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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第五章 旅路~ルナサフォラン

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67.お母さんの病気

「やれやれ、あんな悪どい商売をしているといずれつぶれちゃうよ…さあトトちゃんあなたももうお帰り」


 私はそう言いながらトトの背中を撫でてあげましたが、相変わらず私の足から離れようとはしません。見かねたアイラがその場にしゃがみ込み、トトの頭を撫でました。


「ねえ、トト、おうちに帰れない理由があるの?」


 トトは黙っていましたが、アイラにギュッと抱きしめられると涙をポロポロ落とし口を開いたのです。


「おじさんに怒られる…叩かれるの…」


 どういう事?なんでトトがあのおっさんに叩かれないといけないの?


「トトちゃん、詳しく教えてくれる?」


「トト、大丈夫だよ。このお姉ちゃんはとっても強いから、あんなおっさん一発で倒しちゃうよ」


 おーいアイラ…人を乱暴者みたいに、他に言い方は無かったんかーい。


「強い、強くないは別にして、お姉さんはあのおじさんを説得でできるかもしれないから、詳しく教えてくれるかな?」


 アイラと私が優しくトトに問いかけた為か、彼女はたどたどしい言葉を駆使して、詳しく説明してくれました。要約するとこういう事でした。


 トトはこの街で彼女の母と二人で住んでいます。彼女の母は絹織物を生業としていて、山に繭を取りに行くらしいのですが、その時にポイズンスパイダーに噛まれてしまい、右の手足が動かなくなってしまったそうです。何とか左手だけで仕事を続けているそうですが、思う様に動けず収入は激減。貯蓄も尽き、遂には食べるものにも困る様になってしまった時、あのサイコロステーキ屋の店主は、トトが店の手伝いをする代わりに、お金を貸してくれたそうです。


 協力の内容はトトが先ほどの様にテーブルで伏せて泣き、同情した大人にサイコロステーキを買って貰う様に仕向ける事です。そのお肉はトトが食べるので何の肉でも構わないので、トトが来た時にはケッパーラビットの肉を渡します。そしてトトはその肉を一気にたいらげ、肉の種類が分からない様にしなければならないのでした。


「なるほど、それであんなに不味そうにお肉を食べていたのね。まあ、実際むちゃくちゃ不味かったし」


「師匠、ケッパーラビットの肉なら100グラム1ピネルくらいで売っていますよ。トトが食べる時だけそれを焼いて儲けていたんですね。酷い奴」


 話の続きを申しますと、トトが人にたかっている事もある程度知れ渡り、あまり相手にされなくなってきたのです。だから通行人に放置されていたのですね。でも、お客を呼ばないとおっさんに叱られるので、私が買いに行った時に2皿頼んだのですって。


 もう、こんな事はやりたくないらしいのですが、あのおっさんからの借金は膨れるばかりでどうしようもなかったそうです。


「トト、借金はどれくらいあるか知っているの?」


「お母さんしか知らないの…でも、沢山あるって…」


「うう…可哀そうに…師匠、私がトトの借金を返済してあげますよ」


 アイラは目をこすりながらそう言いました。でも、そんな事では根本的な解決にはなりません。一時的に借金を返済してもトトのお母さんの収入は少ないので、また借金が出来てしまうのです。


「ねえアイラ、借金の返済は兎も角、先ずはトトのお母さんに会いに行きましょう。病気の症状を見てみたいわ」


 私はトトを抱きかかえ「お家に連れて行ってくれる?」とトトに言いました。しかし、トトは自分の商売を母親に知られるのが嫌なので、首を縦に振りません。


「大丈夫だよ。トトちゃんのお仕事の事は決して言わないから、お母さんの所へ連れて行って。何か役に立てるかもしれないから」


 私はそのような説得を何度か繰り返すと、トトはようやく「分かった」と家へ案内してくれたのです。


 ◇ ◇ ◇


 道の駅の裏通りから更に奥に進んだ所の長屋に、トトの家は有りました。道の駅の周辺の建物はそれなりに立派だったので、この辺りに住む人たちは裕福なのだと思っていたのですが、実は貧富の差は激しかったのですね。隙間風が何時でも入ってきそうな長屋を見ているとその事を痛感します。


 建付けの悪い扉をトトはギシギシ言わせながら開けると、狭い部屋に置かれた機織はたおり機を、片腕でゆっくりと動かしている女性が居ました。トトの母親です。


「お母さん、ただいま。今日出来たお友達がお母さんに会いたいって言うから連れてきたよ」


 今日出来たお友達…トトには母親にそう言う様に伝えていたので、彼女は言われた通りそう言いました。


「あらあら、それはいらしゃい。何のおもてなしも出来ないですけれど、ゆっくり休んでいってください」


 母親は私たちの方を見る事も無く、そう言って機織はたおり機を動かしています。狭い家の中には布団が少しと、反物がいくつか積んであるだけで、その他には何もなく「おもてなしは出来ない」と言うのは本当の事だという事が分かります。不自由な身体では思う様に作業が進まない為、少しでも手を止めたくはないのでしょう。


 私がここに来た目的は借金を返済してあげる為ではありません。私に母親の病気が治せるかどうかを確かめる為です。ポイズンスパイダーに噛まれて手足が動かないなら何らかの神経障害が起こっているかと思われます。


「トトのお母さん。初めまして私はミドリと言います。『私は弟子のアイラです』突然ですが、私に身体を診させてください」


いつも読んで下さりありがとうございます。

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