43.ようやく習得しました
『手枷足枷』を外して貰えてからさらに二日が経ちました。目の前に居るジゴロウさんの動きとほぼシンクロできるようになりました。
足の動かし方や、身体の逸らし方、手首の使い方などを教えて頂きましたが、まだ錫杖を持たせて貰えません。ここって本当に棒術を教える所なのですか?
「ジゴロウさん、つかぬ事をお伺いしますが、ここは棒術を習得する道場ですよね?」
「ん?何を言っておるのじゃ?ここは民族舞踊を習得する道場じゃぞ?」
「…え?私って、民族舞踊を習っていたの?だからあんな変な動き?えぇ?」
「変な動きとはなんじゃ、馬鹿たれ『ゴンッ!』」
あいたた…小突かれました。だって変な所もあったじゃないですか…ブツブツ
なにか、おかしいと思っていたんですよね。でも、表の看板は『サラ流棒術道場』になっているし、ジゴロウさんも強くなれるとか言っていたじゃないですか、棒術だと思うでしょ?普通…
「表の看板は『サラ流棒術道場』って書いてあるじゃないですか…」
「確かにサラは棒術を教えて居るが、わしも同じとは言っておらんじゃろ?」
「えぇ…なんてことなの…この五日間私は民族舞踊を教え込まれていたって事なの?」
今明らかになる真実が衝撃すぎて、私はその場に崩れ落ちました。ちゃんと習いに来た理由も話したのに、あまりにも酷い仕打ちだよ…
「ふぉっふぉっふぉっ、そんなに落ち込むもんじゃない」
「落ち込むわよ!」
だって、早くルナサフォランへ行かなくちゃ、病気の人も増えているし。あぁ…もう、サラさんはいつ帰ってくるのよ…
私が天を仰ぎながら落ち込んでいると、ジゴロウさんは丁度私の持っている錫杖と同じくらいの棒を持ってこられました。
そして、先ほど迄教えて頂いていた動きと全く同じ動きを、その棒を持ってやり始めたのです。その動きはまさに棒術の動き、なんと、棒を持つだけでこんなにも見た目が変わるなんて…
「よく見ろ、これが上段打ち、そして体をひねって払い。そして、中段、下段…回し打ち。それに受けじゃ。今まで教えた動きの中にこれらが入っておるのじゃ。ほれ、錫杖を持ってやってみろ。錫杖は持つだけでいいからの、教えた通り身体を動かすだけじゃ」
私は言われた通りに錫杖を持った状態で、ここ五日間やっていた身体の動きを実行しました。
「おお、棒術になっているよ。私って格好いい?サラ流棒術って民族舞踊が基本になっていたのね」
ジゴロウさんと同じ動き…とまでは流石に行きませんが、それなりに動けているという事は自分でもわかります。
「有難うございます。ジゴロウ師匠!」
「おや、ようやく師匠と呼びおったわい。民族舞踊の話は口から出まかせじゃ。そんな事より、今からその錫杖を持って丸一日同じ動きを繰り返すのじゃ。ただし、打ったり受けたりする所では力を込めてしっかり止めるのじゃ。さあ、やれ」
何ですか、出まかせって…喜んだのはほんの束の間でした。油断した…こんなスパルタが待っていようとは…
はいはい、今までの事が無駄じゃなかったという事は分かりましたので、しっかり頑張りますよ。でもね。少しくらい「うまいぞ」とか「素質がある」とか言ってくれてもいいじゃないの。私は褒められて伸びるタイプなのよね…
「おい、ブツブツ言わずにさっさとやりなさい。時間がないんじゃろ?」
ぶー、わかりましたよ。やりますよ。こちとら教えて頂いている身です。これ以上文句を言うのはやめて、健気に頑張りますよ…しかし、錫杖を持つと…身体に…負担が来ますね…それに…手の握力も…ふぅ、ふぅ…
教えられた型をいったい何クールやったでしょうか。疲れたら『回復』を繰り返し、休憩もろくに取らず修行押しているお陰で、全く別の事を考えながらでも身体を動かせる様になってきました。でもジゴロウ師匠にはバレバレで「集中をしろ」と檄を飛ばされますが、やっぱり同じことの繰り返しは飽きてきます。
そんな時です。頭の中で『ピロン』と音が鳴りました。いつものレベルアップの奴と同じ音です。モンスターを倒さなくてもレベルって上がるの?と思いながらステータスを開けましたが、レベルはそのままです。が、なんと習得した技の所に『棒術1』と言う文字が刻まれていたのです。ややっ?免許皆伝っていう事ですか?
「ジゴロウ師匠!『棒術1』ってのが習得リストに入りましたよ」
「おお、修行の甲斐があったのじゃ。『棒術1』は基本の型を習得したという事じゃよ。自動発動だから、戦う時には意識をせずとも型が使えるぞい。身体強化魔法を用いながら棒術を使えば山賊なんぞ目じゃないぞよ。それにな、『棒術1』を使えば使う程『棒術』のレベルもアップして技の切れが良くなっていく。しっかり精進しなされ」
ふぉっふぉっふぉっと満足気に、ジゴロウ師匠は笑みを浮かべました。ここまで到達に約一週間、長いような短い様な時間でしたが、これでルナサフォランへ向かうことが出来ます。
ようやく習得できたんですね、私頑張ったよね。師匠、ありがとうございました。
いつも読んで下さりありがとうございます。




