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3.競

転移3日目。王都に着き奉仕先が決まるが…

「ここで呼ばれるまで待機しろ」


何も無い部屋に集められた奉仕希望者達。私達だけで無く、他の検問所からの奉仕希望者達もいて、狭い部屋に20名ほどいる。女性は少なく私も含め6人だ。その中でも黒い髪と瞳の女性が目立ち皆の視線を集めている。男性達が聖母候補かもしれないと騒ぐ中、ハンスさんはずっと私に話しかけてくる。

ハンスさんに例の女性の方が有望だと言うと


「あ…あの女性(ひと)作りもの(ニセモノ)だから興味は無いよ」

「はぁ?」


そう言い冷やかな視線をその女性に送るハンスさん。言っている意味が分からず話し続けるハンスさんに圧倒されていると、騎士が来て番号を呼びどこかへ連れて行く。怖くなり身がすくむとハンスさんが私の手を取り


「大丈夫。聖母様は人権を大切にされるお方だから、ひどい事はしない。別の場所で今から奉仕先を決めるんだ」


ハンスさんの説明では別の会場に貴族と豪商が集まり、奉仕者を見定め身請けをする。奉仕者は出来るだけ高位貴族に身請けされた方が給金や待遇もいいので、運命の分かれ道となるのだ。


「綾ちゃんはいいとこに行けるから安心していいよ」

「だといいけど…」

「俺が保証する」


自分も今から奉仕先が決まるのに、妙に落ち着き全て知っているかの様なハンスさん。この人は何者なのだろう?


「男の2番」

「はい」 


ハンスさんは呼ばれ、私に手を振り部屋を出て行った。まだ控室は黒髪の女性を中心に会話が弾み、今から競にかけられる人達とは思えない雰囲気だ。

ハンスさんの後、同じ馬車で来た男性から呼ばれ競は続く。そして次に別の検問所から来た女性が呼ばれ出した。そしてあの黒髪の女性が呼ばれ男性達は名残惜しそうだ。

私は自分の順番が近付き口から心臓が出そうなくらい緊張し、気持ち悪くなって手で口を覆いじっとしていた。そして


「女性7番」

「!」


自分の順番がきた。大きな騎士の後を付いていくと、目の前にボルドー色のカーテンがあり、騎士がカーテンに手をかけ私の背を押した。

押された反動で前につんのめり、眩しい舞台に出てしまう。ライトが眩しく前がよく見えない。顔を上げやっと周りが見えて来たら


“おー!”


大きな歓声が上がり怖くなって後退りすると、舞台にいる燕尾服を着た紳士に腕を掴まれた。そしてその紳士は


「次の奉仕者は10代の女性。黒に近い色をした美人です。受け入れを希望する家門はお札をお上げください」


すると会場にいる男性達が家紋?がついた札を上げる。よく見ると前列に明らかに他の人と違う煌びやかな椅子に座る男性が4人。その4人のうち2人が札を上げている。そして他にも5人が札を上げた。


「おー流石聖母様と同じ色の女性だ。今日二番人気でございます。どこの家に奉仕するかは面談の末に決まります。ご希望の家門は競後にお残り下さい」


こうして意味が分からないまま私の競が終わり、また騎士に連れていかれ個室に入れられた。そこで待機する様に言われ、どのくらい経っただろう。

椅子に座りながらウトウトしていたら誰か来た。一気に目が覚めて立ち上がると、初老の男性が来て目の前に座った。そして


「私は北の守り手ゲンブ公爵家の執事長のヴィンセントと申します。貴女は我が公爵家含め7つの家門が奉仕の受入を希望しております。聖母様の御心通り奉仕者が選ぶ権利がございます。今からご質問等ございましたら、何なりとお聞き下さいませ」

「えっと…不法滞在の私なんかが希望を言っていいんですか?」

「勿論でございます。我が家門は身分関係なく、使用人の扱いは同じで働きやすい環境をお約束致します」

「あ…はい。では質問なのですが、この面談的なのは、後6人受けるんですか?」


そう聞くと少し驚いた顔をしたヴィンセントさんは、少し微笑みながらこの競を説明してくれた。

【競】と言われているが、奉仕者の受入を希望する貴族と豪商が名乗りを上げ、その中から奉仕希望者が奉仕先を決めるシステム。このシステムは十代前の聖母様が決めたそうだ。


『ちゃんと奉仕する側の意思も尊重してくれるなんて凄い』


そう思っているとヴィセントさんは、ゲンブ家を選んで欲しい告げ退室して行った。緊張が解けてダラシなく椅子に座る。


『後6人も来るんだ…』


溜息を吐き天井をぼんやり見ていたら、次の人が来た。慌てて立ち上がり次の人を迎え入れると


「初めましてお嬢さん。私はセイリュウ公爵家執事長のモリヤスでございます」

「よっよろしくお願いします」


次も4公だ。先程のヴィンセントさんの説明でシステムが分かり、モリヤスさんにはどんな仕事をするのか質問し、後は雑談をして面談を終えた。

後の受入れ希望者とも同じ様にお話しを終えた。


“ぐぅ…”


気がつくとお昼を回っていて、お腹が空腹を主張すると、騎士か昼食を持って来てくれた。そして


「食べながらでいい、行く先を決めるんだ。後で聞きにくるから」

「えっ!もう決めるんですか」

「当たり前だ。身分の無い君達をいつまでも保護できない」


そう言い騎士は忙しそうに出て行った。

そう言われて食べながら何処で世話になるか考える。ハンスさんや他の人の話を思い出し、下位貴族や豪商はやめる。理由は給金や仕事の内容では無い。女の奉仕者は禁止されているが妾にされやすいと聞いた。

聖母様は禁止しているが、本人が納得していれば違反でも、王政は目を瞑る事が多い事から狙われやすい。


「だったら4公のゲンブかセイリュウか…」


色々考えるが情報が少なく判断材料がない。

どうしたものかと頭を抱えていたら、騎士が来てしまった。騎士に連れられ部屋を移動していると、騎士が独り言の様に


「あの黒髪の乙女も3公が手を上げていたなぁ…」

「えっ?それはどこですか?」

「あ…確かスザクとビャッコ、セイリュウだったぞ。4公が手を上げる事自体大変珍しく、乙女が次の聖母様だと噂されている」


やっばりあの女性が一番人気の様だ。だったら私はゲンフ家にする。彼女を受け入れを申し出た3公で、被らなかったのはゲンブだ。

私の直感だけど彼女とはそりが合わない気がする。そんな人と3年も無理だ。ストレスで病むに決まっている。


奉仕する貴族を決めると競をしていた舞台場に着いた。舞台に奉仕希望者が並べられ、順番に奉仕先を述べ奉仕先の貴族の元へ向かう。

男性が終わり次に黒髪の女性の番になり、女性はスザク家を選んだ。すると会場からどよめきが起こり、スザク家から歓喜の声が上がる。そしてその女性は私の前を通り過ぎる時に、私を見て鼻で笑った。


『彼女と一緒にならなくて良かった』


と自分の判断に満足していると、自分の番になった。そしてゲンブ家を希望しヴィンセントさんの元へ行く。するとヴィンセントさんはハンカチで涙を拭き喜んでくれた。その喜びぶりに何故か嫌な予感がするのは気のせいだろか…

お読みいただき、ありがとうございます。

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