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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第三章 公爵家の方々

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28.リンちゃん

 リンちゃんは孤児院の収容児童です。細身で身長は1m位で、黒髪をした可愛い女の子です。ライタによると、もう2時間くらい前から姿を見ていない様です。


 リンちゃんは、いつも敷地内で遊んでいる事が多く、誰かと一緒じゃないと敷地外へ出たがらない子なので、敷地内で見かけない彼女を気にしたライタが何気なく探していたようです。

 

 そんな時、虫取り網が無くなっているのと、私とライタが『クックバード』を捕獲ほかくしに行った時に持って行った鳥かごの位置がずれていた事に違和感を覚え、他の収容児童に聞いたところ、誰とも遊んでいなかったのです。


 だから大慌てでシスターマーガレットさんへ報告に…


 そういえば、私とシスターマーガレットさんが、街が『クックバード』を引き渡せという話をしていた時にそばに居ましたよね。


 もしかしたら、リンちゃんは1人でクックバードを捕まえに行ったのかも…


 それが事実なら、4歳の子供が1人で森に入るのはあまりにも危険です。いつ、モンスターに襲われてもおかしくありません。直ぐ探しに行かなくちゃ。無事ならいいのだけれど…


 幸い、リンちゃんの顔は覚えています。回復魔法を獲得している私は、何かあれば直ぐに対処ができる。私が行くべきでしょう。


「ユキちゃん、出てきて。リンちゃんを探しにいくの。見つけてくれる?」


 モンスターの鋭い嗅覚が頼りです。シスターマーガレットさんから、リンちゃんの来ていた衣類を借りるとユキちゃんの鼻先へ持っていきました。ユキちゃんはそれをクンクンいだ後、コクンとうなずきました。


「マリア様(公爵家のお嬢様と分かったので様付けで呼ぶことにしました)、シスターマーガレットさん、お話の途中で申し訳ありませんが、リンちゃんを探しに行ってきます」


 私がそう言ってその場を離れようとすると、ライタも「俺も一緒に行く」と言い出しました。けれど、リンちゃんが何処に居るのか全く分からないのです。モンスターが沢山居る危険な場所かもしれません。そんな所にライタを連れて行くわけにはいかないのです。


「今回はだめだよ。ライタまで危険な目にわせるわけにはいかない」


「なんでだよ、危険な場所に行くなら、尚更なおさら何かあった時の連絡係が要るだろ」


 ライタは引きません。彼の言い分も分かるのですが、私もうなづくわけにはいかないのです。するとマリア様が「メアリー、あなたが一緒に行って下さる?」とおっしゃられたのです。


 メアリーさんは、マリア様と一緒に居られた侍女の方です。マリア様の服装を引き立たせるような色合いで、ゆとりのある服を着ておられて、身体の動きを制限するような着こなしではありません。確かにこれなら、一緒に森へ行けそうではあるのですが…


「お嬢様、私はお嬢様の元を離れるわけにはいきません」


 うんうん。マリア様の専属の侍女様ですものね、離れるわけにはいきませんね。当然ですよ。大丈夫です。私とユキちゃんでちゃんと探し出しますから。


「マリア様、私なら大丈…「何を言っているのですか。幼い子供の命が掛かっているのですよ!私は直ぐに屋敷に戻り、お父様に応援をお願いしてまいります。ミドリ様を助けてあげなさい、メアリー」」


 私のセリフをさえぎり、マリア様は厳しい表情でメアリーさんを見つめ語気を荒げられました。大きい声をあげられる方だとは思えなかったので、驚きのあまり私とシスターマーガレットさんは肩をビクッと震わせましたが、流石メアリーさんは違います。


 スッとその場で跪礼きれいをされ「申し訳ありませんでした。マリア様もお気をつけてお帰り下さい」と申されたのです。


 まあ、なんといいましょうか…貴族たちの漫画や小説に出てくる一場面と同じですね。私には全く縁のない世界の一場面が、目の前で繰り広げられています。


 あっけに取られて、直立不動の私にマリア様は再び私の手を取られました。


「どうか、メアリーを宜しくお願いします。足手まといになる事は無いと思いますので」


 ◇ ◇ ◇


 リンちゃんを抱えて帰って来なければならない事も考えて、シスターマーガレットさんからおんぶ紐をお借りしました。使い方は…勿論、解らないので、同じくらいの大きさの女の子で練習しましたよ。直ぐに覚えることが出来ました。さすが私。これでいつでもお母さんになれます。それに、前回の失敗をかてにちゃんと水筒も用意しました。直ぐに出発です。


 森の中の山道を歩いていると、時折分岐点に出会います。その時に間違った方向に進めば、クンクンと匂いを嗅いでいるユキちゃんが「キイキイ」と声を上げてくれるので、徐々にリンちゃんの居場所に近づいている事を実感できます。その光景を不思議そうに見ていたメアリーさんが「ペットモンスターを使いこなしていらっしゃいますね。その様な使い方をされているのを初めてみました」と言われました。


 使いこなしているって…ユキちゃんを道具の様に言われるのは、あまりいい気はしませんが、確かにパートナーの様に接しているのは珍しいかもしれません。


 時折、街でペットモンスターを飼っている人を見かけたりしますが、大抵、何かしらのリードっぽいものをつけている事が多く、私の様に放し飼いをされている人はほとんど居ないのです。


「使いこなしているというか…ユキちゃんはお友達なので」


 私がそう言うと、メアリーさんは自分の失言に気付いたようで「申し訳ございません…決して不快にさせるつもりはなかったのですが、ペットモンスターを愛する方への配慮はいりょが足りませんでした」と謝罪の言葉を口にされました。


 いい人です。とってもいい人です。こんなどこの馬の骨か判らない様な冒険者の小娘に、素直に謝罪が出来るなんて素晴らしいです。メアリーさんの事が好きになりました。


「いえ、ペットモンスターへの世間の評価は分かっているつもりです。お気になさらないでください。私ごときに謝罪の言葉など、勿体もったいないです。ね、ユキちゃん」


 ユキちゃんは気遣う様に、メアリーさんの肩に飛び移り、ふわふわした毛を首筋にスリスリ…


「あら…とっても可愛らしい…」



いつも読んで下さりありがとうございます。

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