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ソフィアのファンタジックワールド ~ミドリ 編~  作者: 季山水晶
第三章 公爵家の方々

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26.淑女

 その方が少し慌てた様子で入って来られると、その後ろから侍女のような方も続いて入ってこられました。どこかの良い所のご令嬢でしょうか?


 ウエーブのかかったうるおいのある金髪に、細い糸で編まれたレースの入った白い絹のブラウスと、淡い胡桃くるみ色のラップスカートが、落ち着きのある上品な淑女を演出しておられます。つばの広いキャペリンハットを被っておられるので、顔まではよく見えませんが…


 何か急ぎの注文でもしたかったのでしょうかね?慌てた様子でお話をされていました。


 まあ、私には関係のない話ですので、あまりジロジロ見ていても失礼に当たります。役場の事もありますし、気が重かった私は、ため息をつきながら頼んだチーズケーキと、気が落ち着くと書かれてあったハーブティーが来るのを、ぼんやりしながら待っていました。


 丁度座った席が窓際の席だったので、綺麗に磨かれたガラス越しに見える花壇に目をやると、そこには素朴で美しいスミレの花が咲き並んでいました。少し癒される。


 この花の様に、役場の人たちの心も美しくなってくれれば…と思うと、再び憂鬱ゆううつになり、大きなため息が出てきます。嫌な感情を吹き飛ばそうと両腕を上げストレッチをした時、ふとそばに誰かが立っているのに気づきました。


 あ、定員さんだわ…そう思って、その方向に目をやると、立っていたのは先程店に入って来られた淑女の方でした。その一歩後ろには侍女の方も立っておられます。


 キャペリンハットを脱いだその女性は、私より少し年上って感じでしょうか。ブルーの瞳に整った優しそうな顔立ちです。でも、何ごとですか?


 何処かでお会いしたことがあったかしら?と記憶を辿たどっていると、その淑女の方は遠慮がちに話しかけてこられました。


「あの…何か考え事をされていたようでしたので、声を掛けづらかったのですが、黒真珠のジュエリーを見つけて下さってありがとうございました。わたくしはマリアと言うものです。あれはわたくしにとって、とてもとても大切なもので、本当に感謝しています」


 地位の高そうな方なのに、マリアと名乗った女性は深々と頭を下げてこられました。一方、こんななりをしていますが、私は単なるパンピーの現役女子高校生。公式的な挨拶や礼儀は全くなっておりませんです。取り敢えず、こちらも深々と頭を下げて「たまたま見つけただけなので、気にしないでください」と言いました。


 するとマリアさんは「ここで出会ったのも何かの縁でございます。見たところ何かお困りのご様子、もしかしたらわたくしも何かお役に立てるかもしれません。宜しければ理由をお聞かせください」と言って来られたのです。


 キョトンですよ、淑女の気まぐれですか?私なんかに関わっても、メリットなんかありませんよ。どうぞお引き取りを…


「どうか、ご心配なく…」


 私がそう言ったにも関わらず、マリアさんは隣に居た侍女の方をチラッと見られると、侍女の方は私の目の前の空いている椅子を引いたのです。


 そして「失礼を致します」と言って私の目の前に座り、侍女の方に耳打ちをすると、侍女の方はその場を去り、少し距離を取ったところで待機をされました。


 え…一応私のエリアなのに…マリアさん、グイグイ来ますね。


「さあ、これでわたくしだけになりましたので、どうかそのため息の理由を分けてくださいませ」


 そう言って、洗い物などしたことのない様な、真っ白く美しい手で私の手を握られました。


「ひぃ…」


 いくら綺麗な方でも、いきなり手を握られると私もビビッてしまいます。でも、払いけるのもどうかと思いますし…困りました。


 あれですね、高貴な方は一方的に借りを作るのが嫌と言うか、恩を返すというのを信条にでもしておられるのですかね。


 私が気付かないうちに、何度も何度もため息をついていたの、をしっかり見られていたわけです。


 その後も、人に言ってどうにかなるようなことではないからと、丁寧にお断りを申し上げていたのですが「大切なものを見つけて頂いたお礼に、是非とも何か協力をさせてください」と何度も言って下さるので、遂に根負けしました。


 よくよく聞くと、あの様な高価なものを拾った人は、落とし主を探さず売り払ってしまう事が当たり前になっているそうです。だから、届けてもらった事に非常に感謝をしているのですって。


 そこまで言って下さるのなら、ストレス発散の意味合いも込めて、マリアさんに聞いて貰う事にしました。


「それなら聞いて頂けますか?聞いて頂ければ、私もすっきりするかもしれませんので…実は…」


 かくかくしかじか、こうなってああなって…とお腹の中に溜まっていたどす黒いうっぷんを、火山の爆発の様に噴火させてしまいました。


 最初は落ち着いて、言葉を選びながら話していたのですよ。でもね、あぁ…私の心の弱い所です。話し出すと止まらなくなっちゃいましてヒートアップ…領主様や役場の悪口を、いっぱい話してしまいました。


 ぐちぐち文句ばかり言ってすみません…マリアさん。自分で言っていて少し恥ずかしくなってきましたよ。


 一方的に話す私に、何も言わずに相槌あいづちだけを打ってくださるマリアさんでしたが、突然「是非、あなたがおっしゃる孤児院を見てみたいです」と言いだされました。


 はっ。もしかしたら高貴な家柄のマリアさんが、可愛い子供たちを見たら、あわよくば、何か力になってくださるかも…なんて図々しい気持ちにはなっていませんよ。でも、健気なシスターマーガレットさんや可愛い子供たちを知ってもらいたい、と言う気持ちはあります。


 こういうきっかけに、真実を知ってもらって、孤児院の環境を良くしていけるように手を貸して頂けたら…だから、喜んでご案内いたします。


 あ、やっぱりちょっと図々しいですね…


 でも、折角マリアさんの方から、そう言って下さっているのです。善は急げ、私は急いでハーブティーを飲み干し、チーズケーキを包んでもらうとマリアさんと一緒に店を出ました。


 さあ、こっちです。と言おうとしたら…あ、馬車ですか…それもこんなに立派な…


いつも読んで下さりありがとうございます。

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