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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第三章 公爵家の方々

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36.知らぬが仏

 え?…そう言われればそうかもしれない。じゃあ、あと2,3匹クックバードを捕まえてくれば、今の補助金よりも沢山お金が入るって事か…いやいやいや、違う違う。思わず誤魔化されそうになりましたよ。何を言っているのですか、この人は。


「い、意味の分からない事を言わないでください。それでは、子供たちに『卵を食べるな』と言っているようなものではないですか。それに本当に領主様が借地料を請求しているのですか?そもそも、補助金も国からだけだなんておかしいわよ」


 好き勝手な事を言うフレディ氏に私が少々切れてしまうと、彼は「待ってました」とばかりにニヤリと笑いました。


「ほほお、お前は公爵家に逆らうというのだな、場合によっては反逆罪に問われるがね、警備員を呼ぼうか?今のやり取りを聞いている人物も居る事だし、言い逃れは出来ないぞ」


 常々思います。私って、こういうガンガン押してくる人に弱くて、逆らうとか、反逆罪とかみたいな事を言われてしまうと、何も言えなくなってしまうのです。案の定、今回も頭の中はパニック状態になって、もう、言葉が浮かんできません。相手を説き伏せられるくらいの話術とボキャブラリーがあれば…と悲しくなってきました。


 それに、フレディ氏の声が馬鹿でかいものだから、役場に訪れた街の人々が私の方を見て、コソコソ話をしています。あわれんでいる人も居れば、さげすんでみている人も居ます。穴があったら入りたいって状態ですよ…


 辺りの視線を気にしながら言葉を失った私が、フレディ氏からの恐ろしい程の冷ややかな視線を浴びせられている時でした。


「おい、お前さん。その公爵家の出した規定書類を見せてみなさい、本当にお前さんの言っている事が正しいのか見極めてやるぞい。お前さんが正しければ、この娘を好きにすればいい」


 ルイじい様がそう言ったのです。すると、受付姉さんは直ぐにフレディ氏に耳打ちです。きっと、先程ルイじい様が口出しをしたことを、告げ口しているのでしょう。


 ねえ、ルイ様?…助け舟だったかもしれないけど、事もあろうに「好きにすればいい」とはどういうことですか?


 開いた口が塞がらない私は、ルイ様をじとーっと見ましたが全くの無視です。おい、スルーかい!


 フレディ氏は受付姉さんの話を聞きながら、うんうんとうなずいたあと、ルイじい様をにらみつけました。そしてルイじい様を威嚇いかくします。


「じじい、先ほどからお前は、屁理屈へりくつをこねて仕事の邪魔をしているそうだな。お前も公爵家に逆らうつもりなのか?さっさとその娘を連れて出て行かないと、警備員を呼ぶぞ」


 知らぬが仏も良いとこです。ルイじい様こそが本当の公爵家の嫡男ちゃくなんです。そんな言葉にビビるはずはありません。鼻の下の付けひげこすりながら、平然としています。その時、一瞬付けひげがずれたのですが、幸いすぐに戻りました。やばい、バレそう…私は、一瞬ドキッとしましたよ。


 フレディ氏はその事に全く気付いていなかったのですが、逆に受付姉さんはそれを見逃さなかったのです。


 今まで、軽蔑の眼差しだった彼女は、懐疑的な眼差しに変わり、ルイじい様の顔をガン見し出したのです。私はその事に何も気づかず、「あれ?あの人、なんでそんなに不思議そうな顔をしているんだ?」としか思いませんでした。


 役場の壁の上の方には、歴代の公爵家の肖像画が飾られています。勿論、その中にはルイじい様…じゃなかった、ルイ様の肖像画も飾られているのです。


 幾らルイ様がじいさんに変装しているからといって、別人になるわけではありませんので、面影は残ります。受付姉さんは不思議そうに、肖像画とルイじい様を何度も見比べていました。


 あ…あれ、もしかして受付姉さん、ルイじい様について何か感づいたのではありません?首を行ったり来たりさせて、動きが挙動不審です。それにこめかみから汗が流れ出しましたよ。


 フレディ氏の方はと言いますと、物怖ものおじしないルイじい様に腹を立てているのか、やや興奮状態でぎゃあぎゃあ威嚇いかくを続けています。税金を納めていないだろうだとか、社会のお荷物だとか、本当に好き放題言っています。それに、規定書類を見せるつもりなどさらさら無い様で、かく追い返しにかかっているのです。


「ああ、わかったわかった、お主の戯言ざれごとはもう十分じゃ、今までの会話はちゃんと記録させてもらったしの、ローガンに報告させてもらう事にするよ」


 ルイじい様は記録装置を懐から出してそう言われました。因みに『ローガン』と言うのはルイじい様の父で、公爵様の事なのですよ。


 少々小汚いじいさんが『ローガン』の名前を呼び捨てにした事で、フレディ氏は完全にはったりだと思ったのでしょうね。「公爵様を呼び捨てにするなど、侮辱ぶじょく罪の適応だ。警備員、警備員はいないか!」といきりたちました。あわよくば記録装置も没収してしまおうという目論見もくろみもあったのでしょう。でもね、それ程うまい事行くわけはありません。


 受付姉さんの方は『ローガン』の名前が出たことで、引っかかっていた不安が的中したのでしょう。真っ青な顔なり、フレディ氏の服の袖をグイグイ引っ張り、小さな仕草でルイじい様と、ルイ様の肖像画を指さしました。


 フレディ氏は懐疑的かいぎてきな表情でルイじい様と、ルイ様の肖像画を見比べた後に驚愕きょうがくの表情に変わりました。そして、歯をガチガチ鳴らして、身体をガクガク震わせながらその場にへたり込んでしまいました。


 あらあら、青菜に塩ではありませんか…


いつも読んで下さりありがとうございます。

次話で第三章終わります。

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