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8.伯父

物置に放置された綾乃。先行き不安で泣きそうになり…

薄暗く寒々しい部屋に残され安全と言われても怖い。そして屋敷の外では私を探す声が聞こえてくる。物音もしない部屋で一人、ずっと意味不明な状況にため息をつく。


「はぁ…」

「綾乃…」


呼ばれた気がして辺りを見回すが誰もいない。空耳かと思いながらも辺りを警戒すると、再度呼ばれ立ち上がり扉に向かい、いつでも逃れる様にすると…


部屋の真ん中に白いモヤが発生し、人影が見えて来た。


「オバケ!」


恐怖でパニックなりドアノブを捻り必死に出ようするが扉は開かない。ふと背後に気配を感じ、恐る恐る見上げると金色の瞳の美丈夫が私を見下ろしていた。

訳がわからず口を開けて固まり見上げていたら、手を取られ先程の椅子に座らされる。そしてその美丈夫は私の前に跪き目線を合わせ


「怖がらないで。綾乃に危害は加えないから」

「あなたは誰?」


その美丈夫は歳の頃は20代後半で、焦茶の長髪に金色の瞳。そして北欧系?の顔立ちをしている。

この顔何処かで見たことがある。ハリウッド俳優か?モデルか?

必死に思い出すが分からない。でも知っているのは間違いない。物忘れする年にはまだ早いはずなんだけど…


「綾乃は芙美に似て警戒心が強い様だね。本来はこの役目は聖母に任せているのだが、私でないと駄目なようだ。やはり血筋かなぁ」

「芙美って…おばあちゃんの事?」


そう聞くと頷く美丈夫。ウチのおばあちゃんと知り合いなの? それより誰?


「その前に貴方は誰なの?それに私に何の用があるの?」


質問すると微笑んだ美丈夫は立ち上がり胸に手を当てお辞儀をして名乗る。


「初めまして…いや正確には2度目だな。この国の守神である猪神の猛だ。綾乃の伯父にあたるから親戚だよ」

「わっ私神様に親戚なんていません。至って普通の家庭で育った平凡な子です!」


いきなり意味不明な事を言いました美丈夫を睨むと、自称猪神は何故か楽しそうに笑う。そして顔を近づけてきた。そして


「私の顔をよく見て。誰かに似ていないか?」

「誰かって…あっもしかして」


思い出した。母方の祖父に似ている。祖父は私が幼稚園の頃に亡くなりあまり覚えていない。確か祖母が毎日お墓を参っていたのを覚えている。母の話では子供が恥ずかしくなるくらいに、2人はラブラブの夫婦だったそうだ。

小学生の頃に祖母に祖父のどこが好きだったのか聞いたら


『甘く綺麗な顔をしているのに、肉食系でね情熱的な人だったわ』


目の前の猪神様はその祖父にいている。という事は祖父は神様?


「綾乃の聡さも芙美に似たんだね。そう綾乃の祖父は私の父であり先代の猪神なんだ」

「…」


思いもつかなかった事に口を開けて固まる。すると猪髪は椅子を持ってきて目の前に座り微笑んで


「だから私の事は”伯父さん”と呼びなさい」

「いや!無理無理!」


手を取られ慌てふためく私を見守る自称伯父。やっと冷静になり話を聞ける様になった。

すると猪神様は私と猪神様の関係を話してくれる。


まず私の祖父が先代の猪神であり、息子である猛様に神事を譲り隠居する事に。そして終の住処を日本に決め、残りの力を使い日本に渡ったのだ。そこで私の祖母である芙美と出会い恋に落ち、家族を作り幸せな余生を過ごし生を終えたのだ。


「神様が人間と結ばれて大丈夫なの?」

「あぁ…そこは問題ないよ」

「私と猪神様の関係は分かりました。では猪神様なぜ私はここに連れてこられたの?先代の猪神の血筋だから?」


そう言うと猪神様は眉を顰めたので、何か余計な事を言ってしまったのかと焦ると


()()()()()!」

『そこを拘るんだ…』「えっと…伯父さん」


伯父さんと呼ばれ機嫌良くなった猪神様(伯父さん)は、私を連れて来た理由を話出す。

ケンジ様の説明どおり聖母様が高齢になり、次の聖母となる乙女を迎えに行った猪神様は私を見つけた。


「条件が整ったあの日。乙女となる女性を探していたら、懐かしい匂いがする女性を見つけ、無意識に姿を現し綾乃の名前に出てしまった」


猪神様の言った乙女の条件とは初潮を迎え、異性と交わった事の乙女。そしてこの世界で年に1度来る《始まりの日》と言われる日が、日本とこの世界が最も近くなり渡り易くなる。その日に猪神様自ら乙女を迎えに行くのだ。そして条件に合う乙女をこの世界に連れ帰る。


「乙女を連れ帰る時、普段は乙女を驚かせない様に姿を消すのだが、父の気配を感じ姿を消すのを忘れ綾乃に近づいた。大きな猪で怖かっただろう」


そう言い謝る猪神様。連れて来られた経緯は分かった。次は…


「えっと…伯父さん」

「なんだ。可愛い姪っ子」


こんな美丈夫の笑顔に免疫がない私は、頬が熱くなるのを感じながら


「皆さんから話は聞きましたが、私は聖母になんかになりたくありません。家に帰して欲しいんです」

「それは無理だ」

「なんで!」


ニコニコしながら私の頭を撫でる猪神様。私が不機嫌になると座り直し


「異界への行き来は力を使い簡単では無い。綾乃をこちらに連れて来たばかりで、私の力は弱く再度綾乃を送る力はない。そうだなぁ…最低でも40年くらい力を蓄えないと無理だ」

「そんなに待ったら私おばあちゃんになっちゃうじゃん!」


そう。結局連れて来られた乙女は聖母になるしかなく、おばぁちゃんになる頃に帰る事は出来る。しかしそんな長い間こちらの世界にいると、大切な人や家族が出来て、帰りたいと願った乙女はいないそうだ。 


「乙女の意思無視って酷くない⁉︎」

「そこは申し訳ないと思っている。しかしこの世界は乙女が必要なのだ」


そんな事言われて『分かりました』なんて言えるか!


お読みいただき、ありがとうございます。

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