特級魔術師バウアーの魔鏡反響「天地鳴動」発動 天海衆第三師団団長 マルルとの決着 マルルの寂しい過去
「魔術封殺呪文「最終の刻」 発動 対象 全域」マルルが詠唱した。
その瞬間、隣の山からこの丘まで歩いてきた全裸の特級魔術師バウアーが笑顔のマルルの後ろから現れた。
「残念だったな、俺もついに完成しちまった。」まるで恋人の別れを惜しむようにバウアーが言った。
「対象 魔術封殺呪文「最終の刻」 魔鏡反響「天地鳴動」 発動」
バウアーが悲しそうな顔で言った。
その時天からまばゆい、光が降り注いだ。まるで最初からそこにあったかのように、白い大理石のような素材でできた巨大な18段の階段がそこに現れた。自然とマルルはなぜか何も言わずその階段を上っていく。18段目を上り終えた瞬間マルルは死んだように気絶した。
「何が起きたの?」あたしがバウアーに聞いた。
「天国に行ってもらったんだ」バウアーは笑顔でガッツポーズをしながら、答えた。
「どういう意味?」あたしは単調に聞いた。
「魔鏡反響を使うために奴の魔術回路を、解析していたんだ。一応魔鏡反響を使うことだけならば可能なところまではいったんだ。
だが解析していくうちに最終の刻に対して魔鏡反響をしても、元魔王軍四天王マルルを一撃で殺せるだけの威力の攻撃魔法を繰り出せないという結論に至った。
だから、この魔鏡反響で繰り出す魔術は奴を殺しきる魔術ではなく。奴を戦闘不能にできる魔術を繰り出そうと俺は思った。
マルルを戦闘不能にできる魔術は何か?俺は考えたんだ。
その時ふっと俺の頭に降りてきたのは催眠魔術だった。」
「植物って寝るの?」あたしが生徒のように聞いた。
「ああ植物も寝るぞ。休眠活動という人間の睡眠に似た行動をとる。
だがただの催眠魔法では上級魔族特有の魔法耐性によって防がれてしまう。ならばどうするか簡単だ。睡眠魔術の出力を限界まで上げた、俺のオリジナルの魔術を開発すればいい。
それでできたのが魔鏡反響「天地鳴動」だ。ふつうの人間が食らえば1000年は目覚めないほどの出力の超ド級の催眠魔法だ。」笑顔でバウアーは答えた。
「なるほど」あたしは難しいことはわからなかったけれどこの状況を見て納得した。
「それに、殺しちまったらお前のダチに関しての情報を聞き出せねえだろ」優しい声でバウアーが言った。
「そんなこと考えていてくれたの?」あたしは驚きながら聞いた。
「俺は意外と優しいんだぜ、ただ全裸なだけでな。」少し照れ臭そうにバウアーは言った。
「ありがとうございます、、」少しあたしも照れ臭くなって俯きながら言った。
「それでこれからこいつを、どうするのだ」会話が終わったのを見計らってザナークが聞いた。
「それに関してなんだけど一つザナークに頼みがあるの」あたしが珍しくかしこまって聞いた。
「なんだ?」ザナークが少しいやそうな顔をしながら聞き返した。
何だ?私は何かに体を縛られているのか?動けない。目隠しの下から覗いてみると私の手足と胴が封印系魔術の魔法陣によって、この山に自生する曼荼羅杉の木に縛り付けられていた。おそらくザナーク様の仕業だろう。どうなったんだっけ?
私はザナーク様の魔術に殺されかけて、それへの対抗として魔術封殺呪文「最終の刻」を発動した。
すると何者かが私の最終の刻に対して高速反撃魔術を放った。
頭がぼんやりするもしかして眠らされたのか?そのようなことを考えていると声をかけられた。
「起きたの?」この声は女神の、器か。
「はい。」
「そう、、」目の前の彼女が答えた。
「あの~なんで、あなたたちは私を殺さなかったんです?」私は、単純に思っていたことを聞いた。
「直接落ち着いた状態で聞きたかったんだ、本当に蔵子のことをあんたが殺したのかどうか。」目の前の少女は曇りのない目で聞いた。
「はい私が殺しました。彼女が女神の器になることを拒否したので、連れ去ろうとしたのですがその際戦闘になり、その戦闘で殺害しました。」私は嘘偽りも会話の中のよどみもなく淡々と答えた。
「そう。」目の前の少女は蛇足な言葉を嫌うように言った。
そういうと彼女はその場から立ち去った。
彼女が見えないところまで行ったかと思うと、次に魔力遮断甲冑を着たザナーク様が来た。
「ザナーク様、私が死ぬ前に恨み言の一つでもいいに来たんですか?」私はいつも通り冗談を言うように言った。
「そうだな、恨み言を言う前に一つ聞きたいことがある。」ザナーク様はまるで初舞台の演技のように棒読みで聞いてきた。
「なんです?」
「なぜ、私が母なる聖炎を放った際、リズさんの逆方向に逃げた?」
また棒読みで聞いてきた。私はザナーク様があの人以外に敬称をつけることなんてあるのかと少し驚いた。この質問はザナーク様らしくないなと思った。まあいい。
「あの魔法使いも魔術に巻き込めるのにどうしてそうしなかったということでしょうか?」私は聞いた。
「そうだ」そっけない応答が返ってきた。
「ザナーク様は水月草って知っていますか?あの魔法使いの近くに生えていた水色の草です。」」私はあの時を思い出すように言った。
「知らん」きっぱりと短く言った。
「そうですか、絶滅の危機に瀕している品種でここ以外に自生していたところは、妖精王国ヴェルディ以外にないんです。そのヴェルディは私の故郷で、600年ほど前に魔族によって滅ぼされました。私はその時誘拐された精霊を触媒に魔族の血と強力な植物の遺伝子を流しこまれ生まれた。いわゆる人工生物、まあキメラみたいなものなのです。
なぜか今でも、その時の記憶は今でも少しだけ残っていて。それでかな、一凛だけ彼女の近くでポツンと咲いているあの花が私に少し似ているなと思ったんです。ほんとに馬鹿ですね。」自嘲の笑みを浮かべながら私が言った。
「ほんとに馬鹿だよ、あんた」急にザナーク様が震えだした。
「ザナーク様?」私が言った。
「なんでその優しさを少しでも少しでいいから蔵子に分けてやれなかったんだよ。馬鹿野郎!」そういってザナーク様は兜を外した。そこにいたのはただただ友人の死への悲しみと目の前への不平等な理不尽に打ちひしがれ泣いている器の少女だった
「なんだあなただったんですか?」じゃあさっき最初に私に話しかけた器の少女はザナーク様の変身魔法か、今しゃべっている器の彼女は大方ザナーク様に変声魔術でもかけてもらったのだろう。私は納得した。道理で不自然なわけだ。400年も一緒に魔王軍で戦っていたのに、案外魔力が分からなければ気づかないものなのだと少し寂しい気持ちになってしまった。




