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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第五章 旅路~ルナサフォラン

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62.旅は道連れ世は情け

「馬が居ないと馬車が運べないですよ。交信盤でお願いしたじゃないですか!困った人を助けるのも兵士の仕事でしょ?」


「そもそも保安部は馬の提供などやってはいない。必要なら貸し馬屋に連絡を取って自分で手配するのだな」


 ポールさんは涙目になって、必死になって兵士さんにしがみついていますが、あっさりと振り払われました。


 そして山賊達を護送馬車に詰め込んだ兵士さん達は、私とアイラだけに敬礼をして、さっさとその場から立ち去ってしまいました。


「ああ…馬が無いとここから動けない…一体どうしたらいいんだ…」頭を抱えながらその場に座り込むポールさん。そして、私たちの方へチラッ…とてつもなく物欲しそうな顔をしています。


 し、知りませんよ。確かに可愛そうだとは思いますが、やはり半分は自業自得。兵士さんの言う通り、貸し馬屋さんへ連絡をしてください。


 私はポールさんの視線に気()()()()()()をして「さあ、行くよ」とアイラの手を引っ張りました。


「ちょっと、ちょっと待ってくれ!君はプリーステスだろう?人を癒すのが仕事だろう?今目の前に非常に困っていて癒されたい人間が居るのだ。それを放っておいていいのか?人を癒す職を持っている人がだよ?」


 やっぱり来た!ポールさんはワザと悲愴な声を出して懇願してきます。面倒臭い人ですね。


「じゃあ、守ってあげるからそれ(馬車)を引っ張って付いてきたらいいですよ。山賊が出たらやっつけてあげますから。私たちも先を急ぐので、ここで足止めを喰らう訳にはいかないのです。他にも私たちを待っている人がいますので(嘘だけど)」


 私のセリフを聞いたアイラはキランと目を輝かせました。


「本当ですか?師匠?待っている人ってもしかして男の人ですか?師匠も隅に置けませんね、それで一人で行こうとしていたのですか?このこのぉ♪」


 アイラの頬を摘まみ、引っ張り上げました。これも自業自得です。


「ひ、ひひょう(師匠)…いはいれふ(痛いです)…」


「その悪い口は良い口に変わりましたかね?余計な事を言うと摘ままれますよ」


「うええ…もふふまんでいふじゃないれふか(もう摘まんでいるじゃないですか)…いいふひにかはりまひたから(良い口に変わりましたから)、ゆふひへふらはい(許してください)」


 私が手を離すと、アイラは涙目になって頬をさすっています。


「師匠、酷いじゃないですかぁ…」


「また悪い口になりそうなの?」


「ひいい…大丈夫です。良い口のままです」


「そお、良かった。じゃあ、行きますか」


 私はそう言ってポールさんの方へ向き直りました。そして「馬車なんて引っ張れるわけないじゃないか」と言う彼に魔法を放ちました。


身体強化ストレング


「さあ、これで馬車を引っ張れますよ。1時間はもちますのでしっかりついて来てくださいね」


 ポールさんはこれ以上懇願するのは得策ではないとようやく感じてくれたようで、少し口が()()()になってはいましたが、自ら馬車を引っ張り出しました。すると…


「おお、軽い。これならいける、行けるよ。有難う…えっと…プリーステスさん。あの、良かったら名前を教えて頂けないか?」


「私は名乗るほどのものではありません。あちらのウィザードはアイラです」


「ちょっとちょっと!師匠!なんで私の名前だけ言うんですか。その訳の分からない気の使い方は一体何ですか?」


 面白いですよねアイラって、ちゃんと突っ込んでくれます。


「そうか、君はアイラさんって言うんだね。そしてあのプリーステスさんはシショウさんて言う名前なのだね」


 おお、ポールさんもナイス追い打ちです。


「師匠が名前の訳ないじゃないですか!商人さんなのにそんな事も分からないの?ああ、面倒くさい!師匠の名前はミドリさんです、()()()()()。師匠は私の先生って言う意味ですよ。お分かりですか」


「勿論わかっているさ、ちょっとした冗談じゃないか。アイラさんって冗談の通じない人なのかな。あははは」


「ぐぬぬぬ」


 アイラは興奮モードに入り、ポールさんは完全に揶揄いモードに入っています。楽しくないわけじゃないけど、ちょっとうるさくなってきました。


「二人ともうるさいです」


「原因を作ったのはどなたですか!師匠もこんな人放っておけばよかったんですよ」


 アイラはそう言いますが、私もなんだかんだ言いながら、やはりそんなわけにはいかなかったのですよね。それでポールさんに何かあれば寝つきが悪くなりそうだし。あれ?寝起きって言うんだっけ?まあ、どっちでもいいか。


「ごめんごめんアイラ、折角だし、少しでも道中を楽しもうと思って、だって放っておいて何かあれば寝起きが悪くなるでしょ?」


「師匠、それは目覚めが悪くなるって言うんです。全く…私を出汁だしに使わないでくださいよぉ」


「あら、恥ずかしい、私としたことが…」


 まあ、こんな感じでそれなりに楽しく道中を進んでいましたが、一向にポールさんの馬は届きません。そろそろ追いついてもよさそうなのに…何かあったのかしら。少し心配になります。


「ポールさん、馬なかなか届きませんね」


 私がそう言うと、ポールさんは何食わぬ顔で「そりゃ来ないさ。連絡していないからね」ですって


「え?どうするんですか、この後…」


「だって、君たちと一緒に歩いている方が楽しいしね。おまけに安全だ。こんなのもいいなあって実感するよ。あ、それと、お礼はするからまた身体強化魔法をお願いするね。ミドリさん」


 全く図々しい…急いでいるんじゃなかったの?困った人ですね。


 私とアイラが苦笑していると、満面の笑みを浮かべてポールさんが口を開きました。


「よく言うだろう?旅は道連れ世は情けってね」と頭をポリポリ…


「「それはあんたが言うセリフじゃないだろう!」」


いつも読んで下さりありがとうございます。

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