46.悪いやつをぶっ倒せ 3
吹っ飛ばされ、地面を転がり蹲っているサラさんの方へユウロンは駆け寄り、ニヤニヤ笑いながら背中に蹴りを入れました。奴は蹴りによって更に吹っ飛ばされ、苦痛に顔を歪めるサラさんに近寄り拳を振り上げた時、私の錫杖はその身体の鳩尾を捕らえました。
「ぐおお、何をしやがる!」
ユウロンは胸部を押さえ、後ずさりをしながら声を張り上げました。
卑怯な手段を許せない私は、無意識のうちにサラさんを守りに行っていたのです。考えるよりも身体の方が動いたってやつですね。
「それはこちらのセリフよ。ちゃんと見ていたわよ、その男が毒の吹き矢でサラさんを攻撃したのをね」
サラさんを抱きかかえ、右大腿の下着にくっ付いていた針を手に取り、ムカに見せつけましたが「そんなものは知らん」の一点張り。証拠を突きつけてもこれですから話になりません。
ジゴロウ師匠が「手段を択ばない」と言っていた理由がよくわかりました。正々堂々と戦うことが出来ないのなら、こちらにも考えがあります。
「あなた達、後悔しても知らないわよ」
「はん、サラはもう使い物にならん、お前ひとりでどうしようって言うのだ?」
上体を反り、横柄な態度をとるムカを横目に、奴らに気付かれない様にそっとサラさんに魔法を掛けました。
『解毒』 『回復』
サラさんは私に抱かれながら、自分の手足を動かし、一驚されました。しびれも痛みもすっかり取れたようです。
「有難う。あなた凄いのね。助かったわ…」
サラさんはそう言うと立ち上がり、服に着いた土をポンポンと払いました。
「サラさん、私、身体強化魔法をかけられるのですが、一気に畳みかけます?」
私が耳元でそう囁くと「有難う、でも、あいつだけは自分の実力で倒すわ」と言って、サラさんは棒を構え、ユウロンを睨みつけました。
瀕死の状態だったサラさんが、まるで何事もなかった様に立ち上がったのです。ムカの驚きは相当なもので、「おい、これは一体どういうことだ!」と吹き矢を放った男の胸ぐらを掴みました。
男は「そんなはずは…」と言って動揺を隠せずにいると、ムカはその男を地面に叩きつけ、「もういい、お前たち、そいつらをやってしまえ」と怒鳴り散らしました。
ほほう、そう来ましたね。ジゴロウ師匠が言っていました、「身体強化魔法を用いながら棒術を使えば山賊なんぞ目じゃないぞ」ってね。集団でかかって来るって卑怯者ですしね。それじゃあ私も遠慮なく。うふふ、お初ですよ。
『身体強化2』
小金色をした光が一瞬、私を包み込みました。
わお、なにこれ、身体軽い、早い、凄ーい。
ムカに急き立てられて、一気に私の方に飛びかかって来る門下生たち。
文句なし、相手の動きはスローモーションで見えるし、私の動きは馬鹿早い。飛びかかってくる敵に教えて頂いた棒術でエイっと(ボキッ)…ガン(ボキッ)…ゴン(ボキッ)…
門下生たちが私の錫杖を受け止めようと、手なり足を出しますが、身体強化をされた私の力は半端ではありません。そこらじゅうをボキボキ骨折して、うめき声をあげながらその場に倒れていきます。
あらぁ…えらい事になっているわね。加減が難しいわ…でも、全然弱いじゃない…身体強化をしなくても余裕で勝てたんじゃないかしら…
二十人ほどの門下生がその場で悶絶しだすと、他の門下生はそれを見て後ずさり、完全に戦意喪失状態です。
慌てたムカは再び吹き矢男の胸ぐらを掴み、私を射る様に命じましたが、吹き矢を放つより私の動きの方が断然早い。筒を構えた時には私の錫杖がその腕を捕らえてボキッ…
あ、またやりすぎた…今度は少し控えめにしたつもりだったんだけど…
その光景を見て、ムカは鬼か悪魔でも見るような目で私を見つめ、「ゆ、許して…た、助けてください…」と絞り出すように声を漏らしました。
身から出た錆のくせに、何を勝手な事を…腹が立つので、錫杖で頭を殴るとそのままのびてしまいました。ピロン…ん?何?まあ、今は良いか。
サラさんの方はと言いますと、完全回復をしたサラさんにユウロンはなす術もなく、あっという間に意識を奪われておりました。まあ、そもそも相当実力差があったものね。
圧倒的な力の差を目の当たりにした門下生の大半は逃げ出し、『サラ流棒術道場』から寝返った門下生たちは、その場に土下座をしておりました。
「サラ師範、申し訳ありませんでした。自分たちの身が可愛いばかりに道場を裏切ってしまいました。どんな罰でも受けます。もう一度だけ『サラ流棒術道場』の門下生にして頂けないでしょうか」
元門下生一同は地面に頭を擦りつけながら、懇願です。
「私が不在にしていたのも悪かったし、良いわよ、戻ってきても。今回の事は不問にします」
サラさんは土下座をしている門下生の前に立ち、笑顔でそう言いました。
おお、太っ腹です。情けは人の為ならずですね、流石です。
「でも、今後は道場破りが来てもやられないくらいに、あなた達を鍛えないといけないわね、みっちりしごくわよ、覚悟はいい?」
門下生たちが苦笑をしながら、冷や汗を掻いていたのは言うまでもありません。
◇ ◇ ◇
『サラ流棒術道場』に戻ると、ジゴロウ師匠は庭を掃きながら皆の帰りを待っており、サラさんの姿を見た途端、一筋の涙。鬼の目にも涙です。
何処かで「これにて一件落着」って聞こえた気がしましたが、空耳ですかね…
いつも読んで下さりありがとうございます。




