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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第四章 新天地へ向けて

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37.公爵家のテラスにて

 私はモーリスさんと一緒に、公爵家のお屋敷の門の前に立っています。


 それはそれは大きなお屋敷、野球場が入るんじゃないかと言うくらい広い土地に大きな庭と、立派な西洋つくりの建物が立っています。さすがは公爵家です。


 そんでもって、庭の中にあるのは、明らかに森ですよ、森。美しく手入れをされた樹木がたくさん植えられています。モーリスさんに連れられ、その森に入ってしばらく歩くと目の前に、美しく大きなウッドデッキのオープンテラス。豊かな植物の香りに包まれた緑の樹木を見ているだけでも癒されるのに、その隙間から覗かせる木漏れ日の美しい事。素晴らしい演出ですよ。同じ森でも『クックバード』を捕まえに行ったあの森とは雲泥うんでいの差です。


 チチチチ…と鳴く小鳥のさえずりも聞こえてきて、あ、あそこにはリスかしら…それ等を見られただけでも、嫌々ながらもここに来て良かったと思えます。


 広いウッドデッキとお屋敷は桟橋さんばしつながっていて、真ん中には美しい木目が引きたつ一本木で作られたテーブルと、凝ったデザインの木製チェアーが数個置かれていました。


 公爵家の人々は自然が大好きなのですね。


 そのチェアーには、既にルイ様とマリア様も腰を掛けておられ、私の姿を見つけると嬉しそうに手を振ってくださいました。


「本日はお招きいただいて有難うございます。なんて美しい森なのでしょう。心がいやされます」


 お礼と一緒に思わず感嘆の声を上げてしまいました。だって、本当に緑が美しいのですもの…あ、私の事じゃあないですよ。自然の緑色の事です。


「緑はとても綺麗きれいだよね、突然の誘いに応えてくれて嬉しいよ」


 ミドリ…は? 


 は?って?ふえぇ…ミドリが綺麗きれいって…当然、自然の緑の事ですよね。う、自惚うぬぼれたりしていませんよ。でも、名前と同じ名詞を言われると、自分の事を言われているようで思わず赤面です。そして、その勘違いを意識した私の顔は更に紅潮…は、恥ずかしすぎる。


「もう、お兄様…わざわざそう言う言い方をして、ミドリ様が困っていらっしゃいますよ。いくら本当に綺麗きれいなお方でも、男性から綺麗と言われると戸惑ってしまうでしょ。それはそうと、ミドリ様わざわざお越し頂き有難うございました。わたくしも、もう一度あなたにお会いして、お礼を言いたいと思っていましたのよ」


 マリア様はルイ様に軽く釘を刺した後、ペコっと私に頭をお下げになられました。


「うわぁ…あ、頭を下げないでください。私こそ、好き勝手な事ばかり言って…あの、その…」

 

 あぁ…どう返事してよいのか分かりません。パニックです。それにマリア様…緑は綺麗って私の事じゃあないと思いますし…


 頭の中真っ白です。しどろもどろになっている私を見て、お二人はクスっと笑われました。わぁ、美男美女のあふれんばかりの美しい笑み…なんだか、ほわんとなりました。


 モーリスさんがチェアーを引かれて、私に座るよう合図をして下さったので、一礼をし、腰を掛けるとルイ様がパンパンと手を鳴らしました。


 するとお屋敷からメイドさんがトレーにティーポットとケーキを載せて持ってこられました。


「わぁ、このケーキはママブレッドのチーズケーキですね。それにこのハーブティーも…嬉しいです」


 初めてマリア様にお会いした時に、私が注文していたケーキです。見て下さっていたのですね。


 あ、そう言えば、この間食べずにナップザックの中に入れたままだったわ。痛んでないかしら…きっと、もう食べられないわよね…


「?…どうかされました?何か気なられる事でも?」


 喜んだ後、直ぐに浮かぬ顔をしてしまった私を、マリア様は見逃されませんでした。


「あ、いえいえ…ママブレッドのチーズケーキをここで頂けるとは思わなくて、幸せすぎて変な顔をしてしまいました」


 す、少し苦しい言い訳かしら…


「うふふ、面白いお方ですね。でも、お兄様ではないですけれど、ミドリ様はこの森の緑の様に本当に綺麗で可愛らしいですわ。私はあなたとお知り合いになれて、本当に嬉しいの」


 そう言ってマリア様は上品に微笑まれました。そして、間合いを見計らってルイ様が口を開きました。


「先ずは、ミドリさんに報告がある。食べながら聞いてもらえれば結構。役場のフレディとキャロルは取り調べをした後、懲戒ちょうかい解雇かいこされることになった。特にフレディに至っては、補助金の横領おうりょうが明らかになれば、下賤げせんの身に落とされることになる」


 下賤げせんの身とは、このゲームの中では犯罪者が一定の期間、特定の場所に住む者の事をそう呼びます。市民権は奪われ、そこから出ることも出来ず、安い賃金で労働させられるのです。まあ、自業じごう自得じとくですね。


「役場は多くの貴族が働く優遇された職場なので、働いている者は優越感にひたりやすい。他の職員に対しても良い見せしめになっただろう。おごり高ぶらず、領民に優しい役場になるよう町長に言って指導をしておいた。定期的に視察も入る事にしたので、もう、このような事は起こりにくいだろう。因みに、孤児院の補助金は規約通りに国から5000ピネル、街から5000ピネルだ。勿論、借地料も無し。クックバードも大切に飼育してもらうから安心しておくれ」


 ルイ様は物静かに、落ち着いてそうおっしゃられました。更に詳しく聞くと、フレディ氏の振る舞いは以前から問題になっていたので、現場を押さえたかったとの事でした。


「ルイ様、有難うございます。これで領民の皆さんも安心ですね。それに、親の居ない不利な条件の子供たちも将来に備えることが出来ます」


 本当に安堵しました。頑張った?甲斐がありました。さすが公爵家のルイ様、心より感謝いたします。


いつも読んで下さりありがとうございます。

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