47.ギルドに戻って…
「ジゴロウ師匠、修行有難うございました。実践でも棒術を使うことが出来ました。身体強化魔法を使ったら、大勢の人の骨をポキポキ折っちゃいましたよ。やりすぎてしまった感ありです」
「ふぉっふぉっふぉっ。まだ、力のコントロールが未熟なのじゃよ。それにな、2倍の身体強化中に使用する力を半分に抑える事が出来る様になればと、2倍の長い時間を戦う事ができる。うまく加減が出来るようになると今よりもずっと戦いやすくなるぞ。頑張りなされ」
ジゴロウ師匠は満足げに腕組みをしながら、その様に説明をしてくれました。すると、ジゴロウ師匠の傍に次々と門下生たちが集まってきました。
「ご隠居、私どもにも身体強化魔法を教えてください。師範の棒術と身体強化魔法の組み合わせは最強です。もう、二度とムカの奴らに大きな顔をさせません」
「私どもにも是非、ご教授をお願いします!」
門下生たちがその場で土下座をし、教えを乞うために必死になっていました。この人たち、土下座が好きですね…
すると、ジゴロウ師匠は持っていた箒を地面に叩きつけました。
「喝!ローマは一日にして成らずじゃ。馬鹿者!この娘とて身体強化魔法を楽して覚えたわけではない!」
…いえ、いたずらネズミを運よく沢山倒せて、レベルが上がったからですけど…それに身体強化魔法は師匠に教わったわけではありませんが…
「お前たちにプリーステスがレベル15以上あげようと思えば、どれほど大変か分からぬのか!」
…すみません。笛を吹いて一網打尽をしたら、一気に上がっちゃって…あはは
「棒術もろくに習得できていないひよっこが何を言っておる!腕立て伏せ300回に、うさぎ跳び道場10周じゃ!できなければとっとと家に帰れ!」
門下生たちは顔を青くして、腕立て伏せを始めました。これは、先が思いやられます。サラさんも大変ですね。
「あの…ムカ道場では助かったわ。有難う。ろくに名前も名乗らなかったわね。私はここの師範のサラです。あなたは?」
今更って感じですが、サラさんが照れ臭そうに私に話しかけてこられました。
「私は冒険者でプリーステスのミドリと言います。この度、かくかくしかじかでジゴロウ師匠にお世話になりまして…」
「そう…てっきり私が居ない間に入門した門下生なのかと思ったけれど、訳ありだったのね。おじちゃんも年だし、一緒に道場を盛り立ててくれれば嬉しいと思ったのだけれど、残念。今度はあなたに何かあれば、私が力を貸せるように力を蓄えておくわね」
黒く美しい髪が風に揺られるサラさんはとても綺麗です。そのサラさんがにっこり笑って、私に手を差し出しました。私も手を出して固い握手を交わしました。武術をしているとは思えない程に美しい手を見つめながら…
不思議なものね…あのホテルのセクハラ事件は本当に癪に触る事だったけど、こんな所に結び付くなんてね。人生って…不思議なものですね。
◇ ◇ ◇
サラさんとジゴロウ師匠に別れを告げ、再びギルドに戻りました。マリーさんに頂いたアドバイスは最高の結果を生みましたよ。お礼を言わなくちゃ。
あ、そうそう。ルナサフォランに居るサラさんの兄弟さんの病気は、流行り病ではなくて、単なる感冒だったらしいです。良かったよね。
それと、ムカの頭をどついた時にピロンて言ってたっけ、あれ何だったんだろう?見てみなくちゃね。
ギルドに行く道すがら、ステータスを開けてみると『棒術2』になっていてその下に(自動発動)って新たな文字が書き加えられていました。何だろう?自動発動って、まあ、いいか…
ユキちゃんを肩に置き、会話?をしながら歩くと、それなりに長いギルド迄の道のりも楽しい時間です。あっと言う間にギルドに着いちゃいました。
「マリーさーん」
ギルドの受付に行くと、マリーさんは前回の様に怯えた様子はなく、快く私を迎えてくれました。
「で、どうだったの?武術は習得できたの?」
「はい。『棒術2』(自動発動)ってやつを手に入れました。良いアドバイスを有難うございました」
「へえ、凄いじゃない。まあ、女性の一人旅だからまだ心配ではあるけど、気をつけて行って来てね」
マリーさんは優しくそう言ってくれます。そして、何かを思い出したように掌に拳をポンと乗せ「そうそう…」と
実は以前ギルドに預けたバレーボール位の丸い真っ黒な石、つまり『黒の魔法石』は超が付くほどのレアアイティムで、乾電池みたいなものだったそうです。
通常魔法量と言うのは人によって容量は違うけれど、限りがあって魔法を沢山使ってしまえば中に入っている魔法の素は無くなります。一晩寝れば自然と魔法の素は補充されるのですが、直ぐに補充したい時には何らかの薬やドリンクが必要です。
しかし、この『黒の魔法石』は魔法の素を貯めこむことが出来て、自由に引き出すことが出来る優れモノだったのです。寝る前に余った魔法の素をその中に込めれば、どんどんた貯まっていくのです。鑑定士が限界まで挑戦したわけではありませんが、容量を聞くと私の十日分以上の魔法の素が貯められるそうなのです。
それどころか、微量だけれど魔力を自然から吸収して自動補充される機能も備わっているのですって。
「ギルドの研究所としてはこの『黒の魔法石』を20万ピネルで譲ってほしいとの事だけどね、ミドリちゃんどうする?」
驚きです。円に直せば2000万円ですよ。あの黒い球がそんな値段するなんて…まあ、お金は有るに越したことはありませんが、私の貯えもそれなりにあります。それに、これから行くルナサフォランで治療が必要になった時、どれほどの魔法量が必要となるか分かりません。
いざという時、補充できるものがあればものすごく心強いです。いわゆる、災害時に備える備蓄みたいなものですか?
「マリーさん、鑑定有難うございます。折角のいいお話ですが、これからの事を考えると手元に置いておきたいです」
「うん、ミドリちゃんならそう言うと思ったよ…」
因みに『いたずらネズミの歯(大)』 は1万ピネルでギルドが買い取ってくれました。
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