Aランクギルドの仕掛けた罠、二人目の魔術師
「正しいかどうかはたたかってきめようか?」赤髪の少年が言った。
「そうだな」魔人ザナークが淡々と答える。
当たり前のように殺しあう彼らに驚愕し、あたしはこれまでの会話に入っていけないなと思っていると、あの女神ルディアがやっていたようなテレパシーが頭の中に入り込んできた。
「おい女、少し距離をとっていろ、お前が狙われると面倒だ。」誰かと思えばザナークのようだ。
「うんわかったけどさ、あんたもテレパシーみたいなの使えるんだ!」
「あんたも?ほかに使える奴にあったことがあるのか?」怪訝そうにザナークがあたしに尋ねた。
「うんあるよ、女神ルディアっていうやつ」女神ルディアの名前を聞いた瞬間ザナークは少し嫌な顔をした。
「そうかおまえ、、、まあいい。
わかったな?」
そういわれた瞬間テレパシーのような能力が切れた、私はそそくさと赤髪の少年たちの脇を通り、距離をとった。
「あの少女はどうするんだ、ライオ」どうやらあの赤髪の少年の名前はライオというらしい。
「邪魔しないんだったらどうでもいいんじゃない、君はリズの魔力がたまるまでそこで護衛をしていてね。」
「ああわかった」あの甲冑男図体はライオより大きいが、基本はライオの指示に従うらしい。まあ先ほどのザナークに圧倒されたということなのかもしれない。
あたしは30mくらい離れた村長の家より小さな民家のそばで見守ることにした。
先ほどの物音におびえているのかあの女の村人以外は家から出てくる気配がない。
あの村人もこのどさくさに紛れてどこかに行ってしまったようだ。
ライオとザナークの戦いは静かに始まった。
ゆったりとライオのほうからザナークへ歩んでいく。
その距離が一足一刀の間合いに入った瞬間ライオが高速で踏み込み腰につけている長さ1mほどの片手剣を縦に振り下ろす。右足から踏み込んできたライオに対し体左にスウェイ、飛んでいる桜の花びらが簡単にはつかめないようにライオの超高速の一撃もザナークには当たらない。
続いてザナークが右手に持っている強化された棒で軽くライオに横薙ぎを放つ。それをライオはイナバウアーのような体勢になりながら、かわしそのままバク宙その勢いで剣を振り上げる。それをまた最小限の動きでかわす。
「はやいなおまえ」ザナークは教師が生徒をほめるように言う。
「ほめてもらえてうれしいな、君僕の動きみえているね、いや今の動きが見えているというよりかは、少し先が見えているみたいだ。」
ザナークは実際に未来が見えているわけではない。だが千年以上を戦いに費やしてきた彼からしてみれば
ライオ程度の剣士何人も見てきたその経験を参照しほぼ未来視のような動きを可能にしていた。
このとき、ライオはザナークとの実力の差を正確ではないものの果てしないということを理解していた。
そのため、ライオはザナークに自身でダメージを与えようとするのではなくリズの極絶魔法をためるまでの時間をどう稼ごうかということ。そして魔鏡反響をどう当てようかということに集中していた。
魔鏡反響とは高等魔術の一種で自身以外の対象の魔術的行動に対して反応する高速反撃魔術のことだ。
これは事前に魔鏡反響を仕掛けておかなければ発動させることはできない。性質として、対象の魔術的行動を絞れば絞るほど、魔鏡反響の威力は増大する。
ライオには魔鏡反響を使用することができない。だが特級魔術師であるリズは別だ。
リズは炎系統の魔法使いだ。よって今貯めている魔術も炎系統の魔術である。魔術はためれば貯めるほど系統の隠匿が難しくなる。
ライオとリズはこれまでの経験と相手が上級魔人であるということから、ザナークには炎系統の魔術をためているといることがばれていると推測していた。よって炎系統魔術を成立させないために水魔法系統の魔術障害を発動すると踏んでいた。
それに対する魔鏡反響をリズは構築していた。
これは魔術的行動としてはかなり絞った条件といえる魔鏡反響の威力はリズの通常魔法の数十倍の威力にまで登る。
よってあえてライオもリズもバウアーも水魔法系統の障害を誘っていた。
「少しお話しないかい?」ライオが言った。
「ふん、時間稼ぎか、、まあいいだろう乗ってやる」
「僕たちのギルドの魔法使いが最近魔族に殺されちゃってさ、だからリズは穴埋めでね。聖魔法協会から来た特級魔術師というやつなんだ」
「ほう、確かにかなり優秀な魔法使いというのは、あやつの魔法陣の魔力回路から見てわかる」
「僕は君を殺せないと思うけど、彼女だったら魔力をしっかりためれば一撃で君を葬ると思うよ。聖魔法協会の特級魔術師はそのくらい規格外な存在だ。」
「そのための時間稼ぎということか、ではお望み通り邪魔をしてやろう。
水魔法 水蚯蚓」村長の家の周りに霧が立ちこみ始めた。
ここでライオは内心ガッツポーズをしていた。計画通り。
リズが言った。「魔鏡反響 発動」ガラスが割れたような音が周りに響いた。
「やはりな、それが狙いか」ザナークは戦っている最中違和感を感じていた。こいつらが人間にしては、かなり優秀な集団であるということは戦っている最中から理解していた。
にもかかわらず魔力をためている魔術師が魔術的結界を一切発動していなかった。
これは、魔術師からしてみれば邪魔をしてくださいと言っているようなものだ。
よってザナークは、自身が水魔法を使ったときの魔鏡反響の発動を狙っているのではないかということを予見していた。
ザナークがこれに対して用意した回答は、水魔法に対する炎系統の魔鏡反響に対する水系統の魔鏡反響を用意することだった。通常魔鏡反響は戦いが起こる前に長い時間をかけて、高位の魔法使いが保険として用意するものだ。
だがザナークは、戦いの最中に神業的魔術技術でこれを数秒で可能にしていた。
魔鏡反響に対する魔鏡反響これは通常魔法の数百倍の威力に相当する。
「魔鏡反響 発動」今度はザナークの後ろからガラスが割れるような音がした。
「なんだと、、とでもいうと思ったかい。」ライオがニヒルな笑顔で言った。
「魔境反響 発動」
回想
俺は体がでかいだけの男だった。別に力が強いわけではないし足が速いわけでもない。
昔からでくの坊と村ではいじめられていた。
俺は運動はできなかったが勉強だけはできた。魔法の勉強をずっとしていた。
そんな俺を助けてくれたのがライオだった。
「バウアーはさ魔法使いになれよそんなに魔術に対して真摯に鍛錬を続けられるなんて才能以上に才能だって俺は思うぜ。」
そんな言葉が俺をここまで押し上げてくれた。
俺はこのギルドの剣士でもなければ戦士でもないただ図体がでかいだけの特級魔術師だ。
俺の鎧は魔力の一切を断ち切る、これは俺自身を守るための鎧ではないリズのことを守るための鎧でもない。
俺の魔力を隠すための鎧だ。
ライオは信頼していた特級魔術師リズのことも特級魔術師バウアーのことも、うちのチームの特級は一人ではない。
「魔境反響 発動」 バウアーが言った。バウアーの後ろの空間がガラスのようにパリンと割れた。




