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11.雨乞い

オベリスクに向かうが道のりは長い…

『まだなの?』


聖母様4公と共に”オベリスク”と言われる神聖な場所に向かっている。城を出て体感的に2時間ほど馬車に揺られているが未だ着かない。長く揺られそろそろ私の三半規管もヤバくなってきた。顔色が良くない私に気付いたケンジさんが、カーテンと窓を開けてくれると新緑の爽やかな風が車内に入って来て酔いが少し楽になる。


「綾乃様見てください。オベリスクが見えて来ましたよ」

「どっどこ?」


窓にかじりつき外を見ると不思議な形をした五角柱が見えて来た。やっと着きホッとしているとマコトさんが微笑みを向ける。恥ずかしくて目を逸らすと馬車が停まった。


「でっかい!」


五角柱の前に来て見上げると首が痛くなるくらいオベリスクは高く、天辺を見ようと反るとよろけてシュウジさんに支えられる。子供の様にはしゃぎ皆さんに温かい視線を向けられ姿勢を正した。

冷静になり辺りを見渡すとオベリスクの横に小屋…と言っても日本の都心の一軒家位ある建物とその横に馬を繋ぐ馬小屋がある。


「何も無いところでしょ。この小屋すら無くて私の代で作らせたのよ」

「ここは何なんですか?」

「ここは祈りをささげる聖地で、ここで雨乞いをするのですよ」

「雨乞い?」


”雨乞い”って聞いた事はあるが実際は見た事は無い。何をするのか少し興味が湧いてくると、隣にマコトさんが来て傘を差した。驚いて空を見上げると晴天で雲一つない。疑問に思っていると由美子さんが杖を従者に預けてオベリスクの前に行き胸の前で手を握り祈り始めた。すると…


”ぽつぽつ…”

『?』


つい数分前まで晴天だったのに雨が降り出したのだ。一人で空と由美子さんを交互に見ていたが、参列した皆さんは静かに頭を下げ神妙な顔をしている。慌てて頭を下げて暫くすると由美子さんが祈りを終えた事を告げた。参列した皆さんは安堵の表情を浮かべ談笑し始める。まだ状況が読めない私に由美子さんが来て


「これが聖母の役目。月に1度雨乞いの祈りをするのよ」

「お祈りならこの国にも教会があって聖職者が居るでしょう?」


そう言うと由美子さんは胸元からネックレスを取り出し見せながら


「これに見覚えは無い?かなり昔のものだからぼろぼろになちゃったけど」

「!」


見せられた物は朱色の小袋。パッと見た感じ神社の御守りに似ているし…よく見ると【日和神社】と書いていある。そうウチの地域の神社で豊穣の神様を祭っている神社の物だった。


「これ…私も持っています」

()()()貴女なのよ」


由美さんはそう言いゆっくりとした足取りで私の手を引き小屋に向かった。小屋には皆さんが着席しお茶を飲んで休憩をしている。私と由美子さんがソファーに座るとローテーブルにお茶と焼き菓子が用意され、由美子さんが嬉しそうに召し上げっている。お茶菓子で糖分チャージすると由美子さんが


「昔からあの地域の子は豊穣祭のお祭りに参加し御守を貰っているわ。そのお祭りに参加する事で豊穣の神様の加護を受けているのよ」


そう言うと由美子さんが微笑んだ。そう私が通っていた小学校では6年生が日和神社の豊穣祭の神輿を担ぎ、参加すると御守と紅白饅頭を貰っていた。どうやら歴代の聖母はあの日和神社にゆかりのある少女が選ばれている様だ。少し話が見えてきたら


「日和神社は豊穣の神様を祭っていて、毎年行われる祭りは雨乞いの祭りなのよ」


そして由美子さんはこの国の事を教えてくれた。豊かな国だけど昔から雨が少なく、水不足に陥って来た。ある時異界から呼び寄せた聖母がオベリスクに祈ると、神がそれに応え雨を降らせと言い継がれている。


「私もこちらに来てから毎月ここで祈ってきたわ。こんなおばあちゃんになっても加護はあって、この国に雨を齎せてきた。きっと加護を受けた貴女も出来るはずよ」

「…」


聖母の役目はこの国に雨を降らす事。その恵みの雨で作物が育ち人々の生活を豊かにしたようだ。その役目を担う条件に当てはまった私がアグニ王国(ここ)に連れて来られた訳だ。事情は分かったし必要とされている事も()()()()

でも理解したがそんな簡単に(心情的に)受け入れれる訳がない。


『よく読むラノベで異世界に転移した主人公が直ぐに(状況を)受け入れ異世界に順応するが、実際に起こるとそんな簡単な話ではない。あれは話の世界から成り立つんだ』


そう思うと大好きだった異世界系の話もさめていく。まだ困惑する私に由美子さんがゆっくり受け入ればいいと言い優しく抱きしめてくれた。

こうして雨乞いの儀式を無事に終え王都に戻る事になった。帰りの馬車では気疲れで出発後すぐに眠ってしまい、目が覚めると知らないベットの上で目が覚めた。部屋に人の気配は無く静かだ。


『丁度いいや。ゆっくり一人で考えたいし…』


この後侍女さんが様子を見に来るまで、ここに来てからの事を思い出していた。まだまだ不安しかない。でも…そろそろ前を向かないといけないと思い、ベットから出て侍女さんに食事をお願いする。


『まずはお腹を満たさないとね』


どんなに悩み落ち込んでも食欲だけは無くならない図太い自分に苦笑いをした。



お読みいただき、ありがとうございます。

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