4月8日 私立浜丘学園始業式-2
朝食が終わるとじいさんは一度家に帰ると出ていった。じいさんはばあちゃんと二人暮らしだが、朝食の時は姉さんと稽古帰りに一緒にご飯をたべてく。たまに夜もご飯を食べに来るがそれはばあちゃんとケンカして逃げてくるときだ。姉さんの両親は海外赴任が多くて昔から家を空けることがおおかった。だから子供のときはじいさんちで暮らすことが多かったが、俺が中学のころに人が住まない家は悪くなるといってこっちの家に住みはじめたのだ。とはいいつつも、じいさん家と俺らの家は結構近くこっからでも確認できる距離。学生ふたりで住んでで何か危ないことがあったらすぐ来てくれる距離でもある。
じいさんが出ていったあと、俺たちも学校に行こうとする。
涼香「ゆいー。学校めんどくさいよー」
結「準備できてるじゃん。なにいってんの」
涼香「準備できててもめんどいのはめんどいー」
ソファで制服のまま横になりゴロゴロしてる。ときおりチラッとみえる下着を見たところで俺の心は動かない。
結「つか、そろそろいかないとまずいんだけど」
学校まで徒歩20分。いまからいったら朝のホームルームの5分前につく計算になる。
涼香「わかったよ。いくよ」
結「すぅ姉、弁当」
うなだれてる手にお手製の弁当をもたせる。
涼香「ん。ありがとー」
俺も鞄に弁当をいれてそのまま一緒に家をでた。
玄関をでると1人の女の子がケータイをいじってまっていた。
涼香「およ?りんごー?まってたの?」
りんご「……一応ね」
涼香「1年生ってのはうらやましーなー」
咲「…結。おはよう」
うざ絡みをする姉さんを見事にスルーした。
結「おはよー、りんご。待たせちゃったかな?」
咲「10分くらいかな」
そしてまたケータイをいじる。
彼女はお隣さんに住む幼なじみのひとりで1つ下の「水巻りんご」。暇さえあればケータイをいじってネットサーフィンや漫画、本やゲームともろインドア系。ではあるが中学のときは陸上部の期待のエースというギャップもち。身長は姉さんとおなじくらいだが、髪の毛はクセッ毛で大変らしい。
りんご「…そろそろいかないと」
結「ああ、そうだね」
俺らがいくと、りんごも携帯を閉じて一緒に行く。
涼香「いやーやっと今年から咲も一緒に学校いけるなー!」
りんご「そーだね。家は隣だから毎日のようにあそんでたことはあったけど」
ケータイをしまってるとりんごもそれなりに話す。声のボリュームは大きめの姉さんとは違って小さいままだが。
結「というか、勝手に俺の部屋でゲームしてたけどな」
りんご「それはしかたない。最新機種があるのがいけないのだ」
へへへと笑われる。
涼香「別にいーじゃないか、それぐらい。なー?」
りんご「ねー」
ふたりとも見事に頭を同じ方向に傾ける。。
なぜなんだろう。物静かな年下にもいじられてしまうというのは。この二人は真逆の性格というのにほんと息が合いすぎてる。
結「でも、部屋入った瞬間ゾンビの頭が爆発するのはやだな」
そう。以前は帰った時にりんごが喜んでゾンビの頭をショットガンで撃ち抜いてたのだ。
涼香「…それはやだな」
ホラーものが人並みに苦手な姉さんもこれには同意してくれた。
りんご「えー…たのしーのになー…」
結&涼香「…………」
物騒な年下である。
雑談を話しながら歩くと途中、商店街を通る。朝に開店してるとこは少なく多くの店がまだ閉まってる。ただちょうどシャッターを開けた店から見慣れたふたりがでてきた。しかもふたりともパンをくわえたまま、こっちに気づく。
アキラ「ぼー!ぶい!ぼばようー!」
身長の高いイケメンがパンをモゴモゴさせる。
結「食ってから話せよ」
俺の言葉にたいして、急いでパンを飲み込む。
アキラ「よ!結!おはよー!」
結「おう、おはよーさん」
歯が光る演出をだしたいほどの爽やかな挨拶をくらう。これがイケメン効果というやつなのか、挨拶だけでもうおなかいっぱいだ。
たんじ「おはよー、ブイ」
もうひとりはさっきまでのは食い終わったらしく、新しいのを食べてた。アキラの挨拶みたいになにかしらの演出はいらない平凡な挨拶だ。
結「おはよーたにし」
たんじ「たにしちゃうわ」
結「おれもブイじゃないわ」
このふたりが残りの幼なじみ「海原アキラ」と、りんごの兄「水巻たんじ」。ふたりともパンを食べてきたのはアキラの家がこの商店街で「海原ベーカリー」をやっていて、たんじがいつもアキラを向かいに行ってはパンをもらってるからだ。アキラは浜丘学園でも有名なイケメンのひとりで、そのクールな見た目ながら子供みたいな笑顔が素敵だとか。対するたんじは常日頃からヘラヘラしてて、アホな言動と行動が多いことから学校では有名なおバカさんのひとり。