#3 新たな住処【黄金龍】
よろしくです。
とりあえず……と。
オレは、しばらく魔法が使えないのがわかった(確定)
これから、どうするかだな。
ここまでのことを整理をすると、
①白い蛇を追って異世界にきた。
②イノシシモドキをやっつけた(もらった)
③精霊の王がお供に加わった。
う~ん……頭の整理が追いつかん。
とりあえず、家でも作るか(アスナが)
「アスナ、土魔法で家を作ってくれないか?」
「わかりました。 ちょっと離れていて下さい」
オレは言われるままに、そこから3メートルほど離れた。
「もう少し離れてください」
さらに離れる。
そしてもう少しと言われ続けて歩くことおよそ30m。
むー。 結構離れたな。
「いきますよ~」
アスナの少し間延びした声が聞こえたと思ったら。
【ズズ~ン】
と地震のような音が鳴り響いたと思ったら、土が盛り上がって、家と思われる建物が形成されていく。
どうやらオレは、アスナの能力を見誤っていたようだ。
なんかバベルの塔のような建物が出来た。
いや出現したといっていいだろう。
質量保存の法則を完全に無視した建物がそこにあった。
土魔法だから茶色と想像していたが、なんか落ち着いた銀色のキレイな塔だ。
そして高さもだいたい100mもあるだろうか。
オレが口を半開きにポカ~ンと開けていると、シルフがオレを塔の最上階に連れて行ったというか、飛ばした。
「あっちに街が見えるな」
オレは、考えることを一旦放棄して周りを見回してみる。
当然、見渡した限りだとオレの居る塔より大きな建物など存在しない。
安全面もバッチリそうだ。 高いから何が起きてもすぐに分かる。
とりあえず、シルフとアクアにこの塔を目立たなく出来ないか聞いてみた。
結局有効な手段として濃霧を立ち込めることになった。
森の動物、大迷惑である。
なら塔を壊せばいいか? いやアスナに悪いし……いや本音でいうと、結構高いところいいな! って思っていた。
それに何か異世界っぽい建物だし。
実際ないけどね。
結局、ここに住むことになった。
当初、けっこう上が寒いので震えていたら、フレイとシルフが暖かい風を送風してくれた。 その結果、今はすごく快適な空間だ。
その後にアクアとアスナに頼んでウォーターベッドモドキを作って貰い、さらに快適になった。
そして最上階を住むところとした。 景色は最高だしね。 あとシャッターのような物も作った。 朝、眩しいからね。
ちなみに全員、同じ部屋というか最上階だ。
まあ結構というか、かなり広いし問題もない。
風呂とトイレも最上階に作ってもらい、その下の階にこんがりと焼けたイノシシモドキくんと、美味しい野草。
よし! 1週間はここで待機だ。
それまでに精霊たちにこの世界の仕組みなどを教えてもらわないとな。
でも今日はいいや。
疲れたから早く休もう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。
とりあえず、家というか住む塔が出来た。
オレの念願であるマイホームだ。
そして来たばかりだから世界のことがわからん。
やっぱりエルフや獣人、ドワーフなんているのかな?
けっこう魔王や勇者なんかも居たりして……。
それに精霊も居たんだから、妖精なんかもいる可能性あるな、オレ的に一番賢くみえるアクアっちに少し聞いてみよう。
「アクア、ちょっといいか?」
「何ですか? コタロウさま」
「この世界って、あれだろ? 魔法やら剣で戦ったり何かしたりするんだろ?」
「そうですね…… 私は、あまり関わっていませんが、そんなこともありますね」
「でも、アクアたちがいなけりゃ魔法が使えないんだから、多少は関係あるんだろ?」
「私たちは精霊の王ですが、下の子たちのことまでは、よくわかりません。 私たち王は、コタロウさま以外の人間、いえ魔族やドワーフ、そしてエルフにも興味はありません。 まあ下の子達は自分が興味のある人を手助けをしているみたいですが……」
「じゃあ、あれか? もしかしたら、下の子たちは自分の興味のある人がオレを攻撃しろ! とか言ったらオレに攻撃してくんのかな?」
「まず精霊たちが、コタロウさまを攻撃することなんてないでしょう。 私たちも側にいることですし…… それに万が一にも攻撃をしたら、その子は消滅でしょうね、うふふ……」
何かアクアが怖い笑みを浮かべている。
だが、オレに魔法は効かない(魔法攻撃をされないから)と聞いて一安心だ。 オレ魔法使えないからな。
「そうだ! オレも魔法は使えないが、普通に生活をする為に、火を起こしたりくらいは出来るんだろ?」
「モチロンです。 魔法はあくまで無から精霊の力を借りて使うもの。 媒体のあるものは魔法ではありません。 またドラゴンなどのブレスも精霊から力を借りているわけでもないので、これにあたりません。 まあドラゴンくらいでしたら、何百、何千匹居ても私たちとっては同じですけど。 伝説と言われている黄金龍も私たちにとればペットのようなもの。 あとで呼んで、コタロウさまにご挨拶をさせます」
「……そうですか。 ありがとうございます」
こえ~。
ここに居る精霊たちこえ~よ。
伝説のドラゴンが挨拶にくる?
会いたいけど「コゾウがいい気になるなよ!」って言われたら、その場でオシッコちびる自信あるな。
あれ? アクアがオレから距離とってると半泣きしてる。
きっとアクアに対して敬語を使ったからだろう。
そりゃ、ドラゴン楽勝!って言ったら誰でもそうなるだろ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ねえシルフちゃん、ちよっといい?」
「なぁに~」
アクアがシルフを呼んだ。
あっ……なんかイヤな予感がする。
でも、身の安全が保障されているんだったら会ってみたいな、ほらオレも男だし、ファンタジーって言ったらドラゴンだろ?
「いってきま~す!」
オレがちょこっと物思いに耽っている間に事態はドンドンと進行していく。
シルフがすごい勢いで【びゅーん】と飛んでいった。
何あれ、すげー速い。
何か鳥みたいな、いやあれってプテラノドン?
いやワイバーンかな? みたいのを吹っ飛ばした?!
シルフって30cmだぜ。 ありえんだろ?
・
・
・
それから一時間後、シルフが戻ってきた。
「明日の今ごろ、黄金龍がこっちに着くよ~」
「それって、確定なのか?」
「そ~だけど。 大丈夫だよ! ちゃんとお土産持ってくるように伝えといたから!」
それ違うから!
いやオレ的には、自分の身が心配なんだけど……
そこへフレイが、
「黄金龍か。 五十年ぶりかな、元気にしてたか?」
「うん、元気みたいだったよ~。 何か昨日、人間の軍隊が来たからお土産いっぱいあるって!」
「そいつらは?」
「うん、美味しかったって」
うそ! 食べたーーー!!
明日来るドラゴンさん、いっぱい人間食べちゃったよ。
オレも捕食されちゃうの?
「 あの……シルフさん?」
「コタロ~、何で丁寧な言葉なの? あたし距離が置かれているみたいでイヤだな~」
「なら、シルフ?」
「なぁに?」
「そのドラゴンさん、明日こっちに来るの中止にならないかな?」
「なんで? お土産いっぱいだよ?」
グロなお土産なんていらんよ!
ちなみに奴隷もいらん。 お世話できないからね。
そもそもムキムキな男の奴隷兵士なんて需要ないから!
そして、それ以上にオレ捕食なんてされたくないよ。
来るな~。 ドラゴン!
「オレ、捕食されないかな……、間違って食べちゃいましたって事態になったら、シルフのことドラゴンのお腹の中でいっぱい文句言ってやるよ」
「ふふふ、大丈夫ですよ。 ドラゴンは人間を食べたりしませんから」
「でも美味しかったって……」
「あれは魔力を食べたんです。 ドラゴンは魔力を食べると、その分だけ魔力量が増え元気になりますから。 反対に食べられた人間は魔力が0になります。 また1から頑張らないといけませんね」
アクアがオレの危惧をしていたことを教えてくれた。
とりあえず、頭から美味しくガブリと食べられることはなさそうなので安心した。
安心したところで、少し冷静になって疑問が湧いたので聞いてみる。
「なら魔力を食べられた人間は、レベルが1になるのか? それともレベルが50だった場合、その人間はレベル50の状態で魔力が0になるのか?」
「レベル50の状態で魔力が0ですね。 高レベルの方ですと下手をしたら一生魔法を使えませんね」
こりゃ大変だな……
まあ自分たちで襲ったんだから自業自得か。
甘くない世の中だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして翌日の午後。
上空から
【バッサ、バッサ】
と、塔の近くに大型飛行生物の降りてきているであろう音が聞こえた。
この塔に訪れた人物? もわかっている。
【伝説の黄金龍だ】
多分この塔までの道中、黄金龍が通過した国や街など大騒ぎだったろう……
ご愁傷様だ。
ここに来た理由が、オレへの挨拶……。
ふむ。 黄金龍さんもお疲れさんだ。
オレは関係ないと思いたいが、首謀者のようになっている。
傍から見たらオレが、この世界に来てやったんだから、挨拶をしに来い、そんなレベルだろう。
ちなみにオレのレベルは変動せずにレベル6と低い。
イノシシモドキくんのレベル12よりも低く、森であったゴブリンくんのレベル4よりかは気持ち強い感じだ。
ただオレが雑魚であるのは間違えようのない事実である。
伝説のドラゴンにべちゃっと踏み潰されないように注意しよう。
とりあえず、せっかく来て貰ったんだから塔の外に出てみよう。
最上階の100mと黄金龍の高さはほとんど同じだった。
こりゃ、塔から降りる必要ないな。
まずは挨拶をと……。 ガブリと噛まれたら大変だ。
「初めまして、この世界に先日来たコタロウと言います。 黄金龍さんには、わざわざここまで足を運んで貰って非常に心苦しい思いをしています」
「オウ!久しぶり。 元気にしてたか?」
オレが挨拶をしていると、横から割り込むフレイ。
そんなフレイは、オレに手をつないで貰って至極ご機嫌である。
何故オレがフレイと手をつないでいるかって?
そりゃ自分の安全の保障である。
たいていどこのドラゴンもブレスは炎系が多いし、フレイとこの黄金龍との関係は良好そうである。
最悪いざとなれば、炎のブレスを火の精霊王であるフレイがちょちょいと、中和してくれそうである。
(フレイさま、ご無沙汰をして大変申し訳なく思います。 ところで、手をつながれている方が、かの御仁ですか?)
「そうよ。 私の横にいるのがコタロウよ。 私たちの大切な人よ、わざわざ会う機会をアクアが用意してくれたんだから、しっかりとご挨拶なさい」
すげーオレ偉そう!
オレ、全然偉くも何ともないんだけど!
一般人でモブAっぽいし。
(では……初めまして異世界から来られた王よ。 我が名は漣と申す。 是非お見知りおきを)
誰? 王って?
まあオレって事かもしれんが……。
オレ、誰も臣下なんていないよ。
童話の裸の王様クラスかのしれん。
でもまあここは、挨拶をと。
「伝説のドラゴンにお見知りおきをと言われるのも光栄だが、何の変哲もない人間だ。 何かあったら頼むよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇
さざなみ君がオレと精霊たちに挨拶をして帰っていった。
ちなみにもう趣味としている鑑定もさせて貰った。
結果はコレだ!
◆◇◆◇◆◇◆◇
サザナミ
種族:黄金龍
ランク:ドラゴンの王
レベル.872
知力:6104
武力:9592
魔力:5668
魅力:3924
スキル:ブレス 威圧 超回復
◆◇◆◇◆◇◆◇
つえー。
洒落にならない強さだよ。
オレ、やっぱり雑魚じゃん。
……でも、ここにいるちっこい精霊には手も足も出ないんだよな。 緑色にも。
「コタロ~、何か私を馬鹿にしたでしょ!」
「いや、翡翠色をした髪がキレイだな~って思っただけだよ」
「絶対に違うでしょ~!」
「いや、髪がキレイなのは本当だよ」
オレが褒めると、プンプンしながらも嬉しそうという器用なことをシルフはやってのけた。 これが最近の日常になりつつある。
■ ■ ■
で、ドラゴンくんのお土産は……。
人間の軍隊の持ってきた兵糧だった。
しかも結構な量。
とりあえず持てるだけ持ってきたとの事だったが
●小麦 1t
●こめ 20俵(1俵30kgくらい)
●乾し肉、乾パン 各100kg
●大豆 100kg
●じゃがいもやら人参、玉ねぎ、大根など 200kg
●塩などの調味料 200kg
●蜂蜜 30kg
●金貨 2000枚
●銀貨 1000枚
まあおおよそだが、こんな感じだ。
他にここに来る前に見つけたというソフトボールくらいの卵を10個ほど貰った。 ちなみに鑑定をしたら無精卵だった。
異世界の卵だったので生まれてくるモノを少し期待したがダメだった。
おかげで何の躊躇いもなく料理の方にまわせる。
現在、イノシシモドキと薬草くらいしかないオレにとって最高のお土産である。 オレは、彼と友達になれる、そう確信した。 魔力あげないけど。
魔法を使わないからいいだろ? って。
それとコレとは話は別だ。
せっかく異世界に来たんだから魔法を使うのってのは非常に魅力的だろ?
とりあえず、メシだ。
塩の他にソースのような調味料があった。
ソースは醤油に隠れがちだが、なかなかの万能調味料だ。
肉、じゃがいも、人参、大根、薬草をソースでえいやって炒める。
肉野菜炒めだ。
けっこう中華屋さんではソースを使っての肉野菜炒めに出会う。
なかなか味にコクが出て美味いのだ。
オレ的には醤油のさっぱりした味付けよりレベルが高いと思っている。
ちなみに今回は精霊たちも食べた。
理由は美味しそうとのことだった。
やっぱり異世界だろうと現代だろうと美味い物を食べないっとやっていけないよね!




