4月8日 私立浜丘学園始業式-7
夕飯の食材を買いにひとり商店街へ。姉さんとアキラは部活の勧誘に、たんじは同じクラスのやつらとゲーセンに、りんごは陸上部に顔を出すとメールが来た。
商店街には子供の頃からずっといるから店の人たちは沢山おまけしてくれる。
こういう人間味を味わえるからスーパーよりこっちをえらんでしまう。夕飯の食材を買いにいったというのに明日の夜の分までおまけしてもらった。
そして大量の買い物袋を持って家に。見慣れたはずの玄関を開けて家にはいりたいのだが・・・・・・。
女の子「すーーー・・・・・・。すーーー・・・」
見知らぬ女の子がドアの前で猫のように丸まって寝てた。こういうびっくりした時は本当に手が開くようだ。買い物袋をどさっと落として痛感した。
女の子「んっ?・・・・ん・・・すーーー」
落とした音で少しおきたと思ったがまたすぐに寝た。
結 (えっ、えっ!なんでこんなとこで寝てんのこの子)
あわてて散らばった中身を集める。近くでみると結構な美人だ。寝顔はとても気持ちよさそうで邪魔しちゃ悪いくらい安らかだ。姉さんで美人になれているというのに心臓の動きがとても早くなった。
結 (綺麗だな・・・て、そうじゃなかった!)
そう見とれてる場合ではない。実際にこの子をどうするかを考えないといけない。
どうしようかな。じっくりと考える。
1.起こす
2.はだかになる
3.キスをする
頭の中で選択肢がよぎったが、俺が選んだのは・・・
バタン!←扉が閉まる音
裏口から家に帰った。中途半端に重かった買い物袋をリビングに置いて部屋で着替える。
制服とかばんを脱ぎ散らかすと勝手に部屋に入ってくるりんごが文句をいうのでちゃんと綺麗に戻す。
そして数分ばかしゆっくりして、夕飯作りにリビングへ向かう。
要するにへタレなのだ。俺は玄関で美少女が寝てようが起こすために話しかけるのはできない。たんじだったら喜んで2と3を選ぶが俺は逃げる。
ピンポーン♪
ドアのチャイムが鳴った。
なんだろうとへタレた俺はびくびくして玄関に行く。
そしてまさかとドアの穴から外をみると、そのまさかのまさか女の子はウチに用事があったのだ。
女の子は同じように眠そうな顔をしてたのだが、俺が瞬きするとふっと視界から消えた。
結「えっ!」
なんでと、慌てて俺はドアを開ける。すると、ゴンッと鈍い衝撃が握ったドアノブに響く。衝撃に驚いて、顔をドアの隙間から出すと、
女の子「いたたた~」
女の子はまた丸まって寝ようとしていたのだろう。見事に扉で女の子のおでこにぶつけてしまった。
結「あっ、ごめん!だいじょうぶ」
頭だけだした状態で心配する。音から考えると結構な威力な気がする。
女の子「たぶん大丈夫~」
その場でおでこを抑えてた女の子がこっちを見る。
寝てるときも美人だったが、こっちを上目遣いで見る彼女にどきっとさせられる。そして顔に熱を帯びた俺の顔を、まじまじと見てくる。
女の子「んー?」
ほのかに赤くなったおでこの彼女が今度はたちあがって僕を見る。
結「えーっと。なんか用ですか」
まだドアの隙間から顔が出せずに、みられてどんどん顔が赤くなる。
女の子「ゆいくん?」
一瞬なんで知ってんだろうとおもったが、服を見るとウチの制服を着てた。たぶん3バカと姉さんのことを知ってる人だろう。
結「ええ、まあ。結ですけど」
俺はこの人のことしらないし、きっと人気者の姉さんの友達かもしれない。
結「姉さんはまだ・・・」
と姉の不在をつたえようとしたそのとき、急に扉が開いてふんわりと包み込まれる。
女の子「久しぶりだねーーー!!」
やわらかくていい匂いがした。俺はこの女の子に強く抱きしめられていた。
ドラマでいえば長年の再会のときにやるほどのもの。
結「えっ、ちょっ、まっ、ど、だ!」
思考停止。急にされて何もできなかった。
女の子「もうー。ほんと久しぶりだよーー」
固まって熱を放出する俺に、頬ずりしてきた。ごしごしとマーキングするかのように激しくされる。されるがままで数秒、やっといままで姉さんにより養われた免疫が復活した。元通りではないが会話くらいまではできるとこまでもどった気がする。くっついてくる彼女に意を決して話す。
結「えっと、ちょっと、待って、どちらさま、だい?」
気のせいだった。免疫も体の火照りもあんま冷めておらず、途切れ途切れにしか話せなかった。
すると、女の子はくっついた体勢ではなく、向かい合う体勢に変えた。
女の子「覚えてないの?」
さっきまであんなに満面の笑みをしてたのに少し曇った。
結「いや覚えているも何も、君の事は初めてみたし!」
空気が一変した。肩に置いてあった手が痛いくらいに握られる。いや潰されかける。俺は痛みで顔がひきつってる。あんなに熱かった体もあっという間に冷めた。加えて痛いと言いたくても声が出ない。彼女の表情、阿修羅の前では何もいえなかった。
女の子「そっか~。覚えてないんだ~」
ゆらーと顔を上げて、こちらを睨む。目つきだけでも恐怖なのに、ゆっくりとした口調がさらに恐怖を倍増させる。
女の子「じゃあしょうがないね~。思い出させてあげる~」
女の子はぐっと思いっきり頭を引く。大きな振りかぶり、何をしてくるかは予想できた。ついでにこのシチュエーションとその行動が僕の古い記憶を呼び覚ました。昔、じいさんちで暮らしてたとき。異常なまでに俺になついてきて、そして異常なまでに強く、近所の子どもたちを半殺しにしてた悪魔「ヘッドクラッシャー」・・・本当の名を
結「凰条真奈美!!」
ガーーーン!!!
時既に遅し。俺は真奈美の頭突きで吹き飛ばされ、意識が途絶えてた。