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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第五章 旅路~ルナサフォラン

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70.晩餐会

「そもそもね、ミカさんはあんたの顔を立ててこれで終わりにしようとしてるのに、突っかかって来るなんて…本当ならトトの賃金を貰う権利もあるのよ、変な仕事をさせていたのだから」


 睨みつけてくるイタロに思っていた事をぶちまけました。悔しそうに唇を噛むイタロ…


 立ちはだかった私に「返り討ちにしてやる」とでも言うと思ったのですが、予想外の返答…


「な、な、なんでおまえと戦わなければならないんだ」


 デカい図体をしながら、完全に私相手にビビっています。動きを見て自分よりも強者だってことが分かったのでしょう。


「じゃあ、素直に引きなさい。もしも引けないのなら、誰でもあなたの相手になるわよ」


 そう言えばイタロは引くだろうと思ったのですが、とんでもない選択をしたのです。


「だ、誰でもだな…じゃ、じゃあ、トト…お、お前が俺の相手だ」


「えぇ!何を訳の分からない事を言っているの?子供相手に恥ずかしいと思いなさいよ。人間ちっちゃ…」


 大勢の目の前でそんな事を言ったものだから、軽蔑の眼差しの嵐で、ブーイングも飛び交っています。あらら…もうここで商売も出来ないね。


「う、うるせえ…元はと言えばトトの奴がちゃんと働かないから悪いんだ」


 全く意味不明な事を言っていきりたっています。奴にとってはもう背水の陣なのでしょう。


「いいよ、私戦う。みんなから力を貰った。私もいいなりになっていたから自分であと始末をつけたい」


 トトは一歩前に躍り出てグッとこぶしを握り締めました。


「ぐふふ。いい覚悟だ。ぐちゃぐちゃにしてやるよ」


 イタロは勝ったも同然とばかりに高笑いです。本当にみっともない…


「あんたねぇ…かっこ悪いと思わないの?」


「う、うるせえ、うるせえ、うるせえ…勝ったもんが勝つんだ」


 意味のわからセリフに、もうプライドも何もあったものではありません、こうなったら全面的にトトの支援をするだけです。


「はぁ…意味わからないし…いいわ、トトちゃんちょっとこっちへおいで」


 私はトトに身体強化魔法をかけてそっと耳打ちです。


「これで物凄く速く動けるはずだから、掴みかかって来るのを避けてお股のど真ん中を思いっきり蹴っ飛ばしてきなさい」


「うん、わかった」


 トトは再び拳を握りしめました。目の前には闘牛の様に鼻息を荒くしたおっさんが、待ち構えています。


 私が「さあ、行っておいで」と声をかけると、トトは物凄い勢いで飛び出していきました。まるでロケットです。


 子供のただでさえ敏速な動きが、身体強化魔法によって更に早くなっているのです。大の大人とて簡単に掴まえられるのもではありません。


 イタロは大きな腕をいっぱいに広げトトを捕まえようとしますが、早さが違います。その腕が空を切ったと思ったら、トトはイタロの股間にオーバーヘッドキックです。


「ギャアァァァァ…」


 イタロは悶絶もんぜつしながらその場にへたり込みました。子供の蹴りですが、身体強化魔法をかけた子供の蹴りなので大人の力とそう変わりません。私にはよくわからないのですが、さぞかし痛いものなのでしょうね。


「ねえ、まだやるの?やるなら次は私の番ね」


 アイラがイタロに近寄りしゃがみ込んでおでこをツンツンと突きました。


「もうやりません…勘弁してください…あの親子にはもう関わりません…」


 涙目のイタロは完全降伏です。その後、アイラはイタロから今までのトトが働いた分の賃金を請求して、3,000ピネルをせしめました。トトは一年間ただ働きだったので、「これでも少ないくらいだ」ですって。まあ、当然と言えば当然ですが、アイラもなかなかのわるですね。


 しかしながら、これでミカさんの手元にある現金は4,000ピネルもあります。リハビリの間の生活費としては十分でしょう。


 私たちがミカさん達に別れを告げ、旅館を探しに行こうとすると、トトが私とアイラの服を同時に握りました。お?またサイコロステーキを買わなくちゃならないのかな?


 勿論違います。まだお別れしたくないと涙ぐんでいたのでした。


「あの…あのように狭くて汚い家ですが、まだお泊りするところが決まっていなければ、どうかうちにお泊り下さい。ミドリさんが反物をお買い上げ下さり、腕も動くようになったので久しぶりにちゃんとした料理を作りたくなりました。お礼も兼ねて、私にご馳走をさせて頂けませんか?」


 自分の家が人を泊めるに値しない場所だとは分かっていますが、ミカさんは私たちに何かお礼をしたかったのでしょう。誠意を込めてそう言って来られたのです、トトも寂しがっているし、ここは有難くお気持ちを頂こうかしら…


「有難うございます。今日は何処へ泊まろうか決めかねて居た所だったので、大変助かります」


 私とアイラは顔を見合わせ、頭を下げました。ミカさんは片腕であんなに綺麗で丁寧な反物を作るのだから、料理の方も相当期待できそうです。ただ、私たちの為に沢山お金を使わないでくださいね。


 そう考えているとアイラは「ここの郷土料理の様なものを食べたいです」と言いました。きっと、郷土料理なら左程お金をかけずとも、料理が作れるはずとアイラは考えたのでしょう。ナイスです。私も郷土料理が好き。


 楽しい晩餐会になりそうです。道の駅に立ち寄ってよかった…


いつも読んで下さりありがとうございます。

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