知らない彼女
「職業は警察官で、管轄は少年課。ーーいや、ホントよ、なぜだかみんな疑ってくるけど。まあ、ケイとでも呼んで頂戴な」
私がある程度落ち着いてきたころに女性ーーケイさんは自己紹介をした。
顔がまだ熱い、探偵さんの近くにいる限り収まらないのかもしれない。そのせいでケイさんの本名を聞き逃してしまったが、何と呼べばいいのかはわかったし、あまり気にしないことにした。
「助手ちゃんが気になるのは探偵ちゃんとの関係かしらね。幼馴染よ、そして元恋人」
さらりと告げられた、私にとっては重大な事実。それに紅茶をのどにつまらせて、むせる。
「あたしの人生で一番の過ちだな、それは。気の迷いとしか言いようがない」
「あらひどい。まだ七年前の話じゃない」
探偵さんがまだ私と同じ年くらいの時だろうか。
「制服の探偵さんって、なんだか想像出来ないかも……」
私が知っているのは、ボサボサの髪をほったらかして文章を書いたり、コートをきて町を歩く彼女だけなのだ。
「かわいかったわよ、あのころの探偵ちゃん。一度決めたら曲げないような頑固さとかは昔からだけど。文芸部の夢見る少女って感じで、私の前もーー」
「ーーケイ!」
突然、探偵さんが大きな声を上げる。
「その話はするな」
「……はいはい。でも、いい加減区切りつけなさいよ。昔のことばっか引きずってちゃ、今をなくすわ」
私としては昔話をもっと聞いてみたいが、彼女の苦虫を噛み潰したような表情を見てしまってはそんなことを言えるはずもない。
「……本題があるだろう、それとは別に。そっちを話せ」
自分自身をもどこか遠くへやってしまうような、突き放した言い方。私の知らない探偵さんがそこにいた。