ケイの依頼
ケイさんの本題というのは、個人としての探偵さんへの依頼だった。
「私の従姉妹をね、説得してほしいのよ。女の子で、絶賛家出中。年は助手ちゃんの一つ下、だったかしら。家出の理由は親との喧嘩。恋人との仲を認めてもらえなかったのが原因見たいね。学校にはちゃんと行ってて、今は恋人の家に転がり込んでるみたい」
「認めてもらえないって、なんでまた」
探偵さんが聞くと、ケイさんは言いにくそうに頬をかいた。
「あー……。簡単に言っちゃうと、私たちの同類みたいなのよね、彼女。恋人も女で、頭の硬い両親と衝突したみたい」
もしも私が探偵さんを恋人として父様や母様に紹介したらどうなるだろうか。卒倒するか、やはり喧嘩になるかもしれない。
なにが問題なのかもよくわかるのだが、想ってもいない、私を理解しない人と一生を遂げるなど、ごめんだ。
「お相手の情報はないわ。性別以外、年齢も住所もわからないのよ」
「……そこまで調べているのなら、後は警察にでも任せた方がいいんじゃありませんか。安全に、早く解決してくれるでしょうし」
「大事にしたくないのよ、たぶん。娘は大切だけど世間体も大切、内々に処理できれば万々歳って考えなんじゃないかしら」
「なんとも、面倒そうな……」
探偵さんはこめかみに手を当てて、眉をしかめる。
「説得って言っても、別れさせろってんじゃないわ。とりあえずは家に帰ってほしいってことみたい。この依頼、受けてくれるかしら」
「気は進まないな、正直なところ」
「とか言いつつも、結局なんとかしてくれるところ、好きよ」
「……ケイのそういうところ、あたしは嫌いだね」
コーヒーを一口すすり、ため息をつく。
「写真とか、ないの」
「あるわよ、家族写真が一枚。……ああ、この子」
指差した先には、髪を短く切りそろえて、メガネをかけた少女がいた。中性的な顔立ちで、男装などされたら、男女どちらかの判別はつかないかもしれない。
驚いたことに、私はその少女を知っていた。
所属している部活、演劇部の後輩で、男装の麗人という言葉が似合うことから、皆からはレイと呼ばれていたのをよく覚えている。
高等部に上がってからの接点は少ないが、明日にでも彼女に会ってみようと私は決めた。
……探偵さんには内緒のままで。