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特級魔術師リズ対マルル決着 絶体絶命の危機に現れた、魔王軍四天王ザナークの復活

「まさか、これほどとは恐れいりましてててて」リズの右手が貫通した状態で中途半端に口の下半分だけ再生したマルルは文字通り口足らずになりながら言った。

「さっきのあなたよりとても可愛くなりましたね」リズは皮肉を込めたニヒルな笑みで言った。

貫通させた右手を、リズは高速で抜きマルルの腹部に向かって掌打を放つ。とてつもない雷が鳴ったような轟音が鳴り響く。

貫通させることはできなかったがすごい勢いでマルルが飛んでいく、そのままの勢いで向かいの丘にまで到達しマルルが凍らせた氷と一緒に周辺の木々が吹き飛び「ドン」という爆発音のような音が山々に鳴り響く。


この戦いを見ていたバウアーはマルルの「魔術封殺呪文 最終の刻」の解析を進めていた。

特級魔術師バウアーが最終の刻の魔術回路を見て感じたことは、魔術に使われているスペルが生き物のようだということだった。いや生物の心臓のように魔術回路がずっと動いていることが、バウアーに生き物のようだと感じさせた。

バウアーにとって魔法とは、数学や文学などと同じ学問であった。これまでバウアーは魔法を学ぶにおいて賢明な魔人よりも獰猛な魔獣よりも、机や書物と向かい合ってきた。魔法における魔術回路だって書物に書かれている文字と一緒でふつうは動かない。

いや厳密には、魔術回路に書かれているスペルが動いてしまっては、その魔法を正常に作動させることができない。

これまで人生の大半を魔法に費やしてきた特級魔術師バウアーからみたら、マルルが殺されても何回でも生き返ることよりも、魔術回路が有効属性をくらっても魔術停滞(スタン)しなかったことよりも、魔術回路に書かれているスペルが生き物のように動くことが恐ろしいと感じた。

学問として扱う魔術に関しても扱いはとても難しいのにそれを生き物を飼いならすように使う技術というのはバウアーにとってみれば、もはやそれを魔法と呼んでいいのかもわからなかった。

「これを解析しろっていうのかよ、魔人のおっさんは。こりゃ大仕事だな」バウアーはつい心の声を漏らしてしまった。


リズとマルルはリズの掌打によって、向かいの丘に飛ばされてから2分ほど向かいの丘での氷の斜面での格闘戦を続けていた。

「少しずつですがあなたの動きが分かってきました。それに物理攻撃逓減魔法「業 インカ」が効いてきたのか動きが鈍くなってきてますね。もっと私にあなたの美しい魔術を見せてほしかったのにとても残念です。」マルルは本当に残念そうな顔で言った。それは本心なのだろうとリズも思う。だからこそリズの気持ちを苛立たせた。

「うるさいですね。草むしり中に話しかけないでもらってもいいですか」リズは冷たい声で淡々と言った。

リズは内心かなり厳しい戦いだなと思い始めていた。「魔術武装開放 魔甲武者紫電」の効果ももう切れ始めている。

どんなに打たれようとガードをあげずよけるような動作もないマルルに対し、リズはこれだけ打っても効かないのかと内心かなり応えていた。それでもめげずにマルルの右半身に向かってフックを放った。

だが、そのフックがマルルにたどり着くことはなかった。

それより早くマルルの拳が魔甲武者紫電の兜のような装甲をとらえていた。

「ジッン」そんな静電気が起きるような音が凍り付いた山々に響いた。リズにそのまま当たったわけではないが、装甲越しに響く衝撃がリズの脳を揺らした、ついにこの瞬間、マルルの強化魔法と物理攻撃逓減魔法「業 インカ」による、魔術効果がリズの魔術とたゆまぬ鍛錬により作り出された肉体の力を上回った。

そのまま体制を崩されたリズはマルルの猛攻を受ける、さっきまでの無抵抗が嘘のようなラッシュ。

右に左に飛んでくる拳はこの戦いにおいて、はじめてマルルが明確な殺意を込めた攻撃だった。

顔面の装甲に二発目をもらう、直接当たったわけではないが衝撃自体は伝わってくる。魔術の同時展開の反動もあって頭がくらくらする。意識が飛びそうになった。だがリズは何とか持ちこたえる。マルルが飛んだのがかろうじて見えたかと思うと、次に今度は後頭部への衝撃どうやら空中で反転しながらの踵落としを食らったらしい。ついにリズはその場に倒れこんでしまった。

倒れこんだリズに追い打ちをかけるようにマルルは

「第一魔層 氷突(アイススピアー) 発動 対象 目の前の人間」槍のような氷魔法を動けないようにリズの足めがけて突き立てる。

「ぐっつああああああ」声にもならないようなリズの悲鳴が山を駆け抜ける。それでもリズはマルルに向かって前進する。この時点でリズの意識はもうろうとしていた。

氷の斜面に這いつくばるリズにマルルが政治家が演説するように語り掛ける。

「やはり人間の限りある命では魔族や私たち何千年という時を生きる、植物には勝てない。あなたのような天才であってもね。枯れるという言葉は植物のためにあるように、見えてその実人間のような、定命の生物に対してあるのではないかと私は思うのです。私たち植物は枯れたとしても、たとえ人間に焼かれたとしてもその地の植物の肥料になり次の私たち植物を支えます。

対して人間はどうですか?争うばかりだ?殺しあうばかりだ?植物を食べる植物は存在しないというのに、人間は食べもしないのに同じ同種である人間を狩り続ける。そんな愚かな生物。

あなたを救う人はだれもいません。あなたの死は無駄死にです。ほかの者の肥料になることもあり得ない。ほかの仲間もすぐにあなたのところへと送ります。死になさい愚かな天才よ」マルルの演説が終わった。

「案外この者は肥料にはなったかもしれんぞ、人間ではなく、この私魔王軍四天王ザナーク様のな」魔王軍四天王ザナークは口角をにやりと上げて不気味な笑顔で言った。

「なに?」マルルは初めて、この戦闘において初めて本音で言葉を出した。


 



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