31.凄いですね
「ミドリ様、この少女の足は早く治さないといけません。ずれている骨が神経を圧迫しています。放っておくとこの子の足は動かなくなるでしょう。ただ、このまま整復と言って、骨の形を整える秘術を使うと激痛が走ります、この子には耐えられないでしょう」
メアリーさんの言いたいことが理解できました。整復とやらを行っている間、リンちゃんが起きない様に『おやすみの笛』を吹き続けろって言うのですね。要は麻酔の代わりって事ですね。
そして、整復が終わった後に、『接合』を唱えればよいのですね。
「了解しました。それにしてもメアリーさんは凄いですね。医学の知識もあるのですね」
メアリーさんは少しほほ笑んだ後、リンちゃんの足を真剣な眼差しで見つめられました。どの様に整復するかを、考えておられるのです。
「素人に毛が生えた程度ですが、お嬢様の身に突然何があっても対処ができる様に、一通りの事は教え込まれておりますので…」
そしてメアリーさんは、そう言って腕まくりをし、腰に掛けておられたポーチから、耳栓を取り出されました。
おやまあ、そんなものまで持っておられる…それに、笛の音を聞くと眠るという事も知っておられるのですね。誰でも持ち歩いるものなのかしら?
そう言えば、誰も『おやすみの笛』をモンスター討伐に使ったり、麻酔に使ったりしていないみたいです。使えば簡単に『いたずらネズミ』の駆除とかできるのに、どうしてなのでしょうね?
「メアリーさん、冒険者たちは何故『おやすみの笛』を使って、モンスターの討伐をされないのですか?」
私がそう言うとメアリーさんは不思議そうな顔をされました。
「あの…どういう経緯でその笛を購入されたかは存じ上げませんが、『おやすみの笛』は吹き手を選ぶのですよ。誰が吹いても相手を寝かせられるという物ではありません。使える人が稀なのですよ?寝かせるだけなら、プリーステスの魔法に『眠りの魔法』と言うものは有るのですが、対象は単体ですので…ふふふ、今の場合はそちらの方が良さそうですけどね」
あれ?ご存じありませんでした?とばかりの表情でメアリーさんはそう答えられました…けど
何という事でしょう。売れ残っていた理由はそこでしたか。あのおばちゃんは「誰でも吹けるよ」見たいな感じでサラッと売ってくれたような…うぐぐぐ…騙されましたか?いえ、さらっと『上手く吹くとぐっすり寝てくれる』って言っていました。あながち間違ってはいませんし、嘘もついていません…それに、欲しがったのは私ですしね、別に文句はありませんよ。でも、売る時にそう教えてくれてもいいじゃない…まあ、吹けたのはラッキーでしたけどね…今度あのおばちゃんを眠らせてやろうかしら…
ん…?ちょっと待ってくださいよ?笛が使える私はレアな存在って事ですか?よく考えればすごい事ですよ。ぐふふふ。私を笛の名手と呼んで下さい。
おっと、ニマニマ喜んでいる場合ではありませんね。そんな事よりリンちゃんです。ユキちゃん、ナップザックに入っていて下さいね。
私が『おやすみの笛』吹き出すと、2,3分待った後メアリーさんがリンちゃんの右足をそっと持ち上げられました。どうやら動かしても起きない事を確認されているようです。
メアリーさんはリンちゃんが動かない事が分かると、右足の膝の部分と足首を持って引っ張り上げ、足を元の形に整えられました。うわぁ…ゴキゴキ言っていますよ…でもリンちゃん起きない、良かったぁ
「これでいい…ミドリ様、『接合』をお願いします」
私は錫杖をリンちゃんの右足にそっと当てて、お初の魔法『接合』を唱えました。リンちゃんの右足が、淡い赤外線の様な赤い光に包まれた後、それはゆっくりと消えていきました。
メアリーさんは右足を持ち、動きを確認してから「よし、大丈夫。さすがミドリ様です。次は左足です。もう一度笛の音をお願いいたします」
左足も、右足と同様に治療をし終えた後、メアリーさんはリンちゃんの胸に手を当てたり、呼吸の音を聞いたりされ「もう大丈夫ですね。心臓の動きも、呼吸も落ち着いています。暫くすると起きると思いますので、このまま寝かせておいてあげましょう」と仰られました。
私は、シスターマーガレットさんから借りたおんぶ紐でリンちゃんを背負いました。4歳の女の子ですから体重は15㎏位でしょうか、普段の私なら重くてヒイヒイ言うところでしょうが、全く重くありません。きっと、レベルアップの恩恵ですね。素敵です。
リンちゃんを背負ったまま、私が表情も変えずに山道をスタスタ歩いていると、驚いたのはメアリーさん。
「…ミドリ様は見た目以上に力がお強いのですね」
私の身長は155㎝で体重45㎏ですので、スタイルは兎も角体重の値は私の理想です。…華奢に見えたのかな?
でもね、そう仰られますが、メアリーさんだってとても熊の首を跳ね飛ばす様には見えませんよ。私よりも背は高いですが、スラッとしていて、腕も足も白くて細いです。今でこそ迷彩の服を身に着けておられますが、ブラウスとスカートを着用しておられる時は「どこのお嬢様ですか?」って問いたくなる程、清楚な感じでした。
「『いたずらネズミ』を沢山倒したので、沢山レベルが上がっちゃいまして、重いものでも楽になりました。エヘヘ…レベルアップ効果って凄いのですね」
私が、へらへらしながらそう言うと、メアリーさんは「お尋ねして宜しければ、レベルを教えて頂けますか?」と問われたので「17です」と言いました。
「え…プリーステスさんでレベル17の方は滅多に居られませんよ…」
メアリーさんは目を丸くして驚かれておられました。
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