52.さあ、少し実力を見せてもらいましょうか
「野営に必要そうな物ってこんなにあるけど、本当にこれ全部買うの?」
店のお姉さん…『カレン』って言うらしいのですが、カレンさんは私がお願いした品をカウンターに並べて驚いています。
「では、もう一度確認しますね。先ずテントでしょ、それに寝袋と毛布が2組ずつ、ランタンに調理器具一式と調味料セット、簡易テーブルと椅子が4脚に中皿が10枚にフォークとナイフが4組。あと、のこぎりと金槌っと、これで間違いないわね。どこかへキャンプにでも行くの?」
私がアイラと二人で歩いてルナサフォランに行くための準備だと言うと、女の子二人で大丈夫なの?と心配そうに見つめてこられました。
「危ないからやめときなよ」と引き留めてくるカレンさんに、自分たちは冒険者だからと、何度も説明をしてようやく納得してもらうと、彼女は何やら小さな箱を持ってこられました。
「これはね、モンスターを寄せ付けない装置なのよ。起動させると人間には聞こえないけれど、モンスターが嫌がる周波数の音が発生するのよ。加えて、超音波で内部を振幅させてモンスターの嫌いな匂いのミストを発生させるの。夜眠る時に使うと、少なくともモンスターは寄ってこないわよ」
お、出たぞレアアイティム…かな?
野営をする上では欠かせないものらしくて、動力源は中に『磁気を帯びた閃緑岩』と言うものが入っているのですって。その磁気を帯びた閃緑岩は含まれた磁力が無くなれば、もう使えなくなるので、交換が必要なのです。それに、中に入っている『モンスターが嫌いな匂い』も、その素が入っており、それも無くなれば交換が必要。なんだか電気蚊取り器みたい…レアかどうかはわかんないね。
10日分がセットになっていて値段は2,000ピネル。なかなかいい値段ですが、実際の所、実は夜寝る時が一番心配だったのですよね。少なくとも、これがあれば夜のモンスターの脅威からは逃れることが出来ます。買わないわけにはいかないでしょう。
「じゃあ、それもいただきます」
「毎度あり、全部で5,040ピネルになります」
安い!先ほどの武具に比べると格段に安い!…あ、私、金銭感覚マヒしかかっているのかも…
カードで代金を支払っている私を見て、アイラはもの言いたげな顔をしています。きっと馬車で行ったら、その代金の100分の1で行けるのに…とでも思っているのでしょうね。それとも、ぱっぱらぱっぱらお金を使う私に、呆れているのかしら…
まあ、馬車に関しては私も思うところがない訳ではありません。アイラにはなんの意味があって、歩いて行こうとしているのかが分からないのでしょう。でも、仕方がないのですよね。ルイ様には歩いて行くって言ってしまっているし、ルナサフォランへは医療班も派遣されているのだから、そこまで急いでいく必要もないでしょう。
ど素人の私が慌てて行ったところでねぇ…
一緒に連れて行けって言いだしたのはアイラだから、黙って見守っておいて下さい。
おっと、そんな事よりも先ずはアイラです。武具を揃えたから少しは強くなっていると思うので、早速実力を見せてもらうとしましょう。これであまりにもポンコツだったら、身ぐるみ剥いで捨てちゃおうかしら…
ここでもサクッとカードで支払って、ものの見事にカウンターに並べられた商品を、次々とナップザックに入れていくとカレンさんは驚いていました。
「どうやってこれだけの荷物を運ぶのかと思ったら…凄いね。若いのに魔法のカバンも持っているんだねぇ。その手に持っている錫杖と言い、あんた、相当実力を持っているプリーステスなんだねぇ。あんたなら何事も無く、ルナサフォランに行けそうだわ」
さすが雑貨屋さん、よく知っておられますね。アイラはただただその光景にビックリしています。
「師匠、そのナップザックどうなっているのですか?」
ナップザックに入った魔法のカバンを説明していると、中からユキちゃんが飛び出してきました。いきなりモンスターの出現にアイラはパニック、いきなり魔法で攻撃をしようと杖を構えました。
「ちょっと、待って待って!この子は私の友達だから」
アイラちゃんちょっと落ち着いて下さい…彼女が落ち着くまでに5分かかりました。
◇ ◇ ◇
日が暮れるまでにまだ時間があるので、街からほんの少し離れた所にある雑木林に向かいました。アイラの修行に加え、可能なら新たに装備した武具を試すためです。
雑木林にはスライム、ケッパーラビット、いたずらネズミ等の弱っちいモンスターが出るので、レベル2のアイラにとっては丁度いい相手です。それにモンスターの居場所はユキちゃんが教えてくれるので、効率よく経験値を稼げるはずです。
「アイラ、ユキちゃんがモンスターを見つけてくれるので、あなたの持っている魔法を駆使して一人でモンスターを倒すのよ「キィ」」
私がそう言うと、ユキちゃんも一緒に返事をしてくれます。肝心のアイラはと言いますと、少し震えていますね…武者震いかしら…
「違いますよ!こ、怖いんですっ。危なくなったら助けてくださいね、師匠」
「うん。危なくなったらちゃんと回復してあげるから、安心して戦いなさいな」
勿論助ける気はゼロです。その方が早くレベルも上がるし、今の防具なら危機的なダメージを受ける事は無いですからね。だって武具屋の店主も「レベル1の奴だってケッパーラビット位なら無傷で倒せる」って言っていたもの。
「それにアイラの魔法を見てみたいから、色々な魔法を使ってね」
更に注文を付け加えました。アイラが唇をわなわな震わせながら辺りを見渡していた時、ユキちゃんが「キィ」と鳴き、ケッパーラビットが飛び出してきました。
『火の魔法』
アイラがそう唱えると杖の先から炎が飛び出し、ケッパーラビットを含めてその周囲1メートル位が焼け野原です。
「えええ?ちょ…ちょろ火がガスバーナーに変わっていますぅ」
高級武具の付与効果の強さに驚き、目を丸くしながらその場にへたり込むアイラでした。
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