4月8日 私立浜丘学園始業式-5
ホームルームが終わると始業式があるから体育館に向かうたんじ、アキラ、俺の3人。
アキラ「なにげに俺たちまた同じクラスなんだな」
そーいえばと思い付いたようにアキラがいう。
たんじ「なんつーか、こりゃ来年も同じかもな」
結「ははっ。たしかにな」
小学校から考えればもう8年同じクラスになってる。浜丘学園は様々な人と触れ合わせるという考えで毎年クラス替えをするのだ。一学年の生徒280人いるなか、こうやってまた3人とも同じクラスになるのは腐れ縁にもほどがある。
そんな俺たち3人についたあだ名が
??「あら?3バカじゃない」
そう3バカだ。…ん?ふと呼ばれた方を向く。
たんじ「会長、はよーす」
???「おはよーたにし君」
運動部が盛んなこの学園では珍しい文化系女子。2年でありながら生徒会長の「御門町 華乃」。綺麗な黒髪で、浜丘の大和撫子。数少ない文化系で清楚な感じから学生の間で大人気。告白した男たちは数しれず、でも一切受け付けなかったことから「最硬」とよばれてる。また毒舌がきつく、泣いた男も多いとか。
たんじ「いや、たにしじゃないっすから」
華乃「みんながあなたをたにしと思ってるのよ」
ニコッと笑う。表情だけ見たら思わずドキッとしてしまう。が、言葉によってたんじがだまる。
華乃「大丈夫よ。私はたにし見たら熱湯かけてあげるから」
うふふとまた綺麗な声で笑う。
たんじ「ちょっと、それは虫の話だよね?」
きっつい冗談でたんじがあわてる。すかさず俺はフォローする。
結「ゴキブリとかにもだけど熱湯って万能だよな」
華乃「そうなのよね」
笑いながらたんじをみていた。
たんじ「ねえ?俺じゃあないよね?」
ふむ。どうやらフォローの仕方を間違えたらしい。
アキラ「こらこら。さすがにいじめすぎだ」
みかねたアキラがかばいにきた。
華乃「あらあら、たにしの旦那が助けに来たわね」
イケメンが来ても一切動じないのはさすが最硬。
結「つか御門町、式の準備はいいのか?」
生徒が適当に体育館に集まるとはいえ、俺たちは真面目な部類じゃないから時間ギリギリだ。
華乃「あら、結構時間ギリギリね。いかないと」
そういって、小走りで走ってく。後ろ姿や大和撫子のような黒髪は見た目だけならおしとやかなのに。
そうして俺たちも時間ギリギリだが体育館にはいって、式を受けた。
式が始まって騒ぐやつはほとんどいない。なんてたって二メートルの学園長がどっしりと構えてるんだ、騒ごうにも騒げない。顔にある生傷が歴戦の証と生徒の間で噂されてる。まあ家族だと知ってるんだけど、生傷はばあちゃんとのケンカの証拠なんだけどね。
生徒会長の華乃はじいさんの隣で優雅に座ってる。その横には副会長の姉さんが座ってた。ずっとそうだが姉さんは会長選挙じゃなくて、副会長として志望してる。本人は部活に力をいれたいということから、執行部に入りたくないらしいが推薦でやらされることが多いんだとか。
会長の話で華乃が壇に立つ。
華乃「おはようございます。みなさん」
マイクを通して、澄んだ声が体育会に伝わる。壇をあがるときに見えたすらっとした足でテンションが高い男子はさらにヒートアップしてた。
華乃「私たちは去年………。…、……………。」
華乃がしゃべるにつれ、男たちは顔が緩んでく。特に一年生は彼女の毒舌っぷりをしらないから尚更ゆるむ。
結(ははは…ことしは何人振られんのかな)
などと考えてると、華乃の話は終わってた。なんというか、俺の知り合いって猫被ってるやつ多いな。
司会の進行で式は学園長の話になる。
じいさんは壇上にあがると置いてあるマイクをどかす。昔、第一声でマイクを破壊したことがあるのだ。
仁「おはよう!!諸君!」
一言で周りの間の抜けた空気が引き締まる。一年生たちも憧れの先輩を見てる顔とはまるっきり違うものになる。
仁「ためになる話やそういう話は会長にいってもらったからな。わしは簡潔にいおう!」
先ほどの会長の話は5分はかかった。その5分でファンになった生徒のかずも多い。
でもじいさんこと学園長は、
仁「自分で考え、自分で進め!」
たった二言。これだで人を虜にする。発言は教育者としてどうかとは思うけど、心に響く言葉ではある。