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精霊の王  作者: 蒼稲風顕
15/17

挨拶は遠く……【魔王と勇者】

宜しくです。

 塔の下に集まった人たちに挨拶をしに下に降ろして貰う。

 オレが下に降りると、ここに集まった人たちがオレに注目する。

 果たしてこれが吉が出るか凶と出るか。


 下に降りて行くと、集まった人たちが少し離れてオレを観察をしている。

 集まった人たちの表情をみると、怖がったり尊敬したりするよりも興味津々といった表情をしている。 しかも全員だ。

 そう! 全員なのだ! 普通、少しくらい違った反応をしてもいいと思うのだが……。


 と思っていたら、急に天気が曇りだし、雷鳴が轟く。

 むう。 不吉なり!

 すると上空から高笑いが聞こえてくる。



「ふふふ……はーはっはー!」



 特に笑うような出来事などないし、何も面白くもない。

 面白い事はないが、これから集まった皆さんにどうやって挨拶をするかを考えないというから憂鬱だ。

 とりあえず、上空で笑っている変な人対策として、シルフに頼んで聖剣ムラマサムネと邪剣エロイムエッサイムを取ってきて貰う。

 

 あの変な人は多分、魔王だと思う。

 なので邪剣エロイムエッサイムを万一装備されたら厄介だ。

 精霊王には攻撃が効かないかもしれんが、一般人なオレには効果がバツグンだ。

 とりあえず、まだ笑っているうちに装備してと。

 オレが装備したのを確認した魔王と思われる人物。 以後、長いので魔王としておく。


 見た感じ黒いお肌に、コウモリの翼。 チョイ悪親父に八重歯がギラリと。 なかなか格好良い魔王さまである。 言動さえ良ければね。



「おい! そこの脆弱な人間よ。 お前に、その邪剣エロイムエッサイムは使いこなせまい。 今なら殺さないでやるから、すぐにその剣を渡すがよい」



 あっ……バカだ。 アイツ。

 この邪剣にばかり目を奪われて、オレの横にいるフレイやアクア、アスナにシルフに気付いていない。



「アイツ死にたいの?」

 とフレイ。 口から火を吐きそうか雰囲気である。

 やめたまえ、周囲に住民になってくれるかもしれない人たちがいるんだぞ。

 やっつけるなら、違う所でやりなさい。


「ウフフ……コタロウさまを脆弱で、しかも殺すですって……。どう料理してあげようかしら」

 と顔は笑っているけど、目が大変な事になっているアクア。

 集まっている人がガタガタ震えていますよー。

 あ……アクアの下が氷っているよ。


「アクアさん。 切り刻んでシチューにいれましょう。 でも出来たら、すぐに捨てちゃいますけどね」

 いつものアスナじゃない! 精霊の良心であるアスナちゃんは一体いずこに?


「アスナ~、出来上がったシチューは、黄金竜の山の火山口に捨ててくるから大丈夫~!」

 それ不法投棄だからダメだからね、シルフ。

 それにトカゲっちが迷惑するからね。


「そうねぇ……。 妾の愛を込めた剣を何故、あの出来損ないの悪魔に上げないといけないのかしら?」

 あんた誰? 急に出てきたけど。

 ちっこいけどセクシー。 ジャンル的に立ち位置が厳しいぞ。

 そう思っていると答えが。


「おぉ……闇の精霊王よ。 我に力を!」

 魔王が何やら裏ボスの名を呼んだぞ。

 だが、魔王よ……軽くディスられてなかったか?

 これは報われないテンプレだぞ。

 よく時代劇で、商人が雇っていた先生から背後からバサリと殺られるシーンだぞ!


「ふっ……笑止!」

 何やら闇の精霊王がそう言うと、魔王から黒っぽい煙のようなものが引き抜かれていくと同時に地面に向かって一直線に落下していく。


「うわぁあああああーー!」

 うん、その気持ちわかるよ。 オレもバンジーってダメだもの。

 しかも魔王の場合、紐なしバンジーなんだよね。

 まあ魔王だから死なないと思うが結構な高さからの落下だよね?



【ズドォオオオーン!】



 おっ、結構な音が響いたんだが……。

 煙がもうもうとしている中、シルフがどっかに飛んでいった。

 で、煙が晴れてくると、そこには少しお疲れ気味のサザナミくんが現れた。



「サザナミを呼んで来たよ~」とシルフ。

「さすがシルフさんです!」とアスナ。

「コイツ邪魔だからサザナミ、捨ててこい!」とフレイ。

「サザナミ、あなたの山の火山に捨ててきなさい」とアクアが強い口調で言う。

「うむ。 持って帰って捨てる」と、ドラゴンの王がスゴイ勢いで魔王の残骸を拾って持って帰った。



 すごい剣幕の精霊王に言われたから、口ごたえどころか、とっとと早く逃げたかったんだろうな。

 あっ……、魔王が目を覚ましたと思ったら、八つ当たり気味に黄金龍くんがグチャリと……。

 南無~。 次に生まれ変わったら、ちゃんと周りを見て発言をするんだよ。

 じゃないと、名前すら紹介されないからね。



「ところで、闇の精霊王さん。 あれで(魔王を南無にして)良かったの?」

「はい……。 妾は主さまの為にあの剣を改造したのですから」

「やっぱり改造したんだ?」

「主さまに相応しい剣になるように妾の全ての力を振り絞って……」

「作っちゃったんだね?」

「妾の本気、わかりました?」

「充分に伝わったが、何故にオレの事を主と呼ぶ?」

「ダメでしょうか……?」



 さっきまでの妖艶さは微塵もなく、儚気な表情を持った少女がそこに居た。



「いや、いいんじゃない? うん、問題ないな。 ありがとな!」



 そしてヘタレなオレが居た。

 


「嬉しいです! 主さま、妾のことをカルマと呼んで頂けないでしょうか?」

「あぁ……。 えーっと、カルマ?」

「はい!」



 何かすっげー笑顔だよ。



「ところで、カルマは闇の精霊王なのか?」

「はい。 妾が闇の精霊達を取り仕切っております」

「久しぶりだな、カルマ」とフレイ。

「久しぶりですわね。 フレイさん」

「あら、カルマさま。 やはりコタロウさまの波動で」とアクア。

「そうですわ。 素晴らしい方ですわ」

「カルマさん、お元気そうで良かったです!」とアスナ。

「アスナちゃんも。 ふふふ、宜しくね」

「カルマっちもコタロ~に一目惚れ?」とシルフ。

「ふふふ。 妾も仲間に入れてね」

「そうなのか?」



 オレが聞くと、顔を真っ赤にしてプシュ~っと……。

 とりあえずオレ以外は妖艶で、オレのみ初心って言うのは何となくわかった。

 アクアとある意味似ているな。

 そう考えると、闇の魔法も絶望的か……。

 ただ聞くのはタダなので。



「カルマ、闇の魔法を教えて貰いたいのだが……」

「主様、妾の剣で大丈夫です」

「いや、少し魔法を使って……」



 何か目がウルウルしている。



「いや! カルマの剣があれば闇の魔法を使わなくても大丈夫そうだな。 うん!」

「そうです。 あの剣には妾の出来る全ての愛を込めて……」



 と、なんちゃらかんちゃら説明をしている。

 ただ要注意人物だと心のメモに書いた。 強そうな魔王を退治したカルマ。

 魔王からすれば、まさかの裏切りだ。

 ただ退治したのは確かだ。 本当にアイツ強かったのかなー

 ただ、何か力が漲ってくる気がするんだよな。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 コタロウ

 種族:人間

 レベル 99(MAX)

 知力 275

 武力 112,115(115:本来の値)

 魔力 10,105(105:本来の値)

 魅力 528

 スキル:鑑定 物理無効 属性無効 二刀流(初級) 

 称号 精霊の至宝



◆◇◆◇◆◇◆◇



 とりあえず、自分のステータスチェックだ。

 ふむ。 いきなりレベルが上限までいったらしいが、能力値が微妙だ。

 本音をいうと、もっと強くなると思ったが、何とも言えない能力値である。

 しかもレベル99で打ち止めとは思わないんだ。

 サザナミくんは確かレベルが872だったからなあ。

 まあ龍と人間を比べても仕方ないという事か。


 これを参考にするに、普通に考えてドラゴンと人間の強さを比較するのが、間違いなんだよな。

 ただ、これだけは言えるね。

 レベルが上がっても、日常生活に支障をきたす事はないだろうね。

 ちょこっとリンゴを食べようとしたら間違えて握りつぶしてしまったみたいな事を少し、ほんの少しだけ期待したんだよね。


 ただ全ての力を振り絞ってのマックス115でしょ?

 普通に生活していれば、せいぜい20くらいで大した事ないんだよね。

 もうオレは、英雄生活は夢のまた夢だから、普通に生きていこうと思ったね。

 まあ薄々気付いていたから、そう確信というか確認作業をしただけだ。


 で、分かった事はドラゴンとなんて戦うなんて絶対に無理! トカゲって心で呼んでいて本当に良かった。 聞こえていたら丸齧りだ。

 てか、ドラゴンの住処に行く人間って……。 鑑定スキルって大事だね。

 知ってたら突撃なんてしないだろうね。


 英雄や軍神という大層な名前で言われようが、人間は人間。

 武器というか巨大兵器か何かを作らないと無理だね。

 と、そんなことを一人で考えていたら、団地の住民予定の人達がワラワラと集まってきた。



「精霊王さまか。 初めて見たな」

「私も初めて見ました。 しかも5人もいらっしゃる」

「いや、ありがたいな」



 と、のんびりと話を聞いていると、奴が現れた。

 それは……。




◆◇◆◇◆◇◆◇




 現れた奴とは……。

 いわゆるあれだ。 勇者だ。

 光輝く銀色の髪に金色の瞳。 そして甘いマスク。

 ある意味、オレの敵だ。 いや、彼女のいない男の敵だな。

 奴がハーレムを作るせいで、10人くらいの男は彼女が出来ん!


 周りの住民候補の女性たちもキャーキャー騒いどるわ。

 あー、なんて本当に厄介な時に来たもんだ。

 ここには、さっきまで居た魔王の気配がするし。

 そしてオレは、邪剣エロイムエッサイムを持っていて、闇の精霊王であるカルマが傍にいる。

 ざわめく人たち。

 わかるぞ! これは勘違いテンプレ発生イベントだ。 そして次の展開も予想出来る。



「お前が魔王か!」



 剣を抜き、オレに飛びかかる勇者。

 テンプレは分かるが、少し冷静になれよ勇者。 死ぬ……いや、殺されるぞ。

 背後から。



 【スパーン!】



 素晴らしくいい音が鳴り響いた。

 勇者を絶妙なツッコミで叩いたのは、予想通り光の精霊王だ。 後の結末も魔王をみれば薄々気付く。



「……あなた、勇者失格!」



 おふ……いきなりか!

 まあ、確かに問答無用で襲いかかってくるあたり勇者失格かもしれんが。

 まだ魔王の方が攻撃しないだけマシだった。



「この人……素晴らしい人。 あなたは、それを瞬時に見分けられない、それどころか襲いかかるなんて魔王……いえ、虫けら以下。 あなた、なんで生きているの? ワタシ、あなたが生きているのが不思議……」



 と、物騒な事を言いながら、ハリセンで勇者をシバきだした。



 【スパーン!スパーン!】



 無表情に勇者をシバく光の精霊王(多分、流れ的に間違いない)をよく見てみる。

 美しい金色の髪と瞳。 陶磁器のような肌と人形のように整えられた顔が無表情で勇者をぶっ叩いている。

 叩かれている勇者は、もう涙目である。

 M属性持ちの勇者じゃなくて良かった。

 ただ、これ以上シバくと目覚めてしまうかもしれない。



「イタい! イタい! ごめんなさい!」

「ワタシに謝るの違う……」

「そこの人、ごめんなさい」

「心がこもってない……許さない」(←言っているのは光の精霊王)

「そんな~」

「誠意を持って、謝りなさい。 あなたは罪を犯した」

「何も聞かずに剣で攻撃しようと思ってすみませんでした。 許して下さい」

「全然ダメ……」



 勇者が怒られながら、ただひたすら謝っている。 くくく、あのイケメンが。

 もう少し反省してもらおうかと思う。

 なんか微妙に気分が晴れるような気がするしね。


 オレって、元々他人のちっさい不幸を喜ぶ人間だし。

 多少イケメンは、少し痛い目にあった方がいいんだ。

 どうせ後でちやほやされるんだし……。

 王女さまや聖女さまに癒やして貰うんだからさ……イラっ。



「光の精霊王さん! まだ奴は反省しておりません! もっとビシバシと制裁を!」

「……ラジャー」



 ビシバシと、制裁に力が入る光の精霊王さん。

 そうだ! オレじゃなかったら、殺されていたかもしれんし。

 ここいらでしっかり反省して貰わなければならん。


 そして5分後。

 なんか見ていてもツマラナいから止めさせよう。 もう、あきた。



「光の精霊王さん、もういいです。 あとこの勇者、物騒なんで光の加護など弱くしてもらっていいですか?」

「ラジャー。 ……極小で」



 勘違い勇者くんには光の加護は、極小で十分だ。

 だいたい加護自体が珍しいし。

 単純な勇者くんだから政治争いに巻き込まれたりしたら、勘違いをしたり騙された場合、被害増大だ。

 それに何たって、さっき退治したから魔王はいないし。

 

 過ぎたる力は、身をも滅ぼすけど、まあ過ぎなきゃ左遷くらいで済むだろう。

 あ~良かった、良かった。


 あっ……他の子(精霊王)達も現れて、自分の妖精たちに魔法を出来ないように言い含めている。

 流石に光の精霊王は、そこまでしなかったが、加護が強→極小だからなぁ。

 今後は、むやみやたらに剣を振るうんじゃないよ。

 次やったら魔王くんと同じ道を辿ることになるぞ。


 とりあえず、なんちゃって勇者は放っておいてと、問題は光の精霊王だ。

 オレが光の精霊王に向かう。



「ところで……」

「ワタシの名はヒカリ」



 おう。 いきなりひねりのない日本的な名前。

 というか、「ところで」でオレの聞きたいことが分かるんだな。



「えっーと、ヒカリさん?」

「ヒカリでいい」



 お約束の無口キャラだ。

 作者のキャラ作りの苦労がしのばれるな。

 なんといっても6人目だしな。 そろそろ限界なんだろうな。



「ヒカリ、あれどうするの?」



 あれとは、なんちゃって勇者だ。

 ここに置いておかれても、オレの迷惑だ。



「いる?」

「いらんよ」

「食べる?」

「どうやって?」

「焼く?」

「焼かん!」



 らちが明かない。



「邪魔だから、この世界の人の邪魔にならない所にポイっと捨てるか」

「どこに捨てる?」

「無人島辺りに捨てれば、被害が少ないんじゃないか? シルフー」

「どしたの~?」

「勇者を、遠くの無人島にポイって捨ててきて」

「おっけ~!」

「とりあえず、物騒な武器と防具を外してと。 まあ仮にも勇者だから、服だけでも生きていけるだろ」

「大丈夫じゃない~」

「なら、これでよしと。 シルフ、宜しく」

「は~い!」



 ふむ。 全て解決だ。

 政治に利用されず、王女さまや聖女さま、美人な子にも会えずに無人島でサバイバル生活。

 殺人未遂犯には、これくらいで許してもいいだろ。

 所謂、時代劇でいう島流しの刑だね。 オレって名奉行かもしれん。

 サラバ勇者。 もう会う事はなかろう。



「さてと、ヒカリ。 ヒカリは、これからどうするんだ?」

「あなたと一緒に住む」

「多分そんな気がした」

「いいの?」

「今さら1人増えても、同じだ。 なあ?」



 と、精霊王に向かって聞くとみんなウンウン頷いている。



「とりあえず、オレの名はコタロウだ。 よろしくな、ヒカリ」

「うん。 よろしくコタロ」



 コタロウの「ウ」がない。 無口だから1文字減るのか。

 とりあえず、これで火・水・風・土・光・闇の精霊王が揃ったな。

 なんか戦隊ものや少女戦士ものが作れそうだ。

 オレが総司令みたいな感じで。


 まあこれでオレの生活がさらに潤いそうだから歓迎だ。

 光と闇が加わるから、寝るときや眠くないときに重宝しそうだ。

 それに収納BOXも闇魔法で作れそうだし。

 いや、いいね!


 あっ……住民予定の人に挨拶をしなきゃ。


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