30.治癒魔法の獲得
まず、色々な治癒魔法を獲得する前に、気を失っているリンちゃんの体力を回復させなければ…
「『回復』」
リンちゃんの意識は戻りませんが、循環動態が安定したのか、顔色がほんの少し赤くなりました。しかし、身体の擦り傷や、足の変形はそのままです。『回復』だけでは、元には戻りませんでした。
傷だらけのままでは化膿するかもしれないので、たまたま魔法のカバンに入っている『濡れた手拭い』で傷のある部分をきれいに拭きまして…よし、今できる事はここまで、治癒魔法を探しましょう。
ガイドブックを捲ると、該当しそうな魔法を3種類見つけました。
『ファインド』 所見です。対象の悪い所を見つける魔法です。
『ジョイント』 接合する魔法です。骨接合や、断裂した組織を繋ぐことが出来ます。
『リプロダクション』 再生魔法です。欠損した部分を再生できますが、身体に腫瘍細胞があれ ば、増殖させてしまいます。
どれも、プリーステスの魔法なので、それ程習得ポイントを必要とはしませんでしたが、『リプロダクション』だけは難度の高い魔法らしく、それだけで15ポイントも必要としました。それでも、この先何が起こるか判りません。全部で25ポイントです。ここもいつモンスターが現れてもおかしくない場所、ゆっくり考えている暇はありません、取り敢えず3つとも取っちゃいます。
ステータスを開いてみると…うん。魔法を獲得できている。早速『所見』を使いリンちゃんの診断です。
『所見』
両下肢の脛骨腓骨骨折 脱水 顔面、上肢の擦過傷
見ての通りやはり骨折ですね。脛骨と腓骨は膝の下にある足の長い骨です。両足って出ているから、4本の骨接合が必要って事ですね。大怪我じゃないですか。脱水…暫く何も口にしていないのと、内出血の影響でしょうか。この状況下では、起きた時に水分を取ってもらうしかありませんね。それと、骨折をどうするかです。このまま『接合』を使えば、きっと変形した状態でくっ付いてしまうでしょうし…
うーんと、頭を抱えて悩んでいる時です。ユキちゃんの「キイー」という大きな鳴き声と同時に、私の背後から「グルルル」という低い唸り声が聞こえてきたのです。
恐る恐る後ろを振り向くと、そこに立っているのは大きな熊でした。戦闘態勢を取りながら、私を睨みつけています。
『蛇に睨まれた蛙』って正にこの事ですね、身をもって体験ですよ。怖い…足はガクガク、口もガクガク、手に力も入りません。金縛りにあっているようです。金縛りにあったことは無いけれど…
熊が「グオオオ」と雄叫びを上げ、一歩一歩私に近づき、大きな右腕を振りかぶりました。
だめだ…殺される。
熊がその大きな腕を振り下ろした時です。
あれ?思ったより動きが遅いかも…受け…止められる?
ミドリ自身は全く気付いていないのですが、レベル17と言うのはこのゲーム内では中ボスと同等以上の実力があります。そのくせ、ここはゲーム内の最初の街にある最初の森。いくら熊…実は『ビックベアー』と言うモンスターなのですが、所詮、序盤に出てくるモンスターなので、このエリアなら、レベル10もあればどんな敵であっても余裕で倒せちゃうのです。
よって、「ガシッ」と錫杖で熊の腕を余裕で受け止めることが出来たのです。
驚いたのは熊です。目の前に居る貧弱で旨そうな人間の娘に、まさか自分の攻撃を止められるとは、思っていなかったのでしょう。再び大きな唸り声をあげて、反対の腕を振りかぶりました。
しかし、その腕が振り下ろされることはありませんでした。なんと、いきなり熊の首が吹っ飛んだのです。
「あ、あれ?」
「ふぅ…間に合って良かった。大丈夫でしたか?ミドリ様、危ない所でした」
メアリーさんです。なんと、回し蹴りで熊の頭一撃です。有難うございます。着ておられたブラウスとスカートを、迷彩の服とズボンに着替えられて、後を追いかけてきてくださったのですね。でも、よくそんな服をお持ちでしたね…
「一応、私はお嬢様の侍女兼護衛ですので、何があっても良いように、何種類か衣類を持ち歩いています」
当たり前の様にそう仰られました。それにあの身のこなし、格闘技も身に着けておられるのですね。とても恰好よかったです。
そして、メアリーさんから2つの事を学ばせて頂きました。私も何か格闘技の技を獲得することと、彼女を怒らせない事です。首を跳ね飛ばされないようにしなくちゃ…
あっと、それよりもリンちゃんです。
「メアリーさん、リンちゃん足が折れているのです。骨接合の魔法は出来るのですが、この状態では変に固まりそうで、どうするのが良いでしょうか?このまま連れ帰った方がいいのかな?」
「ミドリ様は、『いたずらネズミ』を大量に眠らせたと聞いておりますが、今でもそれは可能でしょうか?」メアリーさんは少し考えた後、そう尋ねられました。
え?どうして今その話が必要なの?と思いましたが、何か意味があるのでしょう。
「はい。笛を使って眠らせましたけれど…」
「その笛は今もお持ちですか?」
このナップザックに入っていますと私が言うと、メアリーさんは「ならばここで治療できます」と言われました。一体どうするつもりなのでしょう?
いつも読んで下さりありがとうございます。




