56.言いがかり
何とか依頼を終えることが出来ましたので、私たちはすぐさまギルドに戻る事にしました。依頼料を頂いて、素材を換金したらルナサフォランへ向かう予定です。
「師匠、この間に随分レベルが上がったので、何か魔法を獲得しようと思うのですけど、何がいいと思いますぅ?」
そう言われても私はウィザードじゃないし、そもそもアイラが何の魔法を獲得しているのかもよく知りません。でも、相談された以上は一緒に考えないといけませんね。取り敢えず私のバイブル、ガイドブックに頼らせていただきます。
「アイラは攻撃魔法か、補助魔法かどちらがいいの?」
「それが、よく分からないのですよぉ。私が冒険者になって一緒に行動したのって、フィンと師匠だけなのです。冒険者の養成所時代には実習で疑似パーティを作った事はあったけど、その時は今持っている魔法で攻撃しただけだったし…実際の所、師匠以外には一緒に戦った人っていないのですよね」
「そうなんだね、このまま二人で戦うのなら広範囲に攻撃する手段が必要だし、アイラがメインの前衛で、他にもパーティが居るなら一撃必殺魔法もいいし、パーティでサブ的なポジションなら補助魔法が必要だね」
ベテランの冒険者の如く立派な事を言っていますが、全部ガイドブックに書いてある受け売りです。実はアイラはお金がなくてガイドブックを持っていないので、私が代わりに調べているのです。「魔法を獲得するための指針」なんて頁があって、単にそれを棒読みしているだけだったりしますけどね。
ギルドに戻ったらアイラも買わなくちゃね。何かと便利だよ。
「当分、師匠と一緒に行動するつもりですしぃ…二人ともが攻撃担当で防御担当なのですよねぇ。そう考えると全部必要ですねぇ。だから今持っている習得ポイント12を使って、補助魔法と広範囲攻撃魔法を獲得します。そしてまだポイントが余っていたら一撃必殺魔法の追加ですね。先ずはお勧めの補助魔法って何かあります?」
「ねえアイラ、こんなのは良さそうよ?どう?」
頁を開いて見せたものの1つ目は、物理攻撃を受けると反射してそのまま相手に返すことのできる魔法『攻撃反射』です。3分間効果があり自分自身以外にも使用出来ます。
盾となる仲間がいないから、その代わりになる様な魔法が必要です。物理攻撃に対してだけですが頼りになりそう。
全体攻撃としては、私の持っている『広範囲電撃魔法攻撃』か『爆発』が良さそうです。アイラはウィザードだから『広範囲電撃魔法攻撃』も私が放つよりも強力そうですし。
『攻撃反射』、『広範囲電撃魔法攻撃』、『爆発』の必要な習得ポイントは全て5でした。このうちの2つは獲得できますね。
私が『広範囲電撃魔法攻撃』を獲得した時は11ポイントも必要だったのに…割増無しって羨ましい…
「師匠がそう言われるなら、そのうちの2つを習得します。『攻撃反射』とぉ…全体攻撃魔法はっと…師匠が『広範囲電撃魔法攻撃』を持っているのなら、私は『爆発』にしようかな、ほれ、ポチッ」
え、即決ですか?何の躊躇もないのですね。
何はともあれアイラの魔法が増えて、私たちの戦いも少しは楽になりそうです。それと、魔法を獲得した後って、どうしても使いたくなるのですよね。アイラはずっとうずうずしていましたが、残念ながらギルドに戻る迄モンスターには出くわしませんでした。
◇ ◇ ◇
ユキちゃんがさっさとモンスターたちを見つけてくれたお陰で、ギルドに到着した時間はまだお昼前でした。
「この時間は空いていていいね。マリーさんも暇そう。報酬を受け取って食事にしましょうか。その後ルナサフォランへ出発しましょう」
アイラと一緒に素材管理室へ行って素材を出し、素材証明書を頂いてマリーさんの所へ持っていきました。
「二人とも頑張ったね、『蜘蛛毒の結晶』が3つもあるじゃない。キラーウルフの毛皮も2枚かぁ、これは別報酬になるわよ、ラッキーだね。なかなか手に入るものではないんだよ?じゃあ報酬を渡すわね、毛皮2枚で500ピネルでキラーウルフの討伐料が500ピネルで合計1,000ピネル。『蜘蛛毒の結晶』は3つで3,000ピネル。合計で4,000ピネルね毎度あり、一か月くらい働かなくてもやっていけそうだね」
マリーさんはニコニコ顔で報酬を渡してくれました。依頼をきちんとこなす事は、冒険者を雇っているギルドにとっても大切な事です。ギルドの信用にも関わってきますしね、だからマリーさんは感謝の意を表してくれるのだけど、彼女の笑顔を見られるとそれだけで嬉しくなります。
でもね、今回はアイラと無事に依頼を終えられたことがとても嬉しいのです。彼女を知ることも出来たし、連帯感を深められたという実感も沸いた。この後の道中もうまくやって行けそうです。
モンスターをやっつけた時に落ちていた230ピネルと、今回の報酬4,000ピネルを二人で分けた後にギルドの食堂を覗くと、バナードを含むろくでなしどもが昼間っから吞んだくれていました。
「昼間っから大声出して品がないね。あんな大人になったらだめだよアイラ。マリーさんもあいつらには気を付けてって言っていたし、外でご飯を食べましょう」
そう言って、外に出ようとした時です。アイラの尖がり帽子のつばが、向こうからやって来たキツネ目の痩せた冒険者の男の肩に当たったのです。大した事は無いはずなのに「うわあ、痛たた、何しやがる!」と大袈裟に痛がるその男、明らかに当たり屋です。するとその声を聞きつけたバナード達がぞろぞろとやって来たのです。
「おいおい、一体俺の仲間に何をしてくれているんだ。どれ、あぁ、こりゃあ重症だ、病院に行かなきゃあならねえなぁ」
言いがかりも甚だしい。こいつらこれを計画していましたね。
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