なでなで転生
見下ろすとマインクラフトの平原のような光景が広がっていた。
茫然自失としていると、脳にあの女神ルディアのやかましい声が聞こえてきた。
「どうでしょうやれるもんなら、やってみろとのことですのでやってみました!」底抜けな明るい声で言った。
「やってみましたじゃないよ!どういうこと、あたしの部屋に戻してよ!」私が言った。
「戻してよと言われましても、あなたもやれるもんなやれと言っていたじゃないですか!」女神が言った。
「そりゃあ言ったけどさ、でも本当にどこかわからない場所に飛ばされるとは思わないじゃん。」
私が言った。
「安心なさいここには!あなたを親の仇のようにたたき続けるインターネットの住民も、呪物のようにさげすんだ目を向ける隣人も、あなたのことをもう人生が終わった人として見てくる学校の友人もいません。」
女神が言った。
「それに、大きなおまけもしておきました。」女神が悪さをする子供のように言った。
「おまけって何?」私が言った。なんだか嫌な予感がする。
「汝の扉よ開け!」女神が言った。
すると私の目の前にゲームのステータス画面のような青い光が出てきた。
Level 1
職業 なでな寺の僧侶
力 18
防御 71
魔力 123
魔法耐性 159
素早さ 11
運 59
スキル 炎上王女 なでなで破戒僧
「なにこれ」あたしが言った。
「あなたのステータス画面です!この世界でのあなたの履歴書だと思ってくだされば大丈夫です!」
女神がいった。
「履歴書に炎上王女って書いてあるのだけれど、こんな僧侶どんな寺でも、一次面接で絶対落とされる
よ!ていうか、なでなで破戒僧ってなんだよ?」私が言った。
「まあそれは使ってみてのお楽しみということで!次からはこの画面を開こうとあなたが念じるだけでこの画面が出てきますのでご自由に!これからの異世界ライフ楽しんでくださいね!」女神を一方的にそう言うと、プツンという音ともにテレパシーを解除した。
あたしはいきなり異世界に飛ばされてしまったようだ、だが心なしか部屋のベッドの中で炎上におびえながら毛布にくるまるよりか、気持ちは少し軽かった。
異世界ライフと言われても、平原が広がるばかりでどこへ行ったらいいか、皆目見当もつかない。
そこで、360°ぐるりと一周見渡してみると、平原の中にものすごく大きな木が北側にあることに気付いた。
とりあえずそこに行ってみることにした。
距離に関しては憶測でしかないが、約1kmといったところだろうか、30分くらい歩くとその大きな木の前にたどり着いた。
おそらく全長100mくらいはありそうだ、私がいた世界で一番大きな木が全長100mくらいだというのを社会の資料集で見たことがある。
その木をぐるりと一周してみることにした。
そうすると、あたしが来た方向からみて、木の裏側の根元に北欧風の民家が数件ある小さな集落があることに気が付いた。
一番大きな家に恐る恐る近づいてみる、何か大きな物音がした。私はこの時嫌な予感がしたのでその家についている小さな窓から様子をのぞいてみた。
そうすると、部屋の中でこの世界の人間らしき、年は大体60代くらいにみえる生物が、黒色の人型をした異形に襲われているところだった。
「勘弁してくれ、もうあなたたちに作物を渡すことはできないよ私たちが飢え死にしてしまう。」
老人のような生物が言った。
「ほう?そうか、ならば死んでもらうかと言いたいところだが別に作物でなくともよい、私たち魔族はなこの意味聡明な村長様にならば理解できるだろう、、」魔族と名乗った生物が言った。
「人間の生贄をささげるということですかな、ならば私を」老人が言った。
「ふん、生贄におまえ自身をささげるか、
とても覚悟のある、とても勇気ある、とても寛容ないい心がけだな!
だが、、」魔族が右手上げるゆったりと振り上げた、その瞬間村長と呼ばれた老人の右腕切断された。
アニメや漫画のシーンのようで現実味がなく口をぽかんと開けてしまった。
なぜかその時クラスでいじめられていた小学生の頃の同級生を見捨ててしまった時のことを思い出した。
彼の名前は何だっただろうか?そんな関係のないことを思い出すことで、反射的に、目の前の現実から目を背けようとしていた。
あまりにきれいに切断されたからかは、わからないが右腕がコトンと落ちてから、数秒たってから血が吹き出てきた。
「ぐうああ」老人が声を抑えたような、悲痛な叫び声をあげる
「人間にとってはそれは美徳なのかもしれんだが、それは結果的に状況を悪化させているよローウェン
お前がいなくなったらこの村の士気はだれがとる、魔物との仲介役はどうする?どうやって聖騎士団や魔法協会、天海衆に我々の存在を偽るのだ!
お前にだってわかるだろう自分が死ぬことはこの村にとって、自殺行為だと!」魔物が政治家の演説のようにはきはき老人を諭すように言った。
「まあいい、
ところで、そこの窓からこちらを見ている人間わたしになにかようか?」あまりに残酷な笑顔であたしに問いかけてきた。
非現実的な光景とニヒルな笑顔で頭が真っ白になった。
「お前強いな!かなりの魔力を所持しているにもかかわらず、魔術残滓隠匿系魔法をつかっていない、最初から私に自信の存在を誇示しているようだ。」魔族が言った。
心臓が張り裂けそうだっただが、炎上しているときにあたしを攻撃してきた人々の冷たい視線を思い出すことで、なんとか胸のどきどきを落ち着かせた。
私は敵意がないこと示すため窓の裏手側にある木製のドアから、ゆっくりと部屋に入っていった。
「あの、私は別にあなたの敵というわけではありません!
というか、無害でめちゃくちゃか弱いただの一般z世代です。」私は精一杯ハンドジェスチャーを加えながら生まれたての赤子が必死に親にすがるかのように説明した。
「そうか、ではここで殺すというのが一番効率的だな!とても理知的で、とても知性的で、とても至極全う!」その瞬間魔族は、先ほどの右手を振り上げる動作を人体を切り裂くように斜めにとても早く行った。
あたしが着ているパジャマ切り裂かれ、血が噴き出た。
だがまだ死んでいない。どういうわけかはわからないが、さっきほどの老人より傷が浅い。転んで擦りむいたくらいの傷だ。
なぜだろう?
「ほう!今のを魔術結界なしで耐えるのか、すさまじい魔法耐性だな。
とても本気だったんだがな!]
その瞬間、魔族が後ろに軽く飛び両手を掲げた。どうやら戦闘態勢に入ったようだ。
ごとんと、後ろから大きな音が鳴った。
後ろを見てみると家のドア側の壁が一刀両断されていた。
これがあたしだったらと思うと背筋がぞわっとした。




