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なでなで少女

「もうやめなってー!」

これを言ったのはあたしの友人である、倉蔵子だ。

だが、あたしはお寿司をなでるのをやめない。

簡単な話だ、それがおもしろいから、今が楽しければそれでいい。

これだからz世代は、などと読者諸君は思うかもしれないが、そう思われたってかまわない。

これがいわゆる中二病というやつなのだろうか。

今はただただ目の前のお寿司をなでることに集中する。

「いいこと思いついたよ!蔵子!いまから、醤油直のみするわ。

蔵子はそれを動画でとってSNSで上げて!とんでもないバズリかたするかもしれないよ!」

軽い気持ちだった。

だってあたしは未成年だし、だって私はz世代だし。だってわたしは、、、

大丈夫なはずだった。何もかも大丈夫なはずだったのに、、

気づいた時には遅かった。

次の日にはとてつもないバズリ方をしていた、悪いほうに。

いわゆる炎上事件というやつだ。

自分は大丈夫そんなおごりが私の人生を崩壊させた。

私の実家の寺も私の本名も私のありとあらゆるすべてがインターネット上にたった一日で拡散された。

自業自得という言葉は、古代インドから由来したものらしい、カルマという言葉に業という漢字を当てはめて作られた四字熟語そんなことをあたしの高校の国語の先生が言っていた気がする。

その時ふとあたしはインドに行きたいそう思った。

いやインドでなくてもいいどこでもいいただ遠い遠い所へ飛んで行ってしまいたい。そう思った。


炎上事件から数日が立ち

あたしは寝室に入りベッドに横になる。目をつむり何とか意識を断つ。あたしにできることはそれだけだった。

最近は夢を見る。毎日毎日誰かに追いかけられる夢だ。

人は精神的に強い危機感を感じるとこの手の夢を見るらしい。

「なでこさん!なでこさん!」

今回は追いつかれる。

「まったく逃げないでくださいよ」

あたしよりは年上であろう花嫁のような恰好をした、女性だ。

神聖な格好に負けないほどおしとやかで落ち着いた顔つきだ。

サイゼリアの絵画に書いてある女神がそのまま出てきたような感じがする。

美しい女性ではあるが、態度は夢とはいえど馴れ馴れしい。

「うざいよ!もう追いかけてこないでよ!」私は叫んだ。

「まあまあおちついでください!あなたがどういう気持ちかわかります。」女性が言った。

「なにがわかるんだよ!あんたに!」私はまた叫んだ。

「わかりますよ(笑)自業自得ということはわかっているだけれど、過ちをなかったことにしたい!

いいえ犯してしまった過ちに謝罪をしたい。けれどそれを認めたら終わり、それが頭の中でずっと絶えずめぐり続けている!

だからどこかに逃げてしまいたいそんなやわな気持ちなのではないでしょうか?」女性が言った。

数秒の沈黙ののち、

「図星ですか、やはりz世代、

いいえ、回転ずしチェーン店で醤油を直飲みし寿司をなでなでしそれをあろうことかSNSに投稿した、考えなしの女子高生という感じですね。

ですが、その浅はかな願いこの女神ルディアがかなえましょう。」女性が言った。何を言っているんだこの女は

「何言ってんの意味わかんないんだけれど、」私はそのままの気持ちを言葉にした。

あたしは追い詰めれて頭がおかしくなったらしい。

こんな、荒唐無稽な夢まで見るようになってしまった。

「夢から覚めてもつらい現実と向き合わなければならないならば、

いっそ自分とは無関係な世界で罪を贖罪する。すべをあなたに与えましょう。と言っているのです。」

女神と名乗る女性が言った。

「意味わかんない、意味わかんない。お願いだから、もう私を混乱させないで!

もう追い詰めないでよ。」

「追い詰める?あんな愚かな行いをした、人間追い詰められて当然でしょう!

むしろ私はチャンスを与えようというのです。あなたが今から私が言う条件に首を縦に振れば、

この苦しみから解放すること約束しましょう。」女神が言った。

「無理だよあたしを救うなんてこと女神だろうが、魔王だろうがもう終わったんだよあたしの人生は。」私は夢の中だというのに大粒の涙と嗚咽を吐き出しながら言った。

「ちょうどいい!あなたは女神に救ってもらうのでも魔王に救ってもらうのではありません!魔王ぶっ殺すのです。異世界にいってね!」女神が言った。

「ああそうですか!そうですか!魔王をぶっ殺すんですか!じゃあぶっ殺してあげるからあたしをこの苦しみから解放してよ!」

「だからそうすると何回も言っているじゃないですか本当に頭が残念なようだ!

まあ残念じゃなければ寺の娘が寿司をなでたりなどしないか!」煽るように女神が言った。

ほんとうに癪に障る女だ!

「第一なんであたしなの、魔王を倒すのなんて、おとぎ話に出てくるような勇者の役目じゃん!あたしみたいなろくでなしが言っても意味ないと思うのだけれど!」私にしては的を得た質問だったように思える、言っていて悲しくはなるが。

「あなたのような、ろくでなしだからこそ良いのですよ!

勇者になるようなまじめでご立派な人というのはたいてい人生も充実しているものです。

そのような人はほかの世界に行って、この現実から逃げたいなどとは思いません!

あなたのように今追い詰められていて、この世界から逃げ出したいような人間を私が異世界に転生する。

つまり人生をやり直すチャンスを与える。

ついでに魔王を退治してもらう。

これはWin winな話なのですよ。

どうですか納得していただけたでしょうか?」女神が言った。

もう私は会話を続けるうちにどうでもよくなっていた。

「いいよじゃあそれでやれるもんならやってみてよ!」

「かしこまりました!納得していただけたのならよかったです。」女神が言った。

ここで目が覚めたすると目を開けた先は、見慣れた私の部屋ではなかった。

Windowsの初期画面のような真っ青な空。私はまだ夢の中にいるのだと思い、また目を閉じた。

数秒後また目を開ける。

青い空だけがそこに広がっていた。





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