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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第六章 ルナサフォランにて

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75.収穫作業

「は、流行り病の事なんかは…よ、よく知らないわ…誰から聞いたのかは知らないけど、変な噂を広めないでくれるかしら…」


 活舌悪くアニカさんは否定されました。でも、私が言った事で不快に感じているというよりも、むしろ隠したがっているという感じです。


「ねえ、師匠。どういう事でしょうかね?隠したがっている感じに見えますが…」


「しーっ。アイラ黙って」


 私は慌ててアイラの口元に手をやります。


「気分を害させてしまって申し訳ありません。私たちはカナディフシティから来た冒険者で、ルナカモマイルのハーブティーの素晴らしい香りに魅せられました。でも、流行り病の影響でドライハーブの出荷が滞っているとの話を聞いて、居ても立っても居られずにここまで来ました」


 私がそう言うとアニカさんは「あぁ…」と納得された表情を浮かべた後、申し訳なさそうに口を開きました。


「ごめんなさい。ここのハーブ園から病気が広がっていると噂が立ち、作業員が皆辞めてしまったのよ…まあ、実際私の両親は病気なのだけど、流行り病なら私にも感染うつっているはずでしょ?その噂だけがどんどん先行してしまって…」


 否定できる材料はあるけれど、そう言われると仕方がない部分もあるって感じです。


 噂の為に従業員が離れて出荷が遅れ、収入が少なくなったうえに両親の病気の介護で疲弊してしまったアニカさん。苦肉の策でギルドに収集作業依頼を出したものの、低賃金の為に誰も来てくれなかったそうです。賃金に問題がある事は分かっているのですが、それ以上出すことは出来ず、途方に暮れて居た所に私たちが訪れたわけなのです。


 まさに渡りに船と思った時に、病気の話を出され、それを確認に来たギルドの職員かと疑ったのでした。


「アニカさん大丈夫です。私たちは美味しいハーブティーが飲みたくて、純粋にお手伝いに来ただけですから」


 私がそう言うと、アニカさんも安心をされたようでした。


 ルナカモマイルの収穫時期は、花弁が水分をたくさん含んで一番可愛らしさを表現している時らしいのですが、収穫が滞りその時期が過ぎてしまったものも多くありました。時期が過ぎると香りも落ちて、苦みも出るのですって。実際に収穫に適した花は3分の1位でしょうか。


「遠くから見ていたら元気いっぱいに見えていても、近くによるとしおれている花も多いですね…さあ、折角私たちが来たのですから、少しでも早く収穫しましょうよ。どういうのを採ればいいのか教えてください」


「え…ええ、有難う。安い依頼料でごめんなさい。お願いします。えっと…収穫する目安はですね…」


 収穫するポイントを教えて貰った私たちは、せっせと採取に取り掛かりました。その上、疲れた時には私が『回復ヒール』をかけますので、もう無敵です。『回復ヒール』を使うと、身体に蓄積された疲れがあっという間に取れる為、すこぶる作業効率が良い。アニカさんはとっても驚いていました。まあ、いわゆる馬車馬の如く働いたわけです。


 なんと、1時間ほどで容積100リットル位の大きさの籠3個分が、ルナカモマイルの花弁で満たされました。


「有難う。私一人だったらこの4分の1も収穫できなかったわ」


 本来なら7人でやっていた仕事です。その時は無駄なく収穫できていたので一日に籠10個分は取れていたそうです。それを1カ月の間、5日に1回の割合で収穫するのですが、今期に関してはようやく籠5個分取れただけ、おまけに乾燥後の選別も滞っていて、出荷も出来なかったようです。


 この後は、他に栄養が行き渡る様に、枯れた花弁を取り除いて次の収穫に備えます。うまくいけば通年の半分くらいまでは取り戻せるかもと、アニカさんがほんの少しだけ安堵されていました。


「収穫の作業は終わったのだけど、良かったら選別作業も一緒にお願いできない?賃金を少しはずむのと、出来立てのハーブティーをご馳走するっていうので如何かしら?」


 1時間分の賃金を貰っても、ここに来るための馬車の運賃で消えてしまいます。それどころか帰りも馬車に乗ったら赤字ですよ。だから勿論やらしてもらいます。まあ、お金の事は気にしていなかったので別にいいのですが、これでは人が来ても怒って帰りますね。ギルドの受付の人が言っていた「キャンセルするとペナルティ」というのは、以前に怒って帰った人がいたという事なのでしょう。


 今後の事を考えると、この賃金で依頼を出すのには無理があるし、どうやら病気を解決して元居た従業員に戻ってもらうのが良いのですが…ここを捨てて行った人が素直に戻ってくれるかどうか…それに、アニカさんもそれを受け入れるかどうかですよね。


 一先ひとまず、選別作業をしながらその辺りの相談をすることにしましょう。


「アニカさん、出来立てのハーブティーって言われたら、やらないわけにはいかないですよ。それにアイラはルナカモマイルのハーブティーを飲んだことがないので、出来立てを彼女に飲ませてあげたいです」


「そうなのですよ、私、師匠の話を聞いてひとりで盛り上がっちゃって…それで一緒についてきたのです。だから、私もその作業に参加させてください」


 手を組み、お願いのポーズを取りながらアイラも上手に話を合わせてくれます。


 ニコッとほほ笑んだアニカさんは「多い方が私も助かるわ。お願いね」と言われ、一緒に倉庫に向かいました。


いつも読んで下さりありがとうございます。

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