40.良いアイデアです
落ち着きを取り戻したマリーさんと、ようやく本題に入ることが出来ました。本題と言うのは勿論、一人でルナサフォランへ向かうために必要な魔法とかの事です。
「そうねぇ、色々な魔法は有るけど、無敵になるものとかは極端に時間が短いから、無敵になっている間に敵を倒すのも厳しそうだしね、かといって単体に強烈な一撃をお見舞いする魔法も他の敵に背後を取られると危ないし…うーん、私ならひとつは身体強化かな」
ひとつはという事は、他にもあるという事ですね。でも、いいかも…身体能力が底上げされたら逃げるにも、戦うにも有利になります。流石はマリーさん、相談してよかったです。
「身体強化なら補助魔法ですよね?プリーステスなら割増料金無しで獲得できますよね?」
「魔法名は『身体強化』これは自分にも、他者にもかけることが出来るわ。効果は1時間、プリーステスの補助魔法だから割増料金無し。習得ポイントは5よ、でもレベル15以上じゃないと取れないわね、ミドリちゃんレベル幾つなの?」
レベルの事は問題ありませんね。だって、わたしは17ですもの。しかし、割増料金無しで習得ポイント5とは…結構高い買い物ですね。
「えっと、今のレベルは17です。私の持っている習得ポイントは7だから、獲得は出来るのですが、それを取っちゃうと他は何も獲得できないですね」
「えぇ!ミドリちゃんレベル17もあるの?レベリングを頑張ってもらうために言ってみたけど、とてもこの間冒険者になったばかりのレベルじゃないわよ。それに『身体強化』を持っているプリーステスって物凄く大事にされるわよ、だって、パーティの皆が強くなるのだもの」
レベル17が余程驚いたのか、マリーさんは受付台から身を乗り出して興奮気味に話しました。話を追加すると『身体強化』の良い所は、その魔法自体の上書きが出来るので、最初に獲得した時には2倍強化だけれど、最大7倍強化まで上げる事が出来るのですって。すっご!
因みに、習得ポイント2の追加の上書きで『身体強化2』になって3倍強化になるそうです。それに伴い時間も1割ずつ伸びるから強化時間も66分。いいじゃないですかぁ。
マリーさんがそう言ってくれたんだし、獲得…ぽちっと。上書きもぽちっと…
習得ポイント全部使っちゃった…でも、これで良かったのかな、少し不安…
「何不安そうな顔をしているのよ。私が大丈夫って言ったら大丈夫よ。それにね、いいお話があるの。習得ポイントが無くても戦う技を身に付けられる話。フフフ、知りたいでしょ?」
マリーさんはそう言って、小さな紙にサラサラっとペンを走らせ私に差し出しました。
『サラ流棒術道場 カナディフシティ東通り3丁目』
「はい?これは何ですか?」
「ん?見ての通り棒術の道場の場所よ。ミドリちゃんがそこに行って鍛えてもらうの。『身体強化』も出来るようになったんだから、体術を覚えるともう山賊なんて怖くないよ。丁度その魔法の棒持っているじゃない。それでなぎ倒しだよ」
あぁ、魔法の棒って錫杖の事ですね…まあ、確かにこれでネズミをどついていましたが…という事で、背中をドンと押されて『サラ流棒術道場』へと向かう事になりました。
◇ ◇ ◇
カナディフシティ東通り3丁目に到着すると、目の前にはとても大きなお寺のような建物がありました。門は全開になっています。
「たのもー」
確か、道場に入る時ってこう言うのよね、何かの番組で誰かがそうやっていました。
そう言って私が門の中に入ると、庭を掃いているおじいさんがひとりっきり、門下生は人っ子一人も居ません。一体どういう事でしょう?
「あのぉ…ここって『サラ流棒術道場』ですよね?師範さんとか門下生さんとかいないのですか?もしかしておじいさんが師範さんですか?」
おじいさんは掃除の手を止め、顔を上げました。すると…
「ああ!わ、私の胸を触ったスケベじじい!」
なんと、掃除をしていたのは、ルイ様と待ち合わせをしていたホテルのロビーで、私の手を触ったり、胸をタッチしたりしてくれたスケベじじいだったのです。なんでこんな所に居る!
「ふぉっふぉっふぉっ。で、お前さんは誰だったかのう?」
このじじい、しらばっくれやがって。って…でもこの道場、なんでおじいさんだけなの?
「ふぉっふぉっふぉっじゃないですよ。どうしてこの道場はおじいさんだけなのですか?」
「ん?そうじゃのう。師範の兄弟が病気になったのでルナサフォランへ見舞に行ってしまったんじゃ。その間に、西地区の『ムカ拳法道場』師範がここにやって来て師範代を倒し、門下生を奪って行ってしまったんじゃよ、まあ、道場破りってやつじゃな」
「え?そんな事いいの?で、おじいさんは連れていかれなかったの?」
「『じじいは要らぬ』とか言われてのう、ふぉっふぉっふぉっ。まあ、道場の事は師範が何とかするじゃろうて。で、かわいい胸のお嬢さん、お前さんは何用でここに来たのじゃ?」
ああ!やっぱり覚えているんじゃないの。私の胸がかわいいとかどうとかなんて、余計なお世話よ。それに、この服じゃあ可愛いかどうかなんて分からないはずだわよ。このスケベじじいめ…
「むー。遊びに来たわけではないですよ。ここの師範に棒術を学びに来たのですぅ。変態じじいに用なんて有りませんよ」
「ほう、棒術を学びたいのかね…」
いつも読んで下さりありがとうございます。




