なでなで少女と魔王軍四天王対Aランクギルド
五体満足のザナークの姿がそこにあった。
「でこれからどうするの」あたしが言った。
「その前に来てしまったようだ」ザナークが少し微笑みながら言った。
「えなにが、もしかしてさっき言っていた魔王軍が来たの?
でも大丈夫っしょ!あんたみたいな肩書の長い偉そうな幹部ですらあたしに負けちゃったくらいなんだからさ」
「違う人間だ、それもかなりの魔力を持っている奴もいるな。私を倒しにやってきたのだろうな」首をゆっくり横に振りながらザナークが言った。
「じゃあなおさら大丈夫じゃん!事情を説明してザナークは私がぼこしたって言えばいいだけでしょ。」能天気に私が言った。
「ふん、信じるわけがなかろう、大方お前を隠れ蓑にしているだけだと思われるだけだろう。魔族をかくまうのは重罪だ。おまえ殺されるぞ。」
「そういうもんか、でもこの世界での私は結構強いんじゃないの。相手がか弱い女の子だって舐めてかかってきたら、逆にボコってやるぜ。
余裕っしょ知らんけど。シュッシュッ」シャドーボクシングをしながら私は答えた。
「そう簡単な話ではない、お前の持つ魔力は前も言ったが陽属性だ。魔人や魔族などの生物には通常の魔法よりも有効に働くが、人間相手には効果が薄い。
相手が手練れとなれば、魔術結界を使えるものがいる可能性が高いお前ほどの出力とは言えど厳しいだろうな。」
「ええーよくわからんけど、もしやあたし戦ったら負けちゃう?」私は焦ってつい早口で言ってしまう。
「ああ、まけちゃうだろうな」笑顔でザナークが言った。
「じゃあどうするんじゃ?」
「ふん、仕方ない、私が戦っ」
「ありがとうございますです!ザナーク先生さすが!よあっぱれ!」ザナークが言いきる前に私が言った。ザナークは少し不機嫌な顔をした。
ちょうど話し終わったその時、ザナークが切り刻んだ壁が吹っ飛ばされた。
そこには2mはある甲冑に身を包んだ大男と、ハロウィンの魔女のような恰好をした金髪の女性、村長と同じように少し貧しそうな生地の服を着た女性。そして少しラフな黄色い服を着た青い瞳で赤髪の少年。私はこの時思ったことを正直に言おう、赤髪の少年めちゃくちゃなイケメンだ。私好みといってもいい。
甲冑を着た男が最初に口を開いた。
「おいおいこりゃどういう冗談だ、村長が魔族に襲われているっていう話じゃねえのか、あのガキは何だ仲良く魔族さんとおしゃべりしてるみたいだぜ」とても高圧的だ。
「ええそのはずです。村長のところにあの黒い大きな生き物が入っていてしばらくして壁が切り刻まれるのを見ましたから。」村人らしき女性がしゃべった。
「ふうんあそこに倒れているのってさ、村長かな。右腕がないな。出血多量で気を失っているのかな、それとも、死んでるのかな」かなりのカオスな状況のはずなのに、優しい口調で赤髪のイケメンが言った。
「まあいいお嬢ちゃんそこをどいてな、そいつはすげえ危なくって悪い魔族だ、あぶねえから離れてな。」
甲冑の男があたしのことを、子ども扱いをしながら言った。
ハロウィンのような恰好をした女性が口を開いた。
「妙ですあの女の子とあの魔人から同じ魔力反応があります。それに彼女ただの少女ではない。
通常では考えられない魔力量があります。」
そういった瞬間に甲冑の男が硬い表情になった。
「つまりあの魔族と何らかの魔術的契約をしている、可能性があるということか面倒だな。」
「ええ魔族を殺した瞬間に彼女も死んでしまう可能性があります。」ハロウィン女が言った。
「ああ上への報告がめんどくさそうだな。
民衆っつうのは、一般人の一人や二人やっちまったくらいで、すぐに騒ぎ出すからな。
俺たちは犠牲を出すことで何人もの人間を救っているというのに、」悲しそうな演技をしながら甲冑の大男が言った。
「まあいいよ、そこらへんは僕がうまくやっておく、事故というのは起きてしまうものだからね」赤髪の少年が冷淡に言った。
「御託はいいどのくらいやれるか見てやろう?かかってこい。」ザナークが自信満々に言った。
「へえ女の子が人質として使えないということが分かっても、動じないんだね、
演技かな?それとも、僕たちがその子に情をかけて命までは奪わないと思っているのかな?」少年が淡々と国語の教科書を朗読するように言った。
ザナークが壊れた壁から棒状の破片をもちあげた。
「これで相手をしてやろう」
「強化」そういった瞬間、棒が青い光で包まれた。
「人間をなめるのもいい加減にしろよ!所詮てめえらは、知能持っただけの化け物にすぎねえんだよ、ダボが」甲冑の大男が背中にかけていた大剣をザナークめがけて助走をつけて振り下ろす、
「なるほどそこそこの鍛錬を積んでいるようだな、低級の魔獣程度なら簡単にたおせてしまうだろうな。」
その豪邸の柱のように太い大剣を50cm程度の棒きれで簡単に受け止めてしまった。
「そんな、A級魔獣すらも一刀両断できるこの大剣をその程度の棒きれに魔力を乗せただけで、」
甲冑の男が悲痛な表情をしている。
「ふーん、バウアーの一撃をそんな棒きれで簡単に止めてしまうのか、君強いね」少年が感心したように言う。
「バウアー、君はリズの護衛にあたってくれ、僕がお相手をするよ」まったく動揺せずに少年は指示を出した。
「リズは極絶魔法の準備をしていてくれ」
「お前は私を楽しませてくれのか」棒状の破片で遊びながらザナークが笑顔で答えた。
「どうかなでも、僕は強い人は好きだよ強い人と戦うのは楽しいからね」ここに来て初めての笑顔で少年が答えた。
「私は魔族だ人ではないぞ?」
「うーん僕は人かどうかとかはどうでもいいかな?まあでもこの世で一番強く賢い生き物が人ってことでいいんじゃない」首をかしげている。
「それは違うな、私は魔族であることに誇りを持っている。この世で一番強いのは魔族だ。
おまえも人であることに誇りを持つべきだ」
「まじめだね、そういうのめんどくさいかも(笑)どっちか正しいかは戦って決めようか?」少年が冷笑しながら答える。
「そうだな」淡々と答える。
大剣を棒きれで受け止めたのが衝撃的過ぎて、私はこれまでの会話に一歩も踏み入れられなかった。




