51.次は雑貨屋さんですね
私が呆然とアイラを見ていると、店主も「おいおい、可愛らしいじゃねえか。見事に化けたな、ガハハハ…どうだい?俺の愛人にでもなるか?ガハハハ…」と軽口をたたいてきます。
その言葉に苦笑するアイラですが、値段を聞いたらきっと驚くわよ。それに、うふふ、マサトに言われた例のアレ、言おうと思っています。本当に可愛いんだから少しくらいの意地悪は…いえ、冗談は許されるよね。
「もう、そんなセクハラは良いから…それで、全部で幾らになるの?」
「おお、ガハハハハ…すまなかった。全部で1万5000ピネルだ」
「い、いちまん…ご、ごせんピネルですって…も、ものすごい額ですよ…師匠、あわわ」
うふふ、ほらね。驚いたでしょ?
飛び出しそうなくらい目を大きく広げて、手をバタつかせながら狼狽するアイラですが、私にとってはこれ位の額は想定内。私の装備よりもずっと安いですしね。
「ええ、いいわよ。アイラも身体で払うって言っているし、それでお願いね」
フフフ、アイラちゃん。さあ、どういう反応を見せてくれるのかしら?私もこれで驚かされたのですよね。
私はワクワクしながら彼女の反応を待ちました。ところがです…
「成程、二割引き…額が大きいとお得ですよね。分かりました。店主の肩もみ30分ですよね。これだけの装備ですもの、精一杯頑張らせてください!」
ええぇ?アイラはこのシステム知っているの?もしかして有名な話なの?知らなかったのは私だけ?…なんだ…つまんないの…
私が少しがっかりしていると、アイラは横目で微笑んで「ああミドリさん、さては良からぬことを考えていましたね?」と悪戯っぽく言いました。
「う…な、何も企んではいないわよ…しっかり頑張って頂戴ね…」
少し残念だったけど、アイラも喜んでいるまあいいか、と気持ちを切り替えていると、店主が私の錫杖をしげしげと見つめています。
「なんだ、えらく傷だらけになっているじゃないか。相当雑な使い方をしているのだろう。ちょっと貸してみな」
そう言って店主は私の錫杖を手に取り、細かい所まで観察をしながらたいそう驚かれました。
「おいおい、どういう使い方をしたらこんな事になっちまうんだ?このままでは折れちまうぜ」
「エヘヘ…それで棒術を少々…」私が冷や汗を掻きながらそう言うと、店主は「やれやれ…」と大きなため息をつきました。
そして「ちょっとまってろ」と私の錫杖を持って、工房に行ってしまいました。暫くして帰ってきた店主の手には、樫の部分を綺麗にすげ替えられ、全体を磨き抜かれた私の錫杖がありました
わあ、ピカピカです。この短時間に店主凄い!
「沢山買ってくれたからこのメンテはサービスだ。でもよ、これで棒術の棒にするのはおすすめできねえなぁ。…そうだ、こういうのがあるけどどうだい?」
そう言って店主は先に小さな水晶が付いた、真っ黒い棒を持ってきました。
「これはカーボンライトと言う特殊な素材で作られた錫杖で、ソロとか前衛で戦うならもってこいの武器だ。物理攻撃に使っても、そう簡単には折れないぜ。今持っている奴の方が魔力は強いが、物理攻撃には向かない。お前さん収納できる入れ物をもっているんだろう?使い分けた方が良いんじゃないか?」
確かに、言われればそうですね。ソロで戦っている以上、錫杖は物理攻撃に必要な武器になる。それなら、移動の際にはそれに適した錫杖を使う方が良いですよね。
「店主の言うとおりね、それも頂く事にするわ」
「おう、毎度あり。3,000ピネルになるけどいいか?」
結構高い、でも今後の事を考えたら決して高い買い物じゃないです。あ、肩揉みはしませんよ、お金に余裕がありますので。
私はアイラの武具代金も含めカードで支払いを終えると、今まで使っていた錫杖をナップザックに仕舞い、新たな黒い錫杖を装備しました。
ヒュンヒュン音立てて振り回してみると、軽すぎず、重すぎず、おまけに硬さも感じます。気に入りました。物理攻撃にも使えるって言うのも分かりますね。ごめんなさい今までの錫杖さん、魔法重視の時にはまた、お願いしますね。
店主さんにも「なかなかその錫杖も似合っているぜ」と言われ、私も嬉しくなりました。うーん、販売上手ですね。後はアイラが店主の肩を揉むだけです、頑張ってくださいね。
そしてそれが終われば雑貨屋さんへ向かいますよ。
◇ ◇ ◇
向かう雑貨屋さんはそうです、私の冒険者人生を変えるようなアイティム『おやすみの笛』を手に入れた雑貨屋さんです。
「こんにちは」
お店に入ると、カウンターに座っているのはふくよかな中年のおばさん…ではなく、若いお姉さん…おばさんはどうされたのでしょう?
「いらっしゃい、何かお探しですか?…ん?どうしたの?」
私がキョトンとしているので、お姉さんも不思議そうな顔をされています。
「いえ、以前来た時には店主さんはおばさんだったので、どうしたのかなと思いまして…」
「ああ、それは私の母の事だね。今日は私が店番の日なのよ」
お姉さんはにっこり笑ってそう言いました。おばさん結構ふくよかだったから、糖尿病とか高血圧とか心臓病で倒れたんじゃないかって、心配になりましたよ。何事もなさそうで良かったです。
おばさんの代わりに、お姉さんに『おやすみの笛』のお礼を言って、早速、野営の物品を選んでもらう事にしました。何が出てくるか楽しみです。『おやすみの笛』級のレアアイティムがあれば嬉しいなぁ。
いつも読んで下さりありがとうございます。




