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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第六章 ルナサフォランにて

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82.えらいもん持ってきたな。

 ポーターさんに分析依頼をお願いして、今日の所はギルド内にある冒険者用ホテルに泊まる事にしました。本当は美味しい食事の出る旅館に泊まりたかったのですが、ここで泊まれば「キリコさんに連絡が着けばすぐに教える」とのポーターさんのご意見に従ったのです。


 でも、アイラは髪留めを指でクルクル回しながら、不貞腐れています。そんなに頬を膨らましていると不細工になりますよ。


「ねえ、師匠…宿代も稼いだし、いっぱい働いたよ?なんで、こんなチンケな所で泊まって、こんなにも美味しくないお弁当を食べなくてはいけないんですか?ねえねえ、温泉に入ってゆっくり浸かってですね、美味しい料理を満喫して明日ここに来ても良かったのではないですか?」


「やれやれ、だって仕方がないじゃない。キリコさんは気難しい方で、待たせるとへそを曲げるって言うんだもの。今日一日の我慢だよ…多分だけど」


 判ってはいるけど、アイラは納得できないでいます。


「そうはいっても、『結果が出るまで上(このホテルの事)で待機をしてくれ、直ぐに結果を知らせたい』とか言われたら、またここでお泊りじゃないですかぁ。ああん、温泉入りたい…美味しい料理たべたぁい…」


 足をバタバタさせて…もう、幼児ですか…あ、そうだ。


 私はナップザックをごそごそとまさぐり、あるものを取り出しました。


「ジャジャーン。ほらアイラ見てごらん」


 私が取り出したものは小さな麻でできた巾着です。そしてそれをゆっくり開くと…


「あ、ほのかなリンゴの香り…ルナカモマイルですね。とてもいい匂いですぅ。ルナカモマイルのハーブティーで誤魔化そうとしていますね。うーん、仕方がないですね。誤魔化されちゃいましょう」


 アニカさんに頂いた、できたてのルナカモマイルのドライハーブです。とってもいい匂いが部屋中に充満しました。アイラの機嫌も少し良くなりました。期待に応えて、私がハーブティーを入れようと準備を始めた時です、タイミングわるく、部屋の呼び鈴が鳴りました。


「おい、ミドリさん、ポーターだ。目的の奴が来たぜ、この下の階の相談室で待たしている。直ぐに来てくれ」


 ドアの外でポールさんの声が聞こえました。アイラは「い゛」の口をして、眉間も皺だらけです。


「仕方ないね。後で入れてあげるから。行きましょうアイラ」


 私は嫌がるアイラの首根っこを掴んで、引っ張っていきました。


 ◇ ◇ ◇


「こちらが分析をしてくれるキリコ君だ。それと、こちらにいるお嬢さんが君の依頼人で冒険者のミドリさんだよ」


 ポーターさんはソファーに腰を掛けている男性を示し、そう言いました。色白で黒髪長髪でやせ型、衣装も黒でだらしなく着こなしています。20歳代中ごろって感じでしょうか、男前だけど、気難しい研究者って感じの人ですね。アイラは緊張気味に私の後ろで隠れています。


「この度は忙しい所をすみません。分析していただきたいものがありまして…」


 私がここまで言うと、キリコさんは掌を私の前に出して、話を遮りました。


「挨拶はほどほどでいい。どんなものを調べて欲しいのかは知らないが、報酬の話をしよう。基本は1,000ピネルだが、それだと面白くないので、俺は調べる物の価値の3割を報酬に貰ったりもしているんだ。どんなものを調べるのか聞いてからではフェアじゃないからな。今回は3割の方で行きたいと思うのだが、どうだ?」


 え?価値の3割って…カビの生えたマフィンに価値なんか有るのかしら?そんな事を言っているとただ働きになっちゃうよ?キリコさん…


「あの…できれば1,000ピネルの方でお願いしたいんですけど…」


 いくら何でも、ただ働きをさせる事なんて出来ないよ。うん。ここで「はい、いいですよ」なんて言ったら詐欺師と同じじゃない。私のプライドにかけてそんな事は言えません。別にお金に困っているわけでもないですし。


 良心的な気持ちでそう言ったのですが、あちゃぁ…キリコさんは気に入らなかったようですね。


「何故だ?価値が1,000ピネルよりもあるって言う事なのだな?」


 私は手を思い切り振って全否定です。どうしてその方向に向かうのかな…


「いえいえ、むしろ逆ですよ。全く価値のないものなので…」


「おい、価値があるか無いかを調べるのは俺の仕事だ。俺は勘が働くのだ。きっと価値のあるものに違いないぜ。3割報酬じゃないとこの依頼は受けない。それでもいいのか?」


 うわぁ…困った人ですね。親切で言ってあげているのに…


「いいじゃないですか師匠。ただで調べてもらえるんですよ?」


 アイラが耳元でそう囁きますが、そんなのダメに決まっているでしょ。


「じゃあ、物を見せますのでそれでどうするか決めて貰っても…」


 私がナップザックから小箱を出そうとすると


「おい、見てから決めるなどするわけがないじゃないか。俺はそんな姑息な手段は使わない。どうしても3割報酬にする。嫌なら他を当たってくれ」


 うわぁ、全く引く気配がありません。知りませんよ…もぅ


「分かりました。私は一度は1,000ピネルでって言いましたよ。3割報酬を選択したのはキリコさんですからね。知りませんよ?本当にいいのですね?」


 キリコさんは勝ち誇ったように頷きました。その笑った顔を、どこまで維持できるか見ものですが…


「ああ、男に二言は無い、交渉成立だ。さあ、依頼品を見せてくれ」


 私はナップザックから取り出した小箱を、キリコさんに手渡しました。


「調べて頂きたいのは、この中に入っている物です」


 キリコさんは興味深そうに小箱を開けると、その表情は一変しました。眉間に皺が寄り、口はへの字です。


「うわぁ…えらいもんを持ってきたなぁ…これ、何の物体だ…」


 だから言ったじゃないですか…大した勘ですこと。これアイラ、笑っちゃだめですよ。あぁ…キリコさん本当に大丈夫?



いつも読んで下さりありがとうございます。

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