大丈夫だろう。
では、出発だ。
サザナミくんに乗って、街の近くまで行く。
道中、ワイバーンやパーピーを見かけたが、サザナミくんを見て大きく旋回してどっかに行く。 のんびりとした時間が過ぎていく。 ちなみに怖いのでスピードをあげないようにお願いをした。 およそ30分をかけて街の近くまで来て降りた。
案の定というか、街中がパニックになっている様子がわかる。 オレの平穏で安穏な生活を送る為に少し犠牲になってくれ。 まあ、人が死ぬ訳でもないし、今後に影響がない(……と思っているのはコタロウとごく一部の人だけ)し、問題なかろう。
おお、街の衛兵さんが来たぞ。 衛兵さんが緊張した面でサザナミくんに向かって声を張り上げる。
「これは、ドラゴンの王よ。 我ら街の者が、貴殿の住処に行かれ、無法でも致したか? もしそんな輩がいたら、すぐに調べて引き渡すので、少し待っていただけないか? 我らは、そのようなことを望んだりしておらん。 頼むから、少しだけ時間の猶予を欲しい」
ハッキリ言おう、この街の住民は何もしていないと。 とりあえず、これ以上事態が面倒なことにならないうちに出よう。
カモン、精霊王のみんなよ。
オレがゆっくりと、黄金龍の背中から降りる。
当然一人だと、あの背中から降りられるはずがないので、シルフの介添えつきだ。
「誰だ!」
衛兵さんがオレに向かって鋭く叱声する。
「うるさいわね」
とフレイの不機嫌な声。
「誰に言っているのかしら?」
と、笑顔で暗いオーラが漂うアクア。 何やら手から黒い水が滴り落ちている。 赤じゃなくて良かったよ……てか、あなた闇の精霊王?
「コタロウさんです!」
その通りだ、アスナ! 君の言っている言葉に間違いないが、空気を読んでないぞ!
「緊迫した雰囲気だ~」
みりゃわかる、シルフよ。 もっとマシなセリフ出てこなかったのか。
「そこの人間の兵よ、こちらにおられる精霊の方々は、精霊を掌る王だ。 そして一緒におられる方こそ、それらを束ねる方。 精霊の王よ」
おぉ、サザナミくんがタイトルコールをしちゃったよ! あんたサブキャラでしょ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「精霊の王……」
サザナミくんが、オレのことを精霊の王であると言った途端、衛兵さんがオレに跪いた。
何と言っても、話をしているのが、100mのドラゴンさん。 金色でそりゃ強そうなドラゴンさんが言えば、もう信じるの一択しかない。 オレでも信じる。
ただし、実際のところオレはモブAだ。
ほら、ステータスを……えっ!?
◆◇◆◇◆◇◆◇
コタロウ
種族:人間
レベル 6
知力 15
武力 112,513
魔力 10,010
魅力 25
スキル:鑑定 物理無効 属性無効
称号 精霊の旦那さま
装備
E聖剣ムラマサムネ(武力2,500)
E真・邪剣エロイムエッサイム(武力100,000)
Eアスナがプレゼントした服
(武力10,000+魔力10,000 物理無効+属性無効)
◆◇◆◇◆◇◆◇
何かよく分からない数値だったので、ちょこっと詳しく鑑定をしてみた。
オレ、サザナミくんを超えちゃったよ。
この真・邪剣エロイムエッサイムはオレが持っていて大丈夫なのか? 呪いのアイテムか? 装備をすると、モブっぽくなっちゃうとか?
ちょっと前まで2,500だったよな?
ここで抜いたら、イケナイ気がした。
オレは空気を読めない人間だから抜かない。 敏感主人公になるんだよ。
そしてアスナのくれた服、どうみたってセンスのいいただの服だよ。
……だからか。 朝、転んでも痛くなかった原因も理解した。
とりあえず呆けてばかりではいけない。 ここでテンプレ通りなら街のお偉いさんが出てくるだろう。 出てきたら、向こうのペースになる。 ……だから!
「悪いが、この街の責任者を呼んできてくれ。 拒否した場合、この街では魔法を使えなくする。 迷っている場合じゃないと思うぞ」
「は、はい!」
衛兵さんが街に向かって走り去った。
なんかオレ、偉そうだ! モブAだったから1度こういうセリフ言ってみたかった。
「で、これからどうする予定だ?」
とフレイがオレに質問してきた。
「観光」
始めに言ったじゃん。
「え、観光ですか?」
とアクアがちょこっと首を傾げている。
「あと、買い物」
砂糖を見つけるんだよ。 あと米と醤油、あったらいいな。
「楽しみです♪」
とアスナがオレの手を掴む。
「お菓子~、甘い物~」
シルフが飛び回って元気だ。
「サザナミさんは、街の責任者がいるまでもう少し一緒に居てもらっていいですか?」
「大丈夫だ。 だが貴殿の持っている邪剣だが、以前と全く違う雰囲気を醸しだしているんだが……」
「昨日は聖剣と同じくらいだったんだけど、さっき見たら変わってたんですよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「コタロウ殿、この剣を抜いてみてくれないか?」
「えーと、大丈夫ですかねー」
と、オレは言いながらも実のところ興味深々だ。
さっき衛兵さんが街のお偉いさんを迎えに走って行ったので、ここには幸いオレと人外さんしか居ないし大丈夫だろう。
早速、スーっと剣を鞘から出してみる。 すると、辺りから雑音の無くなった気がした。 うむ、なぜかしっくりとした持ち心地だ。 程よい重さと持った安心感。 杖を持って山道を登ったことを思い出した。 あの時は、本当に世話になったなあ……。
いかん、へんな回想が入った。
で、抜いた剣だけど、邪剣と云われるように刃全体が漆黒の色だ。
ただしイメージした抜くと禍々しいような妖気は感じられない。 反対にオレを守ってくれるような温かい波動を感じる。
とりあえず、サザナミくんに持ってもらい調べて貰おう。
「サザナミさん、どうも普通な感じですが、ちょっと持って調べて貰えませんか?」
「コタロウ殿、こちらは貴殿以外が持たぬ方が宜しい。 この剣に闇の精霊王の意思を感じる。
貴殿以外の人間、他の精霊王の方なら大丈夫ですが、私ですら触れると闇の精霊王の怒りで破滅するでしょう」
何を言っているのか意味わからん。 とりあえず剣を鞘に戻す。 すると、また辺りに雑音が戻ってきた。
それにしてもオレは、闇の精霊王になんてまだ会ったことないしね。
まあ、いずれ会ってみたい精霊だ。 オレも早く魔法を使いたいからね。
とりあえず、この剣は人に貸してはいけないのだけ理解した。
ん? 反対にイヤな奴には、触って貰ったらいいんじゃないか?
たとえば玄関前に置いておくとか。 邪魔なんでどかす為に触って破滅とか。 完全犯罪だ。
まあ、そんな奴がいたら考えよう。
それから、サザナミくんもオレも他にこれと言って話すことというか取り立てて聞きたいことが思い浮かばなかったので、この世界のグルメについて話をしている。 サザナミくんは、どうも人間の姿になって、たまに人間やエルフの街で食事を楽しむみたいだ。 本人は娯楽の一つと言っている。 他の精霊たちも最近、甘いものに興味を持ち始めたので興味深々でサザナミくんにオススメのお菓子やら料理を聞いている。 そしてこの地方の名物を幾つか聞いているうちに、どうやら街のお偉いさんが来たみたいだ。
すごい砂煙をあげこっちに向かって馬車が疾走してくるのが分かる。
さて、話し合いとするかね。
アスナ、準備よろしく。
ぴよぶっく分、終了。
ありがとう、ぴよぶっく。