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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第四章 新天地へ向けて

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49.アイラ

 先ほどマリーさんから、バナードの評価値が3だっていう事は聞いています。評価値1なら『薬草集め五枚一組で10セット』の依頼料が30ピネルだから、50セットで150ピネル。バナードは評価値3なので依頼料は210ピネルになります。だからバナードがこの子達の薬草を買い取ってもうけを出そうと思えば、210ピネル未満でないといけないのです。この子達の努力を奪い取って、40ピネル儲けようだなんて、ほんと厚かましい。


 だから私は240ピネルで買うって言ったのです。一旦その値段で買うって言っちゃえば、その値段以下での交渉は出来ないでしょ?バナードも損をするわけにはいかないしね。でも、本当にこの子たちの為を思っているのなら、さあ、この値段以上で買ってみなさいよ。


 バナードは苦虫をかみ潰したような表情で黙っていました。うん、何も言いませんね。やはり、自分のもうけしか考えていないじゃない。


 そしてバナードは「じゃ、じゃあ、お前がその値段で買ってやってくれ…おい、お前ら良かったな…」と言って食堂の方へ歩いていきました。でもね、その時「チッ…覚えてやがれ」と小声で口ずさんだのはちゃんと聞こえていましたよ。まあ、直ぐに忘れますけどね。


 若い男の子と女の子は「あの…有難うございました。でも…素材の方は…」と歯にものが詰まったような言い方をしてきました。


 改めて見ると二人とも貧相な服装で、依頼帰りだから髪も乱れています。いかにも駆け出し冒険者って感じです。女の子の方も半分髪に隠れて顔は見難いのですが、地味っぽい。


「ああ、大丈夫よ。ちゃんと分かっていますよ。あなた達も評価値をあげたいものね。買い取る気なんてなかったから安心して」


 そう小声で言った私が握ったこぶしに親指を立ててニコッと笑うと、まだ二人は不安そうです。


「はい…すみません。あ、申し遅れました。私はアイラと言います。そっちの男子はフィンです。この間冒険者になったばかりで、私たちはこの街出身で幼馴染なのです。薬草が沢山取れた話をしているのを偶然にも、あの人が聞いていたようで…」


 話を聞くと、アイラの方はウィザードで、フィンの方はソルジャーなんですって。二人は冒険者の養成所を卒業したばかりの18歳で、以前から二人で冒険をするのを楽しみにしていたそうなのです。冒険者養成所なんて所があるのですね。


 今日、冒険者登録を終えて、初めての薬草採取の依頼をしたのですって。思いのほか沢山の薬草が取れたので、浮かれて話をしていたところをバナードに聞かれてしまったのだとか。折角の依頼コンプリートに、水を差されたって訳ですね。


 一応、他の先輩方からバナードの様なやからの事は聞いていたようですが、まんまとつかまっちゃって、運が悪かったのでしょう。まあ、今度からは迂闊うかつに素材を持っている等言わない方が良いですね。


 彼らに、初依頼コンプリートの、ありきたりの慰め言葉を言って、私がその場を去ろうとすると、彼らの心配はその事だけではなかったのです。


「あの人すごく怖そうでしたし、『覚えとけ』って言っていましたけど…大丈夫なのですか?」


 彼らはとても心配そうな表情で尋ねてきました。


 まあ、仮に戦う事になったとしても、棒術を習得した私なら多分大丈夫でしょう。それに、明日にはこの街から出ていくので、サヨナラバイバイです。


「まあ、気にしなくていいですよ。明日にはこの街から出ていくし、おまけに私はそれなりに強いので。あなた達の方こそ気を付けてくださいね」


 私がそう言ってその場から立ち去ると、後ろからアイラさんが走って追いかけてきました。


 そしてアイラさんは何処に行くのか?と熱心に聞いてくるので、ルナサフォランに歩いて行くと言ったら、なんと「私も連れて行っていただけませんか?」と言ってきたのです。


「え?冒険者になったばかりなのに、ルナサフォランに行ってどうするのですか?」


 そうです。先ほど今回の依頼が初依頼だと言っていたはずです。私は意図が解らず思わず目をパチクリさせて、そう聞いてしまいました。


「実は、今回の依頼はフィンとの幼いころからの約束だったので、一緒にやったのですけど、フィンには次から一緒に依頼を行うパーティが決まっているのです。私の方はまだパーティが決まっていなくて…」


「アイラさんはそのパーティに入れて貰えないのです?」


 私がそう聞くと、アイラさんは寂しそうに首を横に振りました。


「そのパーティには既にウィザードが居て、私は入れないのです。フィンは最初、折角誘って頂いたのに私に気遣って『二人で頑張ればいいさ』と断ろうとしていたんです。でも、初心者二人だけでは初級の依頼しかこなせないし、それだと生活していくのも、成長するのも大変なので…」


「それで、フィン君には『私に遠慮せずにそのパーティに入って』って言ったのね」


「はい。『レベルが上がって二人で何でもこなせる様になった時には、また一緒にパーティを組もうって』約束をして、別の道を歩むことにしたのです」


 そうかぁ、アイラさんはフィン君の事を思って敢えて別々の道を歩むことを選んだのですね。


「成程…二人が別々に行動することは分かりましたけれど、それがどうしてルナサフォラン行きに繋がるのです?」


 組むパーティが居なくてソロでは不安なのは分かります。でも、それなら薬草依頼でもしながら初めに出てくるモンスターを倒して、地道にレベリングをした方が今後の為にも良いと思うのですが、彼女の考えている事は今一つ理解が出来ません。


 すると、アイラさんは目をキラキラさせながら私の手をギュッと掴んだのです。


「お、お願いします。私を弟子にしてください」


「は、はあ?」  な…何ごとですか?地味子さん…


いつも読んで下さりありがとうございます。

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