#4 新たな仲間【ミノタウロス】
よろしくです。
あれから塔に住んで今日で一週間だ。
本当なら一週間ほどは、のんびりとしながらこの世界の理なんかを知るつもりだったが、ドラゴンの王が来たので全てがぶち壊しになった。
全然のんびりした気がせん!
よく小説か何かで初めの一ヶ月がドタバタすると書いてあったが、あれは本当だった。
一週間もしないうちに、この世界の魔法を司る精霊の王、ファンタジーの定番であるドラゴン、しかもその王がオレに挨拶に来るなんて予想だにしなかった。
そして何より一番ショックだったのがオレにチートな能力が備わってなかったことだ。
そんな訳で、自分の心のキズを癒すことと、のんびりしたいので一週間休みを延長することに決めた。
幸いドラゴンがここに来たのが丸わかりだったので、ここには誰も恐れて近寄って来ないだろう。
はぁ~この疲れを取るのにどうしたらいいだろうか?
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そうだ! この疲れを取る為に、温泉でも作ろう。
幸いここには、チートな精霊王が居るから何の苦労もなしに作れるだろう。
「みんな、お願いがあるんだけど大丈夫?」
「どうした?」
「私たち全員ですか?」
「なぁに~」
「はい、コタロウさまのお願いでしたら、喜んで!」
1人だけ、居酒屋チェーン店みたいな挨拶をしたが、問題なかろう。
さっそく温泉のことを話してみることにする。
反応はイマイチだったが、みんなでお風呂に入って、上がったら冷たい甘い飲み物を『クーっ』と飲むと幸せになれるぞ! って言ったら、みんなが俄然やる気になった。 特にシルフがイケイケだ。
「ねぇ、岩にする~? それとも木にする~?」
「う~ん、両方作れないか?」
「りょ~かいであります。 隊長!」
ビシッと敬礼のポーズをとるシルフ隊員。
アクアが苦笑いでその光景を見ている。
ちなみに岩とか木というのは、湯船のことだ。 岩の情緒たっぷりのもいいが、ヒノキの香も捨てられん。
金もかからず、簡単に作れるなら両方あった方がいいに決まっている。
それと、風呂あがりっていったら、牛乳だろうという偏見なもとドラゴンの王に牛をどうにか出来ないかとお願いをした。 シルフ便にて。 ドラゴンの王は風の王であるシルフを使いっぱしりにしているオレに戦慄しつつもそのお願いを聞き入れてくれた。
ちなみに明日には用意してくれるらしい。
少し楽しみだが、住む所を用意しておいて欲しいとのことだ。
……まさか、な。
オレはこれはテンプレだな、そう思ったのだ。
だが、このテンプレは悪くないと思ったのでフラグを立たせておいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日の昼ごろ、新たな住民はやってきた。
【ミノタウロスさんのご一族だ】
オレが牛乳を飲みたいと言ったが為に移住させられた、かわいそうな人たちだ。
そのミノタウロスさんの団体さんたちは30人ほどで、オレの家にご挨拶にやってきた。
だがオレの家はご存知の通り、塔だ。
しかも玄関がない事をドラゴンの王が来た時に知った。
オレ1人だと、この塔から一歩も外に出られないのだ。 軟禁だ。
温泉を作る時もシルフに降ろしてもらった。
ちなみに風呂とトイレは、いつもの100mに位置する最上階にある。
そして、1つ下に貯蔵庫があり、食料が貯蔵されている。
どうやらその下は土で固められているだけらしい。
アスナに頼めば部屋を作ってくれるらしいが、現在必要ない。
オレ的にも階段を下りるのが大変だから必要ない。
とりあえず、このままでも話が出来ないので、シルフに頼んで降ろしてもらう。
下に着くと、ミノタウロスさんの顔を見る。
う~ん……だめだ、牛の表情はよくわからない。
が、そう剣呑としているような雰囲気でもないようだ。
良かった、怒られる気配はないな。 闘牛のように吹き飛ばされたり、角に串刺しにされては敵わん!
オレがホッとしていると、牛さんの長がオレに挨拶をしてきた。
「コタロウ様、行く当てのない我らを保護してくれたことを感謝致します。 我ら一同、コタロウ様の為なら火の中、水の中、死を恐れずに突き進む所存です」
何かすごく感謝されている。
こりゃ始めから忠誠心100だ。
牛乳くらいなら問題なく貰えそうだ。
ドラゴンの王よ、ありがとう。
そしてコワイから何故こんなに感謝をしているか聞くのはやめよう。
あまり首を突っ込んではいけないと幽霊の出る小説やホラー小説で理解をしている。 とりあえず、ミノタウロスさんの住む為の家を建てないといけんよな。
「アスナ、ちょっといいか」
「コタロウさん、何ですか?」
「オレの家の横に、ミノタウロスさんの住む家を作ってもらえないかと……」
アスナにアパートのような建物を作ってもらうようにする。
そしてこの牛さん達、少し疲れているようなので昨日作った岩の露天風呂に行かせて汗を流してもらう。
牛の乳は、ストレスや疲れていると美味しくないのだ。
テレビでやってたから間違いない。
その間にちゃちゃっとミノタウロスさんの住むところを作るのだ(アスナが)
シルフには藁みたいなのを用意して貰ってと。
藁を何に使うかって、牛さんの寝床だよ。
とりあえず部屋が出来ても地べたじゃ寝れんだろ。
とりあえず食事はオレが作るとするか。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ミノタウロスの人たちが温泉に入っているうちに料理でも作ろう、でも牛の獣人って何を食べるんだ?
とりあえず、牛さんなので肉は食べないと勝手に解釈しジャガイモと人参、小麦粉を使うことにする。
作る料理は……なんちゃってスイトンである。
お湯に人参とジャガイモ、そして水で小麦粉をねったモノを投入。 味付けは塩のみ。
精霊たちはモチロン食べようとしない。
だが、ミノタウロスさんは空腹よりは全然いいだろう。
何かお腹空いていたような感じだったし……。
一口味見をしてみる。
素材の味がすごくいきている!
当然、美味くない。
オレも一緒にスイトンもどきを食べるのは遠慮しよう。
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料理を作りはじめて20分後。
温泉からミノタウロス達が出てきた。
牛さんたち、1時間半くらい浸かっていたようだ。
「コタロウ様、あの温泉というものは、素晴らしいですね! 身体の汚れだけでなく、疲れまで取れるんですね」
「いいだろ? 精霊たちも気に入っているんだよ。 今回はオレの所を使ったが、次回からはミノタウロス族に合わせたのを作って貰うようにアスナに頼んでおくよ」
「……アスナ様とは、地の王と呼ばれる精霊さま?」
「そう。 アスナはそういうのが得意なんだよ。 なっ、アスナ?」
「はい! コタロウさん!」
ミノタウロスは、どうやらアスナを知っているようだ。
あれ? 牛さんたち、何かすごく緊張をしているようだ。
確かに黄金龍よりもはるかに強いらしいが、それ以上に可愛いから緊張せんでもいいのに。
とりあえずアスナもミノタウロスの為に温泉を作る気満々だし、オレ的に何の問題もない。
固まっているミノタウロスに料理が出来たから、早くこっちに来いと呼んだ。 案の定、あまり食事を摂っていないらしく作った料理をじ~っと見ている。
ただオレが言うのも何だが、あまり美味くないぞ。
「あれ? お椀がない。 アスナ、お椀とフォークを30組作れるかい?」
「はい、すぐにご用意します!」
ちゃちゃっと作るアスナ。
出来上がった物をプレゼントするといったら、何やらすごくありがたがっているミノタウロスの面々。
まあ喜んでいるのは結構だが、早く食え。
結構大きめのお椀に具のいっぱい入ったスイトンモドキを配る。
まだ半分くらい残っていたので、残さず食べるように厳命した。
オレは、このスイトンモドキを食べたくないのだ。
その間、君たちの家を作るから許せよ……
◆◇◆◇◆◇◆◇
ミノタウロス族の方々が食事をしている間に住む家を作ることにする。(アスナが現在、作成中)
だが何故、牛乳を手に入れるためにミノタウロスの方達の食事やら家を用意しないといけないのだ。 解せん! そもそもオレは休暇中だったはず。
このまま塔に篭っていると、何やら面倒が増える一方だとオレの勘が警告をする。
ミノタウロスさん……名前が長いな、次回からミノさんね。
お昼の方でも県民の方でもないよ。 とりあえず、ミノさんの家を作ったら最上階から見える街に行ってみよう。 精霊たちも居るし、死にはしないだろ。
とりあえず、ミノさんの家と……。
一軒ずつ作るのだるいな(←ちなみにコイツは作っていない)
よし! 集合住宅にしよう。
旅館みたいなのでいいな。
部屋はオレもたまには下に来たいから多めに作るか。
3階建ての20部屋もあればいいか。
そして岩の露天風呂と。 一応屋根みたいのも付けておくか。
だが外の外気は取り込めるようにと。
「アスナちゃん、そこ違う」
「じゃあ、こうですか?」
「だいたいそんなもん、ただ少し削って」
「わかりました!」
「アスナは可愛いし、偉いな」
「えへへ……可愛いですか♪」
オレとアスナに任せれば、家なんてチョチョイのチョイだ。
他の精霊が暇そうにあっちフラフラ、こっちフラフラしている。
「フレイ、もうちょっとしたら街に行くから、ちょっと街に行って服装とか事件など少し街のことを調べておいてくれないか?」
「うん、了解!」
「アクアは、ここで水源の調査をしてくれないか? それに井戸を作りたい」
「はい、コタロウさま」
「シルフは、ドラゴンの王に会いに行って、少し食べ物を貰ってきてくれ。 他にここで育てて食べられそうな苗やら種を探してきてくれ」
「おぉ~、大役じゃん! コタロ~わかってる~」
「すごく期待している」
「ラジャー!」
「とりあえず、夕飯までにはお願い!」
精霊なので多少の無茶でも大丈夫だろ。
これでみんな大忙しだ。 予定外も甚だしい。
次回、ドラゴンの王に会ったら、アクアに怒ってもらおう。
えっ……フラグを折らなかったオレにも問題ある?
それとコレは別物だ。 ご飯とデザートが別物と同じだ。
アクアはオレ以外だと少し厳しいのはここ数日でよくわかった。
オレ以外に厳しいというのは嬉しい。
だってオレに被害がないから。
とりあえず指示もだしたし、ミノさんの家をとっとと、完成させないといけないな。
◆◇◆◇◆◇◆◇
オレとアスナが外観を作り終えたころ、ミノさんたちがこっちにやって来た。 そして作った建物を見て口をあんぐりと開けている。
だが、口をあんぐり開けていても何も進まないから、さきほどの食事のことを話して先にすすめる。
「ご飯は食べ終わった?」
「はい。 おかげさまでお腹いっぱいです」
「夕飯も同じでいいか?」
「いえ、コタロウ様のお手を煩わせるのも心苦しいですから材料を提供してくれれば、こちらで料理を致します」
「なら、夕飯時にはシルフが食材を手に入れてくるから期待してくれ」
「シルフ様が……ありがたい……」
進めたつもりが、すぐに止まった。
精霊は鬼門か! 仕方ない、家のことの話をしたい。
「ところで、ミノタウロス族だと名前が長いからミノさんでいいか?」
「はい、ミノだけでも……」
「肉の具材だぞ、その名前は。 フラグ立つぞ!」
「ええと……フラグとは?」
「気にしないでくれ、ミノさんで決定でいいか?」
「はぁ……ミノさんでお願いします」
ミノさんと呼ぶだけで結構会話をしたぞ。 牛歩かコレは……。
「とりあえず、ミノさんたちの家を作ったから中を見てくれ」
「もしかして、ここに住んでいいんですか?」
「その為に作った。 な、アスナ」
「はい! ミノさんの為にコタロウさんと作りました。 コタロウさんと一緒に作れてとても楽しかったです。 ありがとうございます!」
何故か作ったアスナがペコリとミノさんたちに頭を下げてお礼を言う。 あっ……ミノさんたち、土下座した。
「へへ~」ってな感じだ。 そりゃ信仰の対象者が自分たちに為に家を作ってくれて、しかも何故かお礼を言っているもんな。
とりあえず、向こう(アスナ)が頭を下げたんだから、もう土下座しかないだろう。
もしアスナが土下座したら、埋まるしかないな。 まあそんな事はないがな。
とりあえず頭の下げあいをしても話が進まないので、アスナの頭を上げさせて、ミノさんたちに立ち上がってもらった。
さっそく家の中に入る。
ちなみに現在オレの手元にあるのは藁のみだ。
土でベッドを作って貰って藁を敷いて寝てもらう。
オレのウォーターベッドは特殊なので、ミノさんたちには無理なのだ。
イメージ的にも藁が似合うし、反対に藁以外、ありえんだろ!
そんなお馬鹿なことを考えつつ、ミノさんたちを家の中へと案内した。
また少し溜まったら投稿します。




