出会いの予感【それぞれの思惑】
よろしくです。
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【コタロウの独り言】
※コタロウも疲れる時があるのです。
この章は、コタロウの愚痴をお聞きください。
◆◇◆◇◆◇◆◇
本日も1日、とても濃密な日だった。
オレ的にはミノさんの家を作っただけ……いや、1日で家を作るなんてあり得んから……。
オレはプラモデルですら、土日をかけてのんびりと作る感じだったのに1日で家を建てるなんて頑張り過ぎだろ!(←実際に頑張って作ったのはアスナ)
他にみんなと一生一緒に居られるエリクサーを軽く超えちゃった水。
それはオレへの溢れた愛から出来たもの?
意味わかんないよー
誰かオレに説明してくれ。
そしてシルフが持ってきた聖剣ムラマサムネと邪剣エロイムエッサイム?
それって何か日本酒やら悪魔の召喚呪文に似ているな。
あれか? ひょっとしてフラグか何かなのか?
悪魔なんて怪しいよな。
そういえば闇の精霊がいるんだよな。
オレ、魔法使えちゃう?
はぁ……。
もうツッコミどころ満載で、いっぱいスルーしちゃったよ!
フレイ? あ~いたいた。 それが?
何かはじめに騒いでいた紹介状とやら何か一番まともに見えてきたよ。
他のなんて、どれもこの世界を征服出来そうな代物だし物騒極まりないからな。
フレイがいじけてるって?
ほら、よしよし。
ひざの上で頭を撫でてやっからいじけるな。
フレイをひざに乗っけて頭を撫でていると、口だけはイヤがるんだけど、全然どく素振りを見せないんだよな。
ツンデレ確定だな。
アスナ……。 あとでお前も撫でるから、少し待ってなさい。
アクアもシルフも並ばない。
みんな後で撫でてあげるから。
ほら、フレイが落ち着かないでしょ。
ふー。
なんか、だんだん精霊が幼くなってきた気がするよ。
ま、いいんだけどさ。
何か明日、街に行くの億劫になってきたな。
シルフのおかげで味噌モドキも手に入ったし。
朝、味噌汁でも作ろうかな。
いや、豚汁にするか。
人参、じゃがいも、玉ねぎ、大根もあるしな。
あー、やっぱ砂糖も欲しいな。
そうなると、明日やっぱ街へ行かないとダメか。
もう考えるのもだるいし、今日は寝るか。
「ほら、みんな布団に入れ。 寝るぞ!」
「はーい」
仮題【今日の終わりに】
◆◇◆◇◆◇◆◇
聖剣ムラマサムネ。
この剣は、かの有名な刀匠村正が物凄く大好きだった元日本人が作った剣だ。
このことでお分かりのように、この方も異世界転移者である。
それは、先日来たコタロウがくる八百年ほど前に遡る。
そう……この世界と地球との間には時空の狭間があるらしく、昨日転移したら今から百年後だったり、今転移をしたら二百年前だったりと常にランダム設定なのだ。
話は戻る。
この村正大好き人間の名前は、斉藤 政宗。
昭和35年生まれの男性だった。
仕事は、酒造メーカーの社員だった。
ちなみにその古風な名前は、父親が大の伊達 政宗ファンだったからである。
実家が酒屋だった訳ではない。
しかも、彼の仕事は営業だった。
ただ地酒を作るのが大好きだった。
……のだが、彼には大きな欠点があった。
味覚オンチだったのだ。
彼の造るお酒はイマイチだった。
なぜなら彼の造るお酒の味は、料理酒のような味だったからだ。
でも彼は、頑張って自分の酒を造った。
でもごく一部にしか評価をしてくれない。
彼は絶望したのだ。
だがそんな彼にも、天性いや……チートがあった。
それは、刀匠という職業だ。
彼は大好きだった村正と同じように、この世界で刀を作りはじめた。
彼の刀は、美しく切れ味が鋭い。
その為、その時代の武を尊ぶものの憧れの武器となった。
彼の遺した刀は、百本と云われている。
いま、現存されているのは三本である。
●人間の王
●魔族の王
そしてコタロウの持っている
★聖剣ムラマサムネ
この中というか、政宗の作った刀で最も優れているのは、聖剣ムラマサムネだ。
他の刀に比べると、およそ10倍の鋭さを持っている。
そして、この聖剣ムラマサムネには、政宗の熱い思いが込められている。
この最強の剣に、自分の造った酒を付加させる。
聖剣ムラマサムネを装備した状態で、酒よ出よ! といえば魔力1に対し、10Lの酒が出るのだ(料理酒)
ちなみにそれをやった黄金龍サザナミ君は、三百年ほど二日酔いで苦しむことになる。
サザナミ君はその聖剣を封印し、この悪夢を頭の片隅から強制的に消去した。
そして昨日シルフがやって来て、この剣って何? と聞いたので本能で譲り渡すという方法で追っ払ったのだ。
コタロウは、封印されし料理酒を手に入れたのだった。
料理酒としては、レベルが高い。
ただし、この料理酒を知るのはいま少し先のことである。
仮題【聖剣ムラマサムネ伝説】
◆◇◆◇◆◇◆◇
邪剣エロイムエッサイム……。
この世界をどん底に突き落としたという禍々しき邪剣。
悪魔でさえ、恐れ慄くという最悪の凶剣である。
その邪剣は、今より何万年も昔、堕ちた神により作られたというが……。
……というのも昨日までのお話。
邪剣に力を貸していた闇の精霊の王であるカルマは、コタロウに会った瞬間に恋に堕ちたのだ。
堕ちたという漢字が違う? いや合っている。
闇の精霊王であるカルマは、今まで堕ちた神に協力をしていた。
そう何万年もの間ずっと……。
だが、昨日限りでそれはあっさりと、協力するのを止めたのだ。
今まで、退屈しのぎに堕ちた神に協力していただけだった。
そしてその邪剣がドラゴンの王の持ち物になり、更に数百年。
彼女にとって、そんな期間など、ちょっとうたた寝をしたくらいにしか感じられない。
そして持ち主が変わったのでカルマが目覚めたのだが、目覚めたのはそれだけじゃなかったのだ。
恋にも目覚めてしまったのだ。
今まで、恋など知らなかったカルマ。
それが恋に目覚めてしまった。
もう堕ちた神など、どうでもよくなってしまった。
……そう、彼女は恋に生きる乙女になったのである。
もともと引っ込み思案な彼女は、そっと邪剣エロイムエッサイムから離れ、コタロウの影に潜むことにした。
いきなり彼の前に出て話すなんてとんでもない。
彼女は、とてもセクシーで魅惑な美少女(30cm)だけど、とても初心だったのだ。
そして邪剣エロイムエッサイムは、斬れるだけの剣になったのだ。
ただし、コタロウが装備をするとご存知の通り、聖剣ムラマサムネに匹敵する強さを持つことになった。
それは、全てカルマがコタロウを愛するが為に全能力を付加したものであり、それにより彼女は今少し寝ることになった。
ただ恋するカルマは、今までと違い惰眠を貪るのでなく、愛するコタロウに会う為に必死で力を溜める為に寝た。
彼女の目覚める日は近い……。
恋をすることを覚えた闇の精霊が、どのような行動を起こすか誰も想像出来ない。
彼女は、眠る。
少しでも早くコタロウに会う為に。
そして、彼女の力を得た邪剣エロイムエッサイムは、コタロウに何を与え、彼はいったい何をするのか
(多分何もしないと思うが……)
それは、作者すら知らない。
そして邪剣エロイムエッサイムの伝説と作者の苦悩がここからはじまる!
【邪剣エロイムエッサイム伝説】
◆◇◆◇◆◇◆◇
私は、アスナ。
一応、土の精霊王です。
この世界の魔法の一角である土魔法を統べる王です。
もし私が居なくなれば、この世界から土魔法が消え去ります。
土魔法は、この世界で創作を担う、謂わば発展の象徴というべき魔法なのです。
そんな私は、大好きなコタロウさんの為に洋服を作ることにしました。
その洋服は、絶対にコタロウさんを守ることを第一に製作をします。
そして着やすさとデザイン、そして私を感じられるような服を製作したいです。
私1人だけだと材料を確保するのが少しツラいので、この世界に散らばるお友達を呼びます。
ドワーフさんや人間さんが土魔法が使えずに困っても、コタロウさんと私は困りません。
ただ、コタロウさんが傷ついたら、私が困ります。
「急にみんなを呼んでゴメンね……。 でも私の大切な人の為にはみんなの力が必要なの!」
私がみんなに謝ると、
「アスナちゃんのお願いなら喜んでお手伝いするよー」
「何をすればい~の?」
「うん! みんなに材料を集めて欲しいの」
「わかったー、頑張るよ」
とのことで、早速準備にかかります。
ということで、素材を集めます。
百年に1cmしか糸を作らない蚕の神虫やアラクネの女王から初めての糸など、一人で集めるのは凄く大変ですけど、この世界に散らばる土の精霊たちなら集めることが出来ます。
他にもフェニックスの生まれ代わる時の羽、青龍の逆鱗とよばれる鱗、白虎の牙に玄亀の甲羅に付いている毛など、必要なものは多種に及びます。
それを黄金龍であるサザナミさんの爪で織るのです。
普通の精霊なら、これを織るのに何百年とかかります。
ただ私は、一応精霊王なので、一晩で織ることが出来ます。
コタロウさんの為にヨイショ、ヨイショ……。
機を織る掛け声じゃないけど、ヨイショ、ヨイショ……。 心を込めて作ります。
デザインは、私のシルエットをワンポイントに……。
ふぅ~、これで出来上がりです。
サザナミくんの攻撃くらいなら、無効化出来るでしょう。
これでも少し不安です。
ただ今のところ、これ以上の服は作れません。
でもいつかは、この服の五倍以上のものを作ってみせます。
そして、コタロウさんにほっぺにチューをしてもらうんです。
仮題【アスナの献身】
◆◇◆◇◆◇◆◇
ワシの名はサザナミ。
ドラゴンの王である。
ワシの力は、この世界でも最強クラスを持っている。
ワシが敵わないのは、精霊様くらいのものだ。
勇者と呼ばれる者、魔王と呼ばれる者もワシには敵わなかった。
現に、勇者を倒した際に手に入れた聖剣ムラマサムネ。
そして魔王を倒した時に手に入れた邪剣エロイムエッサイムが我が手元にある。
ただこの二本とも我の手に余る代物だ。
聖剣は……なんと言うかよく覚えていないが、あまり手元に置きたくない。 そして邪剣は、闇の精霊王であるカルマ様が眠っておられるのだ。 むやみに起こしてはならないのだ。 とはいえ、捨てることなど出来ないから、玉座の近くに飾ってある。
風の精霊王であられるシルフさまが我が城にいらっしゃったのは、つい先日だ。
私達の大切な人を紹介するから、早く来なさいとのことだ。
面倒臭いなんて言ってられない、何を差し置いても馳せ参じなければならない。
しかも話を聞く限り、シルフさまだけでなく、紅き精霊王であられるフレイさま、蒼き精霊王であられるアクアさま、褐色の精霊王であられるアスナさま、そして翠の精霊王であられるシルフさまが、こぞって大切にされる方などを待たせてはいけないのだ。
とりあえず先日、人間が攻めてきた時に奪ったものを手土産に急ぎ参列するこちにした。
お会いしたコタロウ様は、何と言うか泰然とされた大人しそうな御仁であった。
だが、侮ってはいけない。
精霊王さまたちが、コタロウ様の為に献身的に動いているからだ。
もし、かの御仁の不興を買ったら、我が身など消し飛ぶだろう。
その日は、挨拶をして下がらせて頂いた。 もうこんなに緊張するのはゴメンである。
その翌日。
またもシルフさまがいらっしゃった。
何でも生活の糧になる物が欲しいとのことだ。
そして、玉座にある二本の剣を見つけられた。
興味深そうに見ていらっしゃたので、厄介払……いや、献上することにした。
それと、この間攻めてきた人間共の食料から茶色いあまり見てくれのよくない調味料も興味深そうにしていたので差し上げた。
その日は、すぐ飛んで帰ったのだが、ワシに精神はイッパイイッパイだ。
お願いですから、あと千年は静かにして頂きたい。 ワシのささやかな願いだ。
仮題【黄金龍の憂鬱】




