24.補助金
第三章開始です
「な、なにこれ…ソフトボール位大あるんだけど…これ、歯よね?何を狩ったらこんな歯が出てくるの?」
マリーさんは大きな歯をまじまじと見て、「こんなの見たことないわ」と頭にはてなマークを浮かべています。
「どうやら『いたずらネズミ』のボスの様です。大量のネズミを駆除した時に、その中心に居ました。それと、歯の他にこれも落としましたよ」
私は魔法のカバンから、ボスが歯と一緒に落したバレーボール位の黒い石も取り出し、マリーさんの机に置きました。
マリーさんは「大量ってどれくらいなのよ…ブツブツ」とか言いながら、まじまじと黒い石を見つめています。
「あら、まるでボーリングの玉みたい。光沢があって綺麗だわ。でも、さっきの歯もこの黒い石も依頼が出ていないから、報酬は出せないわね。うーん…ギルドが買い取るって言っても、価値が判らないからお金も出せないし…ねえ、ミドリちゃん。良かったらこれらを預からせてくれないかしら?鑑定士に見てもらうから」
マリーさんが良心的な事は存じ上げております。きっと悪いようにはしないでしょう。それに、私が持っていても使い方も価値も分からないので、調べてもらえると丁度いいです。
「是非、お願いします。じゃあ、他の素材を出してきますね」
◇ ◇ ◇
素材管理室から頂いた納品書を渡すと、再び目が飛び出るほどの驚きをマリーさんは見せてくれました。そりゃあ、驚きますよね。ネズミの歯が1,000個を超えているのですもの。
今回の報酬は…
『いたずらネズミの歯』 1,253個×20ピネルで25,060ピネル
『金色のいたずらネズミの歯』 15個×200ピネルで3,000ピネル
『いたずらネズミの毛皮』 25枚×100ピネルで2,500ピネル
合計 35,060ピネル
少し戸惑いながら提出した『いたずらネズミの毛皮』でしたが、ちゃんと依頼がありました。直毛で硬いいたずらネズミの毛は、ブラシに使われるのですって。
今回の駆除で、沢山のお金が入ってレベルも17になりました。そして、どうでもいいんだけど、ステータスには嬉しくない二つ名『いたずらネズミキラー』の称号が加わりました。
ここのギルドはゲームの序盤なので、冒険者の平均レベルは6から7位です。冒険者たちが『いたずらネズミ』討伐の依頼で、駆除してくる頭数は一度の依頼で多くても5匹くらいですって、慣れた人でも20匹程度。そう考えると、慣れた人が行く60回分以上の経験をこなしたことになります。加えてレアも出ているのですもの、そりゃあ、レベルも上がりますよね。
習得ポイントも相当溜まりましたので、また魔法を獲得できます。どんな魔法が有るのかしら、楽しみ。
さて、報酬も入ったので、子供たちにまたパンとローストビーフでも、買って行ってあげようかしら。
◇ ◇ ◇
よく働いたので、2日間は街で過ごし、ホテルでゆっくり休養を取った後、孤児院に行くことにしました。クマさんが支援者になってくれた事も報告しなくては、なのです。
前回同様、パン工房のカフェ『ママブレッド』でフランスパンと、出来立てのローストビーフを買って孤児院へ行くと、いつもの様に子供たちとシスターマーガレットさんが大歓迎をしてくれました。でも、何か雰囲気がちょっと違います…
あ、継ぎ接ぎだらけだった皆の服が、少し綺麗になっているのです。
「どうしたの?その服、皆お洒落になって…」
すると、『リン』と言う名の4歳の女の子が嬉しそうに教えてくれました。
「あのね、クマちゃんがね、服とね、ぎゅにゅとね、お肉を持ってきてくれたんだよ」
…クマちゃん…ぎゅにゅ…牛乳ですね。
子供たちは大喜びで、早速、時間の空いた時クマさんの畑を手伝いに行ったそうです。なんて、理想的な流れなのでしょう。
それにしてもクマさんは優しいです。もう、実行してくれたのですね。完璧に足長おじさんじゃないですか。「これで孤児院も安泰ですね」と、シスターマーガレットさんに微笑みかけると、「これも、あなたのお陰ね。有難うございます。ミドリさん」と言われましたが、少し浮かない顔をしています。
「マーガレットさん?何かあったのですか?」
「いえ、…実は…ミドリさんやクマさんにとっても良くして頂いて、少し余裕が出来れば、本とかも買ってあげられると思っていたのですが…」
歯に物が挟まったような言い方をされるシスターマーガレットさんから聞いた話は、本当に酷いものでした。
まず、何処で聞きつけたのか、『クックバード』を飼いだしたことを知った役人が孤児院にやって来て
『クックバードの卵は高値で取引されている。国から援助を受けている孤児院が儲けるなどおかしな話だ。ましてや、地主が援助者になったらしいじゃないか。国からの補助は打ち切る、加えて、借地料も払ってもらう事にする。そうでもしないと国に申し訳が立たないと、領主様がそう言っておられるのだ。それが嫌ならクックバードは街が引き取る。考えておくように』
と言われたそうです。それに、なんと期限は一週間。
「なんて酷い…、そんな事がまかり通るのですか?」
「国からの補助金は、毎月1,000ピネルで、そのほとんどがお食事代に消えてしまうの。それでも食事が足りないから野菜を育てていたのですよ。でも、クックバードを手放さなければ逆に、毎月借地料500ピネル払えと…そんな事、領主様が言われるとは思えないのですが…」
シスターマーガレットさんはうっすらと涙を浮かべています。
なんなの、その領主様とやら。補助金は国から出ているのでしょ?領主様は一体何をしてくれているのよ。え?借地料を無料にしている?そんなの街として当たり前じゃないの。子供たちは収入がないんだよ。はらわたが煮えくり返りそうだわ。
でも、シスターマーガレットさんは領主様がそんな事を言われるとは思えない…と言っていますし、もう少し調査が必要ですね。
私にできる事があるかどうかわかりませんが、知り合いはギルドのマリーさんだけ。ちょっくら行って相談してみます。
いつも読んで下さりありがとうございます。
また、お付き合いをお願いいたします。




