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精霊の王  作者: 蒼稲風顕
3/17

#2 精霊王【チートな存在】

よろしくです。

 オレは、二人の精霊と一緒に薄暗い森に入る。

 転ばないよう慎重に歩いておよそ20分後。

 ようやく陽のあたる少し拓けた場所に出た。

 広さは、だいたい小学校の校庭くらいだろうか。


 その拓けた場所には、先ほどの赤色の髪と茶色い髪をした精霊の他に、青い髪と緑の髪をした精霊と思われる少女がフワフワと浮いて居た。

 青い髪の少女は落ち着いた印象をうけ、反対に緑の髪の少女は少し活発な感じな印象を受ける。



「初めまして、異世界の方」

「やっほ~」



 上から、青い髪の少女、緑の髪の少女の挨拶だ。

 それにしても緑色、少し適当すぎるぞ。

 ……とオレは心の中で思ってもオレは口にしないのだ。

 何故って? オレが弱っちいからである。

 多分あの少女たちは赤い精霊と同じで強いだろう。

 自分の分を弁えないと痛い目に合うのは世間の通りだ。

 ちなみに、このことはドラマや漫画などで学習をしたのだ。

 オレは中二病なので、テレビなどの媒体から中で起きたことをはたかも自分が起こったかのように想像をして何度も何度も妄想の中、挫折したのだ。

 まあ現実では、特に挫折を……競馬でしたか……。

 万馬券を当たる妄想を繰り返して千円分の万馬券を1点買いしてちょくちょく失敗をした。 まあ1回3千円くらいだけど。



 む。 話がそれた。

 とりあえず、少女たちに挨拶をかえす。



「初めまして、コタロウです」



 オレが挨拶をすると



「うむ、コタロウか。 私はフレイだ」

「はじめまして、私はアクアです。 コタロウさま、宜しくお願い致します」

「やっほ~、シルフだよ。 コタロ~よろ~」

「コタロウさん、アスナです」



 それぞれ個性的というかテンプレ的な挨拶をしてきた。

 ただ何と言うか、彼女たちはオレに対してとても好意的な感じがするのは気のせいだろうか? それとも精霊は、このように誰にでも好意的なのだろうか? まあ疑問に感じるのなら聞いた方が早い。



「ところで、精霊さん達は誰でも好意的なの?」

「いや、違うぞ!」

「ええ、違いますわ」

「ん~ん」

「違います」



 全員、否定的な意見だ。

 ひょっとしてオレの勘違いか?



「じゃあオレのことも普通なのか?」

『いえ、好きです!』



 よく分からないが精霊たちに好かれているらしい。

 前の世界でも、聞きたかった言葉上位ランキングを聞けてとても嬉しい。

 いや、とてもいい世界に来たもんだ。

 白い蛇と呼んで悪かった。 ホワイトスネーク殿、感謝する!

 オレがそんな感慨にふけっていると、精霊たちがオレの近くやって来た。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 せっかくこっちに自分たちから来たので、フレイにこの世界のことを聞いてみるとするか。

 この赤い髪の精霊は、なかなか凛としていてカッコイイし少し男前な雰囲気を持った精霊だ。

 だからかもしれないが、他の子よりも聞きやすいし話しやすいのだ。



「ねえ、フレイ」

「うん、なんだ?」

「この世界って魔法みたいなのはあるの?」

「もちろんだ。 私たち精霊が力を貸せば誰でも使えるぞ。 ちなみに私は、火の精霊の王という立場だ!」

「すごいんだな。 フレイって」

「うむ。 一応、この世界で全て火の精霊を束ねるものだからな」



 ちょっこと得意気なフレイ。

 オレに褒められて嬉しそうだ。

 だが、オレに褒められて嬉しいのだろうか?

 この世界だと間違いなくオレは、下っ端構成員くらいの立場だぞ。

 まあフレイが喜んでいるからいっか。 助けてもらったし、野暮は言わない。


 

「それならオレも、フレイに魔法を使いたい、と頼めば使えるようになるのか?」

「それは、どうしてだ?」

「え……、もしかしてフレイはオレに力を貸してくれないの?」

「いや、もちろん貸すが、私がコタロウの傍にいれば火の魔法を使うことなんて必要ないだろ?」

「いや。 でもフレイって王様だろ? オレの傍にいて大丈夫なのか?」

「全く問題ない。 私に任せろ!」



 あれ……? おかしいな?

 ここは、お約束で何かチートじみた力をくれるんじゃないのか?

 しかも何故か王さまがオレのお供になったぞ。

 この世界的に大丈夫なのか?

 そして、いわば精霊王なフレイ。

 どれだけ強いか興味がある。



「なあ、フレイ? フレイを鑑定してみてもいいか?」

「ああ、構わないぞ」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 フレイ

 種族:火の精霊

 ランク:王

 レベル.とても強いらしい

 知力:賢い

 武力:強いぞ~!

 魔力:計測不能

 魅力:凛とした感じがいい!

 スキル:火のことなら何でもいける。 任せろ!



◆◇◆◇◆◇◆◇



 これってすげーのか?!

 何か数字が1個もないぞ!

 しかもオレにない、ランクってな、ものまであるし。

 そして魅力って、この表示でいいのか?



「どうだ? なかなか強いだろ?」

「……あぁ、スゴイな?」

(他に表現出来んだろ? 数字化されていないんだし……)



 オレに向かって爽やかに笑うフレイ。

 でもオレには、根本的な疑問がある。

 そこを聞かないと落ち着かない。 精神的に。



「だが、フレイ。 何故オレに付いて来てくれるんだ? 自分で言うのも何だが、オレは多分、何の変哲もない人間だぞ」

「ふむ。 なぜだろうな? 私自身もよく分からない。 ひょっとして異世界の香りに魅かれたのかな? ただコタロウと居ると私の気分がとてもいいんだ。 ずっと一緒に居たいと思わせるんだ。 それを返答ということでいいか?」



 そう言って、今度は可愛らしく微笑んだ。

 嬉し恥ずかし物語だ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 オレとフレイの会話が終わったのを見計らって、青い髪をした精霊、アクアが近寄ってきた。

 アクアとは、先程会ったばかりだ。

 オレの印象としては、物静かなお姉さんってな感じだ。 ちっこいけど……

 アクアは多分、水の精霊であろう、これで風だったら緑色に文句を言ってやる。



「コタロウさま、少しお話を……」

「アクアさんだっけ? オレはコタロウでいいよ」

「アクアさん……」



 少し悲しそうな顔をしている。 なぜだ? 緑色か?!



「フレイは呼び捨てだったのに、私はアクアさん……」



 まさかの原因はオレだったーー!

 緑色が腹を抱えて笑っていやがる。

 しばくぞ! いや、無理か。

 仕方ない、プランAを実行するしかないか。



「アクアか、それにしても綺麗な名前だよな! 響きもいいし、何よりアクアにとても似合っているな」



 とりあえず褒めろ作戦だ。

 まずは、レベル1だ。 もしこれでダメならレベル2に移行だ。 ちなみにレベル5まである。 レベル5は、自分にも大ダメージがあるから極力使いたくない。



「え……、私に似て綺麗な名前ですか」



 顔を真っ赤にして喜んでいるのがわかる。

 チョロくて助かった。

 よし! 話を逸らすのは今だ!



「ところでアクア、オレに話があるんだろ?」

「はい……」



 何か腰をふいふりテレテレしている。

 おかしい。 オレのイメージ的では物静かなお姉さんタイプだったはずだ。

 それにしても、こんな美少女だから他の人に言われて免疫力がついていると思ったのだが?



「アクアって、他の人に褒められたことないの?」

「有象無象の方にでしたらありますけど、意中の方に褒められたのは初めてですわ」

「意中の方?!」

「はい……私の初めての意中の方……」



 初恋?! オレでいいのか? 種族違うぞ!

 ……いかん、オレも舞い上がっていた。

 異世界魔法を覚えるチャンス到来だ!

 その前に、お約束の鑑定と。



「なあ、アクア?」

「何です? コタロウさま」

「アクアを鑑定をしてもいいか?」

「はい……。 どうぞ私の全てを御覧下さい」(ぽっ……)



 そこ、違うから!



◆◇◆◇◆◇◆◇



 アクア

 ランク:王

 レベル.マックス!

 知力:とっても賢い

 武力:嗜む程度ですわ

 魔力:包みこむ愛のよう……

 魅力:大人な魅力

 スキル:水魔法なら任せて下さいまし……



◆◇◆◇◆◇◆◇



 フレイの時より更にひどくなった。

 何をもって基準にしているんだかよくわからん……。



「コタロウさま、どうでした?」

「アクアと同じく綺麗だったよ」

「良かったですわ」



 何も良くないし、全く意味もわからん……

 ヘルプミー……



◆◇◆◇◆◇◆◇



 はぁ……

 結局、アクアも水魔法を授けてくれなかった。

 その理由は……私がコタロウさまの手となり、足となり支え続けますとのことだ。

 オレは、魔法が使いたいのに!

 魔力10の使い道がない。

 せっかく異世界に来たのに……。

 出来たのは、チートなお友達だけ……。 しかも今のところ精霊王限定だ。



「はぁ……」



 オレが溜息を吐くと、緑色の髪をした精霊、シルフがやってきた。

 ミドリン登場だ。



「ねえねえ、コタロ~って魔法を使いたいの?」

「シルフ!!」(急に緑色から株価急上昇でストップ高)

「私ならちょこっとだけ使わせてあげてもいいのよ」

「本当か!」

「うっそー」

「このカメムシ……」(ストップ安になった)

「えっ……カメムシ? うそ、わたし……カメムシ?」



 愕然とするシルフ。

 風の王と思われるシルフがくさいカメムシ呼ばわれしたのだ。

 屈辱だろう。

 だがオレも悲しいのだ。



「ひっく……」



 まずい……



「びぇえええええ~ん~」



 すごい泣き声だ。

 オレの鼓膜に大ダメージだ。

 まさか泣き出すとは。



「ごめん! オレが言い過ぎた!」



 オレの耳がヤヴァイ。

 王強し。 泣いて尚この強さ。




「……なら、私のお願い聞いてくれる?」

「わかった。 聞くから泣くのをやめてくれ!」

「約束だからね?」

「ああ、わかったから泣き止んでくれ」



 その言葉を聞くと泣き止むシルフ。

 そして、ぐったりするオレ。



「じゃあ、約束通り私のお願いを聞いてよね?」

「あぁ、わかっているさ」



 泣かれてはたまらん。

 シルフのお願い事は怖いが、オレの鼓膜には変えられん。



「じゃあ、私と一緒にずぅーっと居て」

「それがお願い?」

「うん、それが私のお願い♪」



 ギャップ萌えバンザイだ。

 オレの心にズキューンときた。

 クリティカルだ。



「あぁ、わかった」

「だから、魔法は授けないよ。 私がずーっと居るんだから」

「仕方ないな」


 オレは苦笑する。

 そして例のお願いをする。

 怖いものみたさだ。



「シルフのステータスを見てもいいか?」

「いいよ~」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 シルフ

 ランク:王

 レベル.イケイケ

 知力:イケイケ

 武力:イケイケ

 魔力:イケイケ

 魅力:ギャップ萌え

 スキル:風魔法で吹っ飛ばすよ~



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ……。

 …………。

 そっかー。

 そうきたか!

 おいブルータス! 隠れているんだろ! 出て来い!



「どぉ、コタロー?」

「シルフって、イケイケ?」

「うん、イケイケ♪」



 シルフはイケイケらしい。

 頑張れオレ!

 負けるなイノシシモドキ!

 オレは涙をこらえ、澄み渡る空をそっと見あげたのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 シルフとの会話も終わり、こっちをさっきからチラチラ見ている茶色の髪をした精霊アスナのもとに行った。

 オレが近付くと急にモジモジしだした。

 この子は、小動物みたいでカワイイ。

 妹キャラでもいける。



「アスナ、元気?」

「はい」



 会話が続かない。

 でも何だろう。 会話がなくてもいいかなと思えるのだ。

 シルフにも見習わせたい。



「頭を撫でていい?」

「うん♪」



 小動物みたいなので少し髪を撫でたくなった。

 本人の了承も得たので頭をナデナデする。

 シルクのような髪の触り心地が最高だ。

 しばらくこの滑らかな感触をあじわいたくてナデ続ける。

 そして恒例となった鑑定をお願いする。



「アスナ、鑑定してもいい?」

「はい、いいですよ」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 アスナ

 ランク:王

 レベル.強いです。

 知力:物作りの知識なら……

 武力:頑張ります。

 魔力:結構あります。

 魅力:コタロウさん、私の事を好きになって下さい。

 スキル:土魔法で家を建てられます。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 おかしいな……オレは自己紹介の紙を見ているのだろうか?

 オレ鑑定をしているんだよな?

 特に魅力なんてオレへのアピールになっているぞ。

 まあ嬉しいが。

 ちょこと鑑定に対して疑問を持っていると、ファンタジーの定番ゴブリンの姿が森の端で見えた。

 緑色の肌に醜悪な顔。 素晴らしい!

 ちょこっとテンションがあがる。

 早速、鑑定をしてみよう。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ノーネーム

 種族:ゴブリン

 レベル.4

 知力 3

 武力 7

 魔力 1

 魅力 1

 スキル:



◆◇◆◇◆◇◆◇




 ふむ。

 これが普通だよな。

 知力のあとは『:』じゃなく空白だよな。

 オレがアスナを見て首を傾げていると



「私のどうでした?」

「何か魅力で、私の事を好きになって下さいと……」

「……はい」



 ちっちゃな声で肯定をするアスナ。

 アスナって王だよな?



「そういえばアスナもやっぱり王様なのか?」

「そうです。 みんな私の友達です。 お願いをすると言うことを聞いてくれます」



 そうか、友達なのか。

 シルフなら頭にチョップをかましているところだが、アスナを見ると納得してしまう自分がいる。 まあアスナだし……と。



「魔法は?」

「私、頑張ります!」



 ちっちゃな手で握りこぶしをするアスナ。

 これ以上、頼めないな。

 オレの魔力10の使い道ってあるのかな?


 オレは、草の多い茂った地面に寝転び、空を見上げる。

 異世界も太陽があるんだ……。

 光と闇の精霊がいるかもしれん!



「なあ、アスナ。 光と闇の精霊っているのか?」

「はい、います」



 よし!!

 オレは、光と闇の精霊に魔法を使わせてもらおう。

 そう心に決めたのだった。

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