伯爵家での出来事【幹部さんたちとの話合い】
宜しくです。
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オッサンの先導のもと、街に入ることになったオレ達。
とりあえず、オレ達は無難に違う街からの貴族の来賓者扱いになった。 何か問題を起こしたら、あなたたちの身に面倒事がいっぱい降りかかってきますよ、ってな感じだ。
一応オレたちは、街を視察するという名目のこと買い物をしたりする。 もちろんテツドウさんも一緒で。
テツドウさんがいるので、多少物は安くはなるかもしれないが、ぼったくられる事はないだろう。 万が一何か問題あったら、街中どころか国全体で魔法を使えなくなるかもしれないと伝えてある。
【オレを騙したらアクアが許さないと思うからね】
その結果テツドウさんは自分だけでなく、市場の責任者も買い物時に一緒に同伴することになりそうだ。 もちろん精霊王と魔法のことも伝えておくつもりだ。
そうすれば、下手なことをしないだろう。 精霊ですら人の嘘がなんとなくわかるのに、それが精霊王だったら? 立場のある人間だし破滅への序曲に足を突っ込まないだろう。
市場の責任者が同伴をしてくれるので物を探したり説明を受けるのにも困らないだろう。
ちなみに忙しいお二人にタダで案内を頼むというのも酷なことなので、ここはアスナの作った《普通のコップ》を五個セットでプレゼントすることにしようと思っている。
アスナからすればコップなどチョチョイのチョイで10秒かかずに作る。
しかもアスナが作った物は《普通のコップ》でも日本でいうと国宝物レベルだ。 なんといっても魔法を司る精霊王が作ったものだから、造形美は勿論のこと学術的にも価値があり値段など付けられないだろう。 まあ個人の物だったら取り扱いに困るが、この街の物だったら、役に立つかもしれない。
オレの塔にある物? 多分オレの普段使っている物一つで城くらい建つんじゃないか?
【だってアスナがちゃんと作った物だから】
形も素晴らしいが、付加されて魔法などスキルがハンパない。
ミノさんも風呂入ったらなかなか上がれないし、ちゃぶ台でも感動していたのを覚えておいでだろうか?
あの塔は、芸術と魔法科学の最先端を突っ走っている代物なのだ。
そんな訳だから、あそこで生活するだけなら、日本より快適だ。
風呂に入ると、肉体的だけでなく、精神的な疲れなど全て取れるし、トイレに行くと用を足すと天国にでも行けそうな解放感を味わえ、ベッドに寝るとまるで雲にでも寝ちゃたの? のような夢見る感じになる。
台所もオレのリクエストで、前の世界の生活レベルを大きく上回っている。
その素材が一番美味しい状態のままでいられる食料保存庫や水や牛乳、氷なども品物毎に最も適した温度で冷やしたり出来る冷蔵庫を凌駕したものなど。
ただそれに比べて料理の材料とそれを使うオレの料理の腕はイマイチなのだが。
今回は、それを補うため食材とミノさんの畑に蒔く野菜や果物の種を買いに来たのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
馬車の中で、そんなことを話しながら、街へ入る。
ここまで辿り着いくのが長かった。
街の入り口には、あの衛兵さんが門を守っている。 その門は、土色のレンガ造りをしており、高さ5mで幅2mで街全体をぐるっと囲っている。
今オレたちが入ってきたのが正面門で、他に三箇所の門があるそうである。 こちらは、この門に比べて半分ほどの広さとのことだ。
当然、テツドウさんがいるので顔パスで門を通り抜ける。 馬車で街を走っていると、埃が舞い、馬車が揺れてお尻が痛い……と、いう事は全くない。
何故なら、なろうで異世界小説をいっぱい読んで研究したからだ。 そこら辺は、オレにとっては常識なのだ、甘く見て貰っては困る。
アクアとアスナに万能クッションを作ってもらい、シルフに馬車の中の空気を浄化してもらうのと同時に埃などを舞い散らないようにする。
フレイには馬車の温度を管理してもらい、馬車内はすごく快適だ。
道中快適に走り、この街の中心部まで行く。
テツドウさんと話したところ、この街を管理するのは伯爵さまであるとのことだ。 伯爵的テンプレ万歳だ。
この伯爵さまの下に内政、外交、軍事の三人の幹部のもと、この街が運営されているとのことだ。 ちなみに伯爵さまは、半分以上は王都にいるらしく事実上この街は、三人の幹部で運営され、成り立っているとのことだ。
ちなみにテツドウさんは、外交の幹部とのことだ。
とりあえず、この伯爵さまの屋敷へ向かうことになった。 屋敷は何というか沖縄の首里城を小さくした感じの建物である。 赤色というより朱色でなかなか目立つ。 下は白い砂利が敷き詰められており朱色が鮮やかである。
ちなみに街中で見かけた家は、門で使われていたような土色のレンガで造られた家だったので違和感がハンパない。 この建物も含め、あとで聞いてみることにしよう。
そして馬車が屋敷に入る。 屋敷に入ると、使用人が並んで出迎える。
首里城に紺色のメイド隊は似合わなかったとここに記す。
無論、執事の紺色も似合わない。
どうせなら、朱色や黄色の服にした方がまだいいと思う。 ま、好き好きだけどね。 テツドウさんと馬車から降りると執事とメイド隊は、片膝をついて頭を垂れた。
「いらっしゃいませ、ご主人様。 お嬢様」
【ここはメイド喫茶か!】
オレはツッコミをおさえることが出来なかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
オレたちは、テツドウさん先導のもと屋敷の会議室に向かった。
本当ならメイドさんに案内をされたがったが、テツドウさんが無駄というか、責任の一端を他の幹部2人に押し付けたかったと邪推する。
オレが同じ立場だったら、絶対にそうする自信がある。
会議室に入ると、ごっついオッサンと妙齢の女性がイスに腰掛けていた。 何か2人とも顔色が良くない。
オレたちが部屋に入ると、ごっついオッサンがビシッとした感じで直立し、挨拶をしてきた。
「ようこそ、おいでくださいました。
精霊王さまが来て下さり、大変光栄です。
私共に出来ることがありましたら、何なりとお言いつけください」
ごっついオッサンが、汗をカキカキ似合わない口上を読み上げる。
きっと練習をしたんだろうな、と何やら微妙に温かな気分になる。
うんわかるぞ、オッサン。 隣の女性に練習させられたんだろ? だって手にしっかりとメモ用紙がある。 ただその五分の一も言えてないのもよくわかるぞ。 だって自分の名前とかメモに書いてあるのが少し見えたが、そのようなこと一切述べてなかったしな。
まあきっと後で怒られるんだろうな、隣の女性のオッサンを見る目が鋭いぞ。 だけどオッサン、オレは空気の読める男だからフォローしないぞ、しっかり怒られてくれ。
次に、隣の女性が立ち上がりこちらに挨拶を述べる。
「ようこそ、おいでくださいました。
先ほど挨拶を述べたのが、この街の軍事顧問のレイザー・アドミラァル。 私が内政の顧問をさせて頂いているミシェル・クリスと申します。
精霊王を統べる方、そして精霊王さまを我が屋敷にお招きすることが出来、大変光栄に思います。
私共に出来ることでしたら、不肖のみでありますが、総力を挙げて協力をさせて頂きます。 何なりとお申し付けください」
「ありがとうございます。 レイザーさんにミシェルさん。
私の名前はコタロウ・ヒナタと言います。 コタロウとでも呼んで下さい。
簡単に挨拶をすると私はこの世界の人間ではありません。 違う星の人間とでも思って下さい。 わかり難ければ、遠い国の人間とでも解釈して下さい。
で、一週間前に何も分からずにこの国に飛ばされたので、この国での生活水準やらも分からず、食料すらもあまりない状態でした。
まあ幸い、黄金龍のサザナミさんに軍が使った食料やら金貨などを貰ったのですが、いかせん偏っています。
そこでこちらの街に食料類と植物の種でも買いにきたんですけど、ほら、私の横に精霊王がいて、もし私に何か不都合なことが起きると、この子たちが怒ってこの街いやこの国にとって大きな災害が起きてしまう可能性があります。
だから、そのようなことが起きないように、あなた方を頼ったんです。
わかりますよね? 私に少しでも不都合があったらこの国に魔法が一切使えなくなってしまうという事実を」
真っ青になって頷く、幹部の方たち。
ちょこっと強い人だったら少し利用をしたいと思うだろう。
だが、神にも近い精霊王なら利用しようと考えるだろうか? 失敗した時のリスクを考えたら、恐ろしくて使えない。
それなら精々良い印象を持って貰うくらいにしか選択肢がない訳だ。
幹部さん達もなかなか大変なのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
挨拶が終わったので、本題に入る。
「オレたちは、この街での買い物が一番の目的です。
食材とか植物の種を主に買いたいと思っています。
あと、この街の名物料理とか暮らしも見てみたいですね。
他には馬やニワトリが欲しいので牧場関連を少し見たいですね」
一応金貨は100枚ほど持ってきている。
ドラゴン王からいっぱい貰ったが、そんなには持ち運べない。 まあ多分それくらいあれば問題なかろうと思っている。
もし足りないようなら、後で持ってくればいいことだ。
とりあえずこの世界での金貨の価値を聞くと、日本円でいうとだいたい5万円くらいらしい。 日本の10万円金貨を考えると半額くらいの価値か。
でも、食料品と野菜の種と馬二頭とニワトリくらいだから500万あると考えると問題ないハズだ。
他の品物は、アスナという職人さんがいるし必要ないのだ。 気になったら、見せて貰い再現してもらえば、タダだし高品質だ。
そして馬を買って馬車に乗りたいしな。 あのトカゲの王さまに頼んだらケンタウロスを紹介される可能性が高い。
そうなると、塔の下が城下町ならぬ塔下町になりかねん。 オレ的にこれ以上は面倒みきれん。
とりあえずその事を幹部の連中に話すと、
「なら、テツドウ氏に」
「ちょっと待……」
「そうですね。 一応外交のことですし、テツドウさんにしましょう」
おぉ責任の擦り付け合いだ。
で、当然ここはテンプレ通りにテツドウさんの役目になる訳だ。
そもそもテツドウさんに始めにお願いをした訳だし。
ただテツドウさんも少し悪あがきをしている訳ですよ。 だって責任重大だし、あの女性なら上手くやってくれそうだし。 ただ残念ながら自分の意見をキチンと言わせて貰えないところに玄人芸があるんだな。 決まったらしく、テツドウさんが苦笑いを浮かべやってきた。
「皆さん、さあ行きましょうか」
「コタロウ、奴でいいのか?」
不機嫌な顔を隠さずにフレイが言う。
まあオレ達をたらい回しにしようとした事が不愉快の原因なんだなって思う。 現にフレイだけでなくアクアも
「フフフ……お馬鹿さんは、一度痛い目に合わないとダメみたいですね」
と、いつものオーラを出している。
案の定、オレ達以外ガクブルだ。
当然、面白いからどうなるかみている。
それにしても、何故こんなオレが精霊王に好かれるか理解出来ない。
オレは、他人の小さな不幸は楽しいが大きな不幸は手助けするタイプだ。 机に小指をぶつける人を見てクスクス笑い、交通事故にあった人をみたら、救助活動を頑張る少しひねくれたというか小市民的な考えの持ち主だ。
話は戻る。
「コタロウさん、あの人必要ないです!」
アスナまで拒否をしている。
まあ素直な子だから、そういった擦り付け合いをみて嫌になったんだろう。
「早く買い物をして帰ろうよー」
シルフは平常運転だ。
早く帰って遊びたいんだろう。だが、
「まあまあ、テツドウさんも色々大変なんだから、仕方ないよ。 ねーテツドウさん?」
テツドウさん、《貸し4》ですよ。 何たって4人いるんですから。
《貸し100》と言わない私の心は太平洋くらい広い。
「はい……」
はい、テツドウさん撃沈。 軍事と内政の幹部さんは仲良く失神。
あなた方も各《貸し4》ですよ。 さて、何を頼もうかなー。




